著者
下里 直生 菊地 俊夫
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.9, pp.33-39, 2016-01-31

本研究は,白山手取川ジオパークの活動を対象にして,時空間的ジオストーリーが地域融合にいかに貢献できるのかを検討した。ジオパークが発展するためには,地形・地質遺産などに基づくジオポイントやジオサイトを複数組み合わせることによりジオストーリーが地域の内発的な活動に基づいて構築されなければならない。その場合,地質学的なストーリーと地理学的なストーリーを組み合わせた時空間的ジオストーリーの構築が重要になる。この時空間的ジオストーリーを構築することにより,ジオポイントやジオサイトの組み合わせだけでなく,それらのまとまりからなるジオエリアの組み合わせも可能となり,地域のつながりや一体性が強調できるようになる。つまり,時空間的ジオストーリーは地域融合に貢献する可能性が高い。
著者
吉岡 誉将 杉本 興運 菊地 俊夫
出版者
首都大学東京大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.13, pp.1-11, 2020-03-15

本研究は,J リーグサッカーファンによる応援クラブのアウェイ戦観戦に着目し,それによる地域活性化の可能性を検討することを目的とする。具体的には,アウェイクラブのファンにとってのアウェイ戦観戦における訪問先での需要を明らかにし,その上で,彼らの受け入れに積極的な先進地域の取り組みを参考にすることを通して,スポーツイベントを軸とした地域活性化の推進に資する知見の導出を試みる。そのための調査として,アウェイ戦観戦行動を把握するためのWeb アンケート調査と,アウェイクラブのファンを受容する地域(長野県松本市)の取り組みを明らかにするためのフィールド調査を行った。これらの調査結果から,サッカークラブの立地する地域が,アウェイクラブのファンをどのように誘致し,受け入れ態勢を整え,地域活性化につなげていけばいいのかについて議論し,また,具体的な施策を提案した。
著者
菊地 俊夫
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.9-16, 2021-03-15

摘要 観光地誌学を学ぶことで,身近な地域の生活や文化,あるいは世界の異なる生活や文化を総合的に理解できるようになる。そして,総合的に地域や世界の様相を理解することは,さまざまな視点に立った見方や考え方を身につけることにもなる。このように,地域や世界をさまざまな視点から見たり考えたりすることは,複雑化した現代社会において,地域や世界のさまざまな課題を解決するための方法を見出すことに役立つ。現代社会においては,「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」として国際社会共通の目標が17ある。それら1つ1つの目標に関する課題の発見と解決に観光地誌学の見方・考え方は間違いなく役立つ。
著者
飯塚 遼 太田 慧 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.128, no.2, pp.171-187, 2019-04-25 (Released:2019-06-01)
参考文献数
41
被引用文献数
8 5

With rapid globalisation and urbanisation, urban agriculture is experiencing many changes, for instance, in the preferences of consumers, who require more food security. In many cities across the world, urban agriculture is also positioned for food production and community building. In Japan, interest in urban agriculture has grown steadily, supported by the enactment of an urban agriculture law in 2015. Urban agriculture studies have been a controversial topic of research since around the 2000s in many academic fields, including geography. However, there have been few studies on the relationship between agricultural management, or farmers, and urban residents, although capturing interactions among urban residents as consumers and intentions for consuming urban agricultural space are critical when considering the sustainability of urban agriculture. Interactions are explored between farms and urban residents in the context of diversified agricultural management based on a case study using Kodaira city in the Tokyo Metropolis. Because the area is one of the urban agricultural areas of the Tokyo Metropolis, where many independent farmers survive, Kodaira city is a suitable study area to explore the diversification of farming and communication with urban residents. Literature, such as previous studies, is analysed. Then, public survey data is analysed to illustrate the spatial distribution of agricultural management patterns and classify them. In addition to qualitative analysis from field research, interviews with case farmers reveal the decision making of farmers in adopting specific methods of agricultural management and interactions with urban residents. Hence, interactions between farmers and urban residents exist based on agricultural management in Kodaira city. The classification of interaction styles is based on features of the area in a definite pattern. Such interaction styles prevent excessive competition among farms, attract stable customers, and realise sustainable management. Finally, urban agriculture in Kodaira city is founded on interactions with urban residents through the diversification of agricultural management.
著者
太田 慧 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2017年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.100153, 2017 (Released:2017-10-26)

