著者
小林 健人 稲村 勝樹 金田 北洋 岩村 惠市
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.172-183, 2016-01-15

近年,個人情報やプライバシについて取り上げられる場面が増加している.特に,監視カメラ映像に関するプライバシの問題が取り上げられることが多く,映像を取り扱うガイドラインも存在している.しかし,近年のプライバシ保護の概念である自身の情報のコントロールという観点から考えると,被撮影者自身によって匿名で顔情報が制御できることが望ましい.しかし,既存のシステムではそれを実現する技術的な仕組みを持たない.一方で,監視カメラは犯罪防止に利用されているため,被撮影者が犯罪者となる可能性を考慮すると,被撮影者によってのみ制御されることは好ましくない.そこで,我々は被撮影者がグループ署名と可逆モザイク技術を組み合わせ,さらに秘匿した顔を復元するために必要なモザイク鍵を犯罪捜査時のみ生成できる鍵管理法によって,プライバシ保護と犯罪時での監視カメラの有効利用を同時に実現するシステムを提案する.これによって,被撮影者は自身の顔情報を匿名で制御することができ,かつ,犯罪捜査時には,制御された顔情報を警察などに提供可能で,さらに顔が秘匿されていた被撮影者の特定が容易となる.