著者
川添 航 坂本 優紀 喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.000228, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに近年,アニメーションや映画,漫画などを資源とした観光現象であるコンテンツ・ツーリズムの隆盛が指摘されている.本研究は,コンテンツ・ツーリズムの成立による来訪者の変容に伴い,観光現象や観光地における施設や関連団体,行政などの各アクターにどのような変化が生じたかという点に着目する.研究対象地域とした茨城県大洗町は県中央部に位置しており,大洗サンビーチ海水浴場やアクアワールド茨城県大洗水族館などを有する県内でも有数の海浜観光地である(第1 図).また2012 年以降はアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として商店街を中心に町内に多くのファンが訪れるなど,新たな観光現象が生じている地域でもある(石坂ほか 2016).本研究においては,大洗におけるコンテンツ・ツーリズムの成立が各アクターにどのように影響したかについて整理し,観光地域がどのように変化してきたか考察することを目的とする.2.対象地域調査対象地域である大洗町は,江戸時代より多くの人々が潮湯治に訪れる観光地であった.その観光地としての機能は明治期以降も存続しており,戦前期においてすでに海水浴場が開設されるなど, 豊かな自然環境を活かした海浜観光地として栄えてきた.戦後・高度経済成長期以降も当地域における観光業は,各観光施設の整備や常磐道,北関東道,鹿島臨海鉄道大洗鹿島線の開通などを通じ強化されていった.しかし,2011 年に発生した東日本大震災は当地にも大きな被害をもたらし,基幹産業である観光業や漁業,住民の生活にも深刻な影響を与えた.大洗町における観光収入は震災以前の4 割程度まで落ち込む事になり,商工会などを中心に地域住民による観光業の立て直しが模索されることになった.3.大洗町における観光空間の変容2012 年放映のアニメ「ガールズ&パンツァー」の舞台として地域が取り上げられたことにより,大洗町には多くのファンが観光者として訪れるようになった.当初は各アクターにおける対応はまちまちであったが,多くの訪問客が訪れるにつれて様々な方策がとられている.大洗町商工会は当初からキャラクターパネルの設置や町内でのスタンプラリーの実施など,積極的にコンテンツを地域の資源として取り入れれ,商店街などに多くのファンを来訪者として呼び込むことに成功した.また,海楽フェスタや大洗あんこう祭りなどそれまで町内で行われていたイベントにおいてもコンテンツが取り入れられるようになり,同様に多くの来訪者が訪れるようになった.これらコンテンツを取り入れたことにより,以前は観光地として認識されていなかった商店街や大洗鹿島線大洗駅などにも多くの観光者が訪問するようになった.宿泊業においても,アニメ放映以前までは家族連れや団体客が宿泊者の中心であったが,放映以降は1人客の割合が大きく増加するなどの変化が生じた.
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
佐藤 壮太 渡辺 隼矢 坂本 優紀 川添 航 喜馬 佳也乃 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-43, 2018-04

本研究にあたり,2016~17年度科学研究費(挑戦的萌芽研究)「聖地共創時代におけるオタクの癒し空間に関する応用地理学的研究」(研究代表者:松井圭介)の一部を利用した.
著者
坂本 優紀 渡辺 隼矢 山下 亜紀郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.000341, 2018 (Released:2018-06-27)