1.研究背景と目的 多摩地域に位置する東京都小平市は市域が東西に広がっており,市内の東西で土地利用や産業構造に異なる特徴がみられる.本研究は2016年度に実施した小平市産業振興計画に基づく基礎調査のアンケート結果に基づいて,東京都小平市における消費行動の傾向を品目別に検討し,それらの地域的な特徴について明らかにした.2.東京都小平市における購買行動の地域特性 図1および図2は,小平市の東部,中部,西部の地域別に生鮮食品および娯楽サービスの主要な購入・利用先の回答割合を線の太さで表現したものである.図1のように,小平市の東部地域における生鮮食品購入先の回答は,「花小金井駅周辺地区」で購買する割合が最も高い.一方,中部地域の回答では「一橋学園駅周辺地区」,西部地域は「小川駅周辺地区」などのそれぞれの地域から近い場所で購入する割合が高いほか,一部では「新宿駅周辺地区」や「吉祥寺駅周辺地区」などの都心方面の回答もみられた.娯楽サービスについては,小平市の東部地域は「新宿駅周辺地区」,中部地域と西部地域は「立川駅周辺地区」を利用する割合が最も高くなる一方で,相対的に小平市内における娯楽サービスの回答割合は低い傾向となっていた(図2). さらに,アンケート調査回答の購入・利用割合について,生鮮食品,紳士服・婦人服,娯楽サービス,教育サービス,外食サービス,医療・介護サービスの6項目について検討した.その結果,生鮮食品,教育サービス,医療・介護サービスなどの市民が日常的に利用するものに関しては小平市内やその近隣で購入・利用されていることが示された.一方,紳士服・婦人服,娯楽サービス,外食サービスについては,「新宿駅周辺」や「吉祥寺駅周辺」などの都心方面に加えて,「国分寺駅周辺」や「立川駅周辺」などの中央線沿線の商業地域がよく利用されていた.全体的にみれば,小平市東部地域の住民は「新宿駅周辺」や「吉祥寺駅周辺」などの都心方面において商品・サービスを購入・利用する傾向があるのに対して,西部地域の住民は「立川駅周辺」を回答する傾向があった.また,中部地域の住民は「国分寺駅周辺」の回答がやや多いが,おおむね東部地域と西部地域の購入・利用傾向の中間的なものとなっていた.以上のような小平市内で購入・利用先に差異がみられる傾向は,娯楽サービスでより顕著にみられた.つまり,服の購入,娯楽,外食などの週末の利用が想定される項目に関しては,小平市内よりも新宿や吉祥寺,立川などの中央線沿線の商業地域がよく利用されているといえる.
著者
河東 宗平 雨宮 尚弘 梶山 桃子 川嶋 裕子 塩川 さとこ 有馬 貴之 菊地 俊夫
出版者
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.6, pp.189-194, 2013-03

本報告は近年外国人観光客が増加する箱根の強羅地区を事例として,外国人観光客への取り組み状況の現状を把捉することを目的としたものである。調査は案内板調査,アンケート調査,動線調査,聞き取り調査の4つを行った。強羅における案内板は,そのほとんどが日本人観光客を意識したものであり,英語併記等の案内板は全くみられなかった。強羅における外国人観光客の増加自体は近年の現象であり,その割合も日本人観光客の割合には遠く及ばない。そのため,現状では外国人観光客への取り組みは,箱根の他地域と比べも大きく進展している状況ではなかった。しかしながら,強羅での就業者は外国人観光客を拒んでいる訳ではなく,むしろ迎え入れる意識を高く持っていた。2,3 年前から外国人を意識した接客を始めた施設が多い強羅ではあるが,今後,新たな取り組みがみられる可能性が高いと判断された。
著者
菊地 俊夫 山本 充 キクチ トシオ ヤマモト ミツル Kikuchi Toshio Yamamoto Mitsuru
出版者
首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.4, pp.15-27, 2011-03-30

