著者
半沢 康 武田 拓 加藤 正信 小林 初夫 本多 真史
出版者
福島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

同一のインフォーマントに同じ方言調査を繰り返し実施した場合,その調査結果はどの程度安定するのだろうか。本研究は方言調査データの「信頼性」(調査データがどの程度安定するのか)を明らかにすることを目的とする。宮城県角田市と伊具郡丸森町および福島県田村郡小野町において実験的調査を実施し,方言調査データの信頼性を把握した。伊具地方の調査では,多くの項目の安定性(2回の調査の一致度)は80%程度との結果が得られた。他のデータについても今後も分析を進め,結果を公表する予定である。
著者
小林 初夫 安部 清哉
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.12, pp.173-225, 2014-03-01

本研究は、2011 年3 月11 日の東日本大震災で、避難生活を強いられた小学校児童・中学校生徒が受けたであろう言語面への影響についてアンケート調査を実施し、言語形成期にあたる児童生徒が受けた言語の面での有形無形の影響を、部分的にでも記録しようとするものである。児童生徒が、避難生活前後において、各自の言語や周囲の言語の変化について、どのように受け止め、どのように感じたのか、主にその言語意識の側面に関する質問への選択回答形式と自由記載形式によってアンケート形式で調査した。調査対象は、福島県南相馬市の小学校3 校、中学校1 校で、2012 年2 ~ 3 月の間に学校別に実施し、小学生計57 名、中学生計91 名、合計148 名の回答を得た。それを、小・中別、中学の学年別、男女別、避難先の遠近別ほかの観点から分類して集計し、それぞれについて若干の分析と考察を行った。調査ということそのものの“ 難しさ” もあったが、幸い児童生徒の皆さんおよび関連諸方面のご理解とご協力をいただき、小さな調査ではあるが、前例のほぼない言語意識の記録を残すことができた。回答からは、避難生活後、友達の言葉が変化したと感じた児童生徒は、小学生で29%、中学生で41%、平均で39%あり、言語形成期にある児童生徒の5 分の2 以上が、何らかのかたちで言葉への影響を被ったであろうことが推定された。また、複数選択回答式質問への避難先別平均回答率の相違からは、言葉がより異なる県外への避難を経験した児童生徒の方が、福島県内避難の児童生徒の場合よりも、より強く言葉(地域言語)を意識するようになった様子が読み取れた。\ 本研究は、「震災原発等による避難生活が言語形成期の児童生徒に及ぼす影響に関する調査研究」(学習院大学人文科学研究所の平成24 年度特別共同研究プロジェクト、代表:安部清哉)の研究成果の一部である。\This research was based on a survey about the impact on the language of elementary and junior high school students who were forced to live as refugees in local or di erent prefectures after the earthquake on March 11, 2011. Th e survey was conducted in a questionnaire form that asked students, who were in a the formative period for personal language, about how they felt there had been changes in their or other peopleʼs language since living as evacuees. Three elementary schools and one junior high school in Odaka, Minamisoma City in Fukushima were surveyed. The total response was one-hundred forty-eight including fty-seven elementary school students and ninety-one junior high school students. Th e period of survey was from February 2012 to March 2012. Th e response was aggregated for the study by lementary/junior high school, school year, gender, and the distance of their relocation. is is an unprecedented record as a language survey of elementary and junior high school students in uenced by the Great East Japan Earthquake. From the survey responses, students noticed that their friendʼs personal language had changed after living as evacuees: 29% of students noticed in elementary school, 41% in junior high school, and the average proportion is 39%. It appears that two fths of students in the formative period of personal language development had their language a ected in some way by their lives as evacuees.