1.研究背景と目的 長野県は,2013年の打揚煙火製造額が全国2位,製造業者数では1位と,煙火生産の盛んな地域である.その中でも特に,長野市を中心とする北信地方と飯田市を中心とする南信地方に,その利用の偏りがみられる.今回対象とする南信地方は,1712年に奉納煙火があったことが記録されており,長野県内において最も古くから煙火を扱ってきた地域といえる.当地域の煙火の特徴としてあげられるのが,三国(さんごく)と呼ばれる筒系吹き出し煙火である.三国は,赤松の大木を刳り抜いたものや,竹筒,あるいは紙管の中に数種類の火薬を詰めた煙火で,長さは大きいものでおよそ200cm,重さは約250kg(火薬の総量は24kg)になる.現在でも,北は宮田村から南は阿南町まで幅広い範囲において神社の祭りで奉納されている. 古くから奉納煙火として使用されてきた三国であるが,近年では,三国を地域のイベントに取り入れる事例もある. そこで本発表では,長野県南信地方北部の上伊那地域における三国の分布とその利用形態に着目し,三国の拡がりと利用形態の変遷を明らかにすることを目的とする. 2.対象地域対象地域である長野県上伊那地域は,長野県南信地方の北部に位置し,伊那市を中心に,駒ヶ根市と上伊那郡の6町村によって構成される.当該地域は,古くは南流する天竜川と,木曽駒ケ岳から東流する太田切川によって地域内の交流が分断され,方言や文化などに差異がみられることで知られており,三国においても同様の傾向がみてとれる. 3.結果と考察2016年に打揚げられた上伊那地域の三国は,14件である.煙火は,江戸時代に愛知県三河地方から伝わったとされており,その分布をみると南側に偏っていることがわかる.利用形態では,多くの打揚げが祭り時の奉納煙火であるものの,箕輪町での打揚げのみが,イベント時のパフォーマンス目的となっている.また,宮田村の三国に関しては,1962年から商工会主体で奉納を始めた記録が残っており,他の地域の奉納煙火とは異なる経緯が明らかとなった.以上の結果をまとめると,江戸時代に愛知県より伝わった煙火は,長野県南信地方で三国へと変化し,駒ヶ根市の太田切川を北限として,神社の奉納煙火として氏子たちにより継承されてきた.戦後になると,駒ヶ根市の北側の宮田村の祭礼に三国が取り入れられることとなった.しかし,それは氏子ではなく,商工会が主体となって行われた.さらに,2000年代に入るとより北側の箕輪町でもパフォーマンスの一環として三国が打揚げられることとなった.上伊那地域においては,三国を氏子主体で奉納煙火として利用する地域から,北側にその打揚げ範囲が拡大していくとともに,その利用形態に関しても,より世俗的なものに変化していることが明らかとなった.本研究の遂行にあたり,2017年度筑波大学山岳科学センター機能強化推進費(調査研究費),課題「山岳地域に関するツーリズム研究の課題構築」(代表者:呉羽正昭)の一部を使用した.
著者
喜馬 佳也乃 坂本 優紀 川添 航 佐藤 壮太 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
巻号頁・発行日
pp.000328, 2018 (Released:2018-06-27)

1.はじめに 「聖地巡礼」とはアニメや漫画の舞台となった場所をファンが訪問するコンテンツ・ツールズムの一形態である.大石(2011)によると,こうした「聖地巡礼」行動の歴史は2002年に制作された『おねがい☆ティーチャー』に端を発し,この背景には情報を共有するためのインターネット,そして現地の写真とアニメの描写を比較するためデジタルカメラとHDDレコーダーといったデジタル画像処理技術の普及が必要であったとされる.2010年代以降,アニメや漫画といったサブカルチャーコンテンツの一般化が進展する中,SNSとスマートフォンの普及により,ますます情報の共有,発信が盛んとなってきている.これに伴い「聖地巡礼」行動も隆盛を極め,地域活性化の一資源として注目されるに至っている.本研究では,こうした「聖地巡礼」行動の一大訪問先となった茨城県大洗町において,そこを訪れる巡礼をファンの属性や訪問回数,訪問先などを分析し,「聖地巡礼」を行うファンの変化を明らかにする.2.大洗町とアニメ「ガールズ&パンツァー」 アニメ「ガールズ&パンツァー」は,架空のスポーツである戦車道に取り組む少女たちを描いた作品である.登場人物のほとんどを美少女キャラクターが占めるいわゆる「萌え」作品であると同時に,戦車といったミリタリー要素,そして「スポ根」と表現されうるストーリー展開を併せた点が特徴とされる.2012年10月から深夜帯で放送され,2015年には劇場版が上映された.2017年12月以降も劇場作品が制作され続けており,続編の多さからも人気作品であることが伺える. 大洗はこの作品の主人公の所属する高校が立地し,作中にもアニメ本編,劇場版ともに戦車による試合の会場として登場する.大洗町のマリンタワーやアウトレットといったランドスケープが登場する以外にも,市街地の商店街内を戦車が駆け巡るなど,広範囲にわたって描写される.作中の背景描写は実際の大洗町を詳細に描いたものであり,ファンを引き付ける要素となっている.3.大洗町を訪れるファンの分析 大洗町を訪れるファンのほとんどは男性であり,年齢は10代から50代まで幅広い.劇場版の放映後に大洗を訪問したというファンが半数以上を占めている.訪問地は訪問回数と一部相関関係が見られ,商店街はほぼ全員が訪れる一方,アウトレットやマリンタワーには来訪頻度が少ないファンが訪れる傾向にある.商店街はアニメに直接描写された場所であるが,来訪頻度が高いファンには行きつけの店や馴染みの店としての意味も付与され,アニメの舞台として特別な場所という意味付けから,日常の一部にシフトしていったものと捉えられる.ファンの男性たちを顧客として受け入れる商店街の態度は,村田(2000)の疎外する場所とは逆の状況が生まれているとも指摘でき,こうした受容の結果,「聖地巡礼」を契機とした移住者の存在も確認される.
著者
佐藤 壮太 渡辺 隼矢 坂本 優紀 川添 航 喜馬 佳也乃 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.13-43, 2018-04

本研究にあたり,2016~17年度科学研究費(挑戦的萌芽研究)「聖地共創時代におけるオタクの癒し空間に関する応用地理学的研究」(研究代表者:松井圭介)の一部を利用した.
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.