本論文はドイツ・バイエルン州における農家民宿に注目し,農村空間の商品化にともなうルーラルツーリズムの発展をプルーリアクティビティ(多就業形態)と関連づけながら検討した。バイエルン州では,農村の景観や農牧業,および生活文化が農家民宿の発展と相互に関連しながら維持され,それらのアトラクションの商品化を促進させることで農村観光の発展が図られてきた。農村空間の商品化は農村の景観や農牧業,および生活文化を維持することに貢献し,そのことが農家民宿や農村観光のさらなる発展につながった。バイエルン州ではプルーリアクティビティが機能し,酪農や林業,および農家民宿が行われることで,すべての土地基盤にわたって農村資源が利用されるようになり,そのことによって農村景観が維持される。農村景観は農家民宿の利用者や農村観光の訪問者のアトラクションとなり,農村空間の商品化が決定づけられた。
著者
西村 圭太 杉本 興運 菊地 俊夫
出版者
一般社団法人 地理情報システム学会
雑誌
GIS-理論と応用 (ISSN:13405381)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.85-95, 2019-12-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
40
被引用文献数
1

In recent years, Japan has developed long-distance cycle routes as part of tourism promotion policy. Cycling tourists often take these routes for inter-destination movement. However, it is difficult to gather data concerning such types of movement with existing investigation methods such as questionnaires. This study examines the effectiveness of volunteered geographic information (VGI) for analyzing inter-destination movement of cycle tourists and regional factors affecting the movement. Hokkaido was selected as a suitable targeted area. As the result, comparing the behavioral indicators derived from VGI and existing questionnaire survey, we could show that VGI were effective in capturing the actual condition of cycle tourist movement. In addition, analyzing the regional factors affecting cycle tourist movement based on Spatial Autoregression Model allowed us to detect important regional factors, including coastline, trail station and accommodation.
著者
飯塚 遼 矢ケ﨑 太洋 菊地 俊夫
出版者
東京都立大学大学院都市環境科学研究科観光科学域
雑誌
観光科学研究 = The International Journal of Tourism Science (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.14, pp.87-96, 2021-03-15

摘要 本研究はフランス・ノール県ダンケルク郡を事例としてビールツーリズムの展開にともなうロカリティの再編について考察することを目的としている。ダンケルク郡におけるビールツーリズムは農村景観や集落景観などの農村を構成する要素が観光資源となり,それらが観光プロモーションプログラムを通じて結合されることにより存立していた。また,ダンケルク郡におけるビールツーリズムの空間は,同様のプログラムが設定されているベルギー側のウェストフーク郡にまで広がりをみせていた。そこでは,両地域の文化の共通性が観光資源に内包されていた。いわば,ダンケルク郡でフランスという国家的枠組に組み込まれたことで失われつつあったフランデレンのロカリティが,ビールツーリズムを通じて回復されていた。
著者
小池 拓矢 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<B>1. はじめに</B><BR> ジオパークを訪れた人びとは火山や海洋、河川などの営力によって形成されたダイナミックな景観を目にすることになる。これらの景観はジオパークの来訪者に大きなインパクトを与えるコンテンツである。よって、どこでどのような景観が来訪者に評価されたのかを検討することは、ジオパークの管理や運営をする上で重要である。そこで、本研究は伊豆大島で行われたジオツアーを事例として、ジオツアーの参加者がどこでどのような景観を評価しているのかを明らかにする。<BR> 伊豆大島は東京の都心の南方に位置しており、2010年10月に「伊豆大島ジオパーク」として認定された。伊豆大島には玄武岩質の成層火山である三原山をはじめとしたジオサイトが存在する。<BR><B>2. 研究方法</B><BR> 本研究は、首都大学東京の都市環境学部自然・文化ツーリズムコースで開講された野外実習における伊豆大島でのジオツアーに対して調査を行った。ジオツアーは2015年6月30日に行われ、これに参加した学生13名に調査に協力してもらった。<BR> ジオツアー参加者の景観評価を明らかにするために、本研究は参加者がツアー中に撮影した写真を分析するVEP(Visitor Employed Photography)という手法を用いた。参加者にGPS機能付きのデジタルカメラを貸与し、ツアー中に自由に写真を撮影してもらった。ジオツアーは2つのグループに分かれて行われ、それぞれのグループにガイドが1人ずつ付いて学生を案内した。2名のガイドが行ったインタープリテーションの内容をICレコーダーで記録し、インタープリテーションと景観評価の関係性について考察した。ジオツアー終了後には、参加者に撮影した1枚1枚の写真の撮影対象などを問うアンケートを行った。このアンケートでは、撮影対象のほかに、それぞれの参加者が気に入った写真5枚を選んでもらい、これらについても分析の対象とした。<BR><B>3. ジオツアー参加者の景観評価</B><BR> VEPを用いた調査を行った結果、一方のグループ(参加者7名)からは694枚の写真が、もう一方のグループ(参加者6名)からは581枚の写真が得られた。両グループともに地形景観や地質資源の写真がよく撮影されており、これらの写真の撮影地点に対してカーネル密度推定を行った結果、写真撮影が集中して行われた場所はすべてガイドによるインタープリテーションが行われた場所であった。ただし、その集中がみられた位置はグループごとに多少の違いがみられた。<BR> 次に、ツアー参加者が選好した写真についての分析を行った。参加者によって撮影されたすべての写真の撮影対象と比較して、参加者が選好した写真は人間を撮影したものの割合が大きかった。以上の結果から、ツアー参加者はあくまで記録として地形や地質に関する写真を撮影するが、記憶に残りやすいのは友人との楽しい時間の思い出であると考えられる。ツアー参加者に楽しかった記憶や満足した記憶が残れば、その地を再度来訪したり、他人に来訪を薦めたりする可能性は高くなる。<BR> 起伏に富んだ地形や非日常的な自然景観を利用して、人物のユニークな写真を撮影できるのがジオパークの特徴であり、ジオパークのガイドはツアー参加者にこれらの地質的・地形的資源を「観察」させるだけでなく、「体感」させるようなインタープリテーションを行うことが重要であるといえる。菊地・有馬(2011)はジオツーリズムの役割として、「広く一般に地形・地質や地球科学の知見が楽しく有意なものだと認識してもらうことがより重要である」と述べている。本研究の結果も、ジオパークにおけるインタープリテーションはただジオサイトに関する情報を提供するだけではなく、楽しさを同時に伝えることが必要なことを示唆していた。
著者
兼子 純 菊地 俊夫 田林 明 仁平 尊明 ワルデチュック トム
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

ローカルレベルでの小規模な流通,もしくは生産者と消費者間のダイレクト・マーケティングの重要性が,その土地の自然条件や位置関係,歴史的・文化的背景,産業構造などの地域の文脈で議論されることが必要であり,こうした動きに食料の生産の場として機能してきた農村地域や農業者がどのように対応しているのか明らかにする必要がある。本研究は,カナダ・ブリティッシュコロンビア州(BC州)バンクーバー島のカウチンバレー地区を対象として,地域資源を活かしたアグリツーリズムの事例分析から,農村観光の特徴を明らかにする。<br> バンクーバー島は,BC州の南西端に位置する。島全体の人口は約76万であるが,2000年以降一貫して増加を続けている。主要都市は島の南東部に集中しており,BC州の州都であるビクトリア(人口:約34万)は島の南東端に位置する。島の主要産業は元々林業であったが,近年では豊かな自然環境を活かしたアウトドア観光のほか,植民地時代の遺産を活かした都市観光に加えて,農村観光が盛んになっている。 研究対象地域であるカウチンバレー地区は,バンクーバー島の南東部,州都ビクトリアの北に位置する。カウチンバレー地区はカナダで唯一地中海性気候帯に属する温暖な地域である。このような気候条件に加えて,山や海,湖が地区内に近接して存在するという自然環境,島の主要都市から車でおよそ1時間という立地条件から,近年観光業に力を入れている。&nbsp; <br> カウチンバレー地区では恵まれた自然条件の下,多様な農業が展開され,それらを観光に結びつける動きが盛んである。当地区では西部が山間地で農業不適である一方,中央部の丘陵地では畜産関係,東部を南北に走る主要道路沿いには果樹・野菜生産など高付加価値で比較的集約的な農場が分布するとともに,菊地ほか(2016)で示されたワイナリーも分布する。 農業生産者はいくつかの形態でアグリツーリズムの場を提供する。一つは主要都市ダンカンで毎週土曜日に開催されるファーマーズ・マーケットである。このマーケットは通年開催で,出店登録者は177(2016年)である。地元農業者を中心に出店があり,直売としての機能のほか,出店者の農場と消費者を結びつける役割を果たしている。 ワイナリーはカウチンバレー地区を特徴づける重要なアグリツーリズムの場であるが,ここでは地区で唯一のアップルサイダー農場の事例を紹介する。地区南部の丘陵地コブヒルに立地するこの農場では,自園地で生産したリンゴからアップルサイダーを生産・販売している。整備された園地ではリンゴの生産,商品の直売のほか,ビストロが併設されるとともに,結婚式場としても使用される。その他に発表では,地域密着型農業に取り組む農家レストランの事例,ファームツアーを開催する水牛農家の事例を紹介する予定である。<br> 対象地区の海岸部に位置するカワチンベイ(図1)は,2009年に北アメリカで最初のスローシティ組織である&ldquo;Citta Slow(チッタスロウ)&rdquo;コミュニティに認定された。カワチンベイは夏季には大変賑わいを見せる観光地になっているが,同組織の活動趣旨は経済的な観光地化ではなく,農村地域のコミュニティ形成にあるという。本発表では,このスローシティの実態を紹介したい。
著者
菊地 俊夫
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.111, no.1, pp.81-99, 2002-02-25 (Released:2009-11-12)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

In this paper the author analyses agricultural land use changes in the urban shadow of the Sydney metropolitan region and clarifies their sustainability on a micro-scale using the example of Castlereagh area, Penrith City. Castlereagh area is situated around the western suburbs of Sydney city centre, and is characterised by competition between agricultural and urban land use. In this area, rural and agricultural land use has generally developed since the colonial period. Although definite changes from agricultural to urban land use are not apparent with the advancement of urbanization, some kinds of agricultural use have changed to others in terms of function and quality since the 1990s. This sustainability of agricultural land use changes based on land, climate, and historical conditions as a suitable region for agriculture, and accessibility to the urban market for agricultural products, and land use policy of city planning and land use zoning.In Castlereagh area dairy farming and sheep grazing have traditionally developed with advantageous land and climate conditions for grass production. In particular, suburban dairy farming was important for town milk production. Although there were a few trends of conversion from dairy farming to sheep grazing, because of a decreasing agricultural labour force, the framework of traditional pastoral farming still remained until the 1980s. Since the 1990s most aspects of pastoral farming have changed into horse raising, horticulture, and hobby farming with the enlargement of urban land use for residential and factory sites. Such farming has been most apparent among all kinds of land use in the 1990s.Under an environment of urban shadow, both horse raising and horticulture have developed due to their suitability for expanding urban land use and farmland subdivisions. Agricultural land use changes are supported by economic factors such as capital intensity and high profitability. On the other hand, hobby farming is less intensive and rather unprofitable, and is developed for the mental satisfaction of aged and the urban residents, rather than the advancement of urbanisation and land subdivision. Therefore, agricultural land use changes into hobby farming are supported by non-economic factors such as productive aging and mental satisfaction. On the whole, a series of agricultural land use changes are identified for their sustainability, and are supported by economic and non-economic factors. In particular, hobby farming plays an important role in holding back urban sprawl and maintaining agricultural land use.
著者
菊地 俊夫
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.149-158, 2019 (Released:2020-03-25)
参考文献数
7

フィ−ルドワ−クは地理学が十八番とする方法であり,地理学のフィ−ルドワ−クは諸環境を複眼視して総合的に捉えるところに特徴がある。地理学のフィ−ルドワ−クの方法や見方・考え方は時代ととともに少しずつ変化している。昭和の時代のフィ−ルドワ−クは達人と呼ばれるような研究者による職人芸的な方法を重視してきた。しかし平成の時代になると,フィ−ルドワ−クの方法はマニュアル化・標準化され,個人情報の壁に抵触しない範囲でデ−タを集めるものとなった。令和の時代においては,地域コミュニティと共に活動しながらデ−タを取得する地域協働型フィ−ルドワ−クや,地域コミュニティと共に課題解決のために調査し地域づくりを行う地域共創型フィ−ルドワ−クが地理学の研究に新たな可能性を与えるものとなっている。
著者
洪 明真 太田 慧 杉本 興運 菊地 俊夫
出版者
首都大学東京 大学院 都市環境科学研究科 観光科学域
雑誌
観光科学研究 (ISSN:18824498)
巻号頁・発行日
no.11, pp.35-43, 2018-03-15

本研究は東京都台東区上野地域おける行楽行動の要素を歴史地理学的な観点から検討したものである。江戸期にわたって刊行された名所案内記の挿絵と錦絵を用い,これらの視覚史料に描かれた江戸期の上野地域の描写対象を分析した。江戸上野地域は,新しい都市となった江戸を象徴する建造物を建設するため,地形的・文化的条件が合致する場所であった。そして,為政者による江戸の都市施設と遊覧場所として計画された上野地域の「東叡山」とその周辺には,当時の人々の行楽行動が現われていた。江戸上野地域の視覚史料から描写対象としての「人的要素(女性)」と「物的要素(衣食住関連の商業活動)」に注目したところ,江戸上野地域の行楽行動の要因は「東叡山」と「桜」は江戸上野地域における行楽行動の重要な要素となっていた。
著者
小池 拓矢 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.6, pp.857-870, 2016-12-25 (Released:2017-01-25)
参考文献数
27
被引用文献数
2 6

The objective of this study is to clarify how the landscape is evaluated by participants of geo-tours on Izu-Oshima Island. The Visitor-employed photography (VEP) method is used to identify places where landscape evaluations are concentrated and objects are photographed frequently. Further, this study discusses the impact of interpretations by tour guides on the landscape evaluations of participants. Izu-Oshima Island, located 120 km south of Tokyo, is a volcanic island which was certified as a geopark in 2010. In this study, university students, who were part of a field excursion, were divided into two groups and accompanied by two tour guides. The results of a Kernel density estimation shows that the locations of photographs taken by the tour participants are concentrated in areas where the tour guides provide interpretations. These locations differ by tour group, which indicates that landscape evaluations are influenced interpretations. Each participant chose five favorite photographs from among their own photographs. Photographs of people were preferred. Tour participants took photographs of geological and geographical features as records; however, photographs of people were preferred as happy memories with friends during the tour. It is important to have both academic and entertaining contents in interpretations during educational activities of Geoparks.
著者
太田 慧 菊地 俊夫
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2017, 2017

<b>1</b><b>.</b><b>研究背景と目的</b> 多摩地域に位置する東京都小平市は市域が東西に広がっており,市内の東西で土地利用や産業構造に異なる特徴がみられる.本研究は2016年度に実施した小平市産業振興計画に基づく基礎調査のアンケート結果に基づいて,東京都小平市における消費行動の傾向を品目別に検討し,それらの地域的な特徴について明らかにした.<br><b>2</b><b>.</b><b>東京都小平市における購買行動の地域特性</b> 図1および図2は,小平市の東部,中部,西部の地域別に生鮮食品および娯楽サービスの主要な購入・利用先の回答割合を線の太さで表現したものである.図1のように,小平市の東部地域における生鮮食品購入先の回答は,「花小金井駅周辺地区」で購買する割合が最も高い.一方,中部地域の回答では「一橋学園駅周辺地区」,西部地域は「小川駅周辺地区」などのそれぞれの地域から近い場所で購入する割合が高いほか,一部では「新宿駅周辺地区」や「吉祥寺駅周辺地区」などの都心方面の回答もみられた.娯楽サービスについては,小平市の東部地域は「新宿駅周辺地区」,中部地域と西部地域は「立川駅周辺地区」を利用する割合が最も高くなる一方で,相対的に小平市内における娯楽サービスの回答割合は低い傾向となっていた(図2). さらに,アンケート調査回答の購入・利用割合について,生鮮食品,紳士服・婦人服,娯楽サービス,教育サービス,外食サービス,医療・介護サービスの6項目について検討した.その結果,生鮮食品,教育サービス,医療・介護サービスなどの市民が日常的に利用するものに関しては小平市内やその近隣で購入・利用されていることが示された.一方,紳士服・婦人服,娯楽サービス,外食サービスについては,「新宿駅周辺」や「吉祥寺駅周辺」などの都心方面に加えて,「国分寺駅周辺」や「立川駅周辺」などの中央線沿線の商業地域がよく利用されていた.全体的にみれば,小平市東部地域の住民は「新宿駅周辺」や「吉祥寺駅周辺」などの都心方面において商品・サービスを購入・利用する傾向があるのに対して,西部地域の住民は「立川駅周辺」を回答する傾向があった.また,中部地域の住民は「国分寺駅周辺」の回答がやや多いが,おおむね東部地域と西部地域の購入・利用傾向の中間的なものとなっていた.以上のような小平市内で購入・利用先に差異がみられる傾向は,娯楽サービスでより顕著にみられた.つまり,服の購入,娯楽,外食などの週末の利用が想定される項目に関しては,小平市内よりも新宿や吉祥寺,立川などの中央線沿線の商業地域がよく利用されているといえる.