著者
小林 弘憲 勝野 泰朗
出版者
社団法人 におい・かおり環境協会
雑誌
におい・かおり環境学会誌 (ISSN:13482904)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.181-187, 2010-05-25 (Released:2016-04-01)
参考文献数
27

「ブルガリアン(オールド)ローズ,リンゴのコンポート」などのニュアンスを持ち,植物,果物などに幅広く存在するβ-ダマセノンは,いくつかの脂肪酸エステルとともにワインのフルーティーさに寄与する物質である.酸素の介在,低pH, 高温処理は,甲州果汁におけるβ-ダマセノン量の増強に有効な因子であった.また,プレス区分の果汁は,フリーラン区分の果汁に比べ,より多くのβ-ダマセノンを含んでいた.甲州ブドウの各器官におけるβ-ダマセノン量は,重量比として果汁 : 果皮=1 : 3であった(種子は検出されず).これらの知見を基に,プレス果汁を用いたスキンコンタクト法を採用した実用化規模のワイン醸造を試みた結果,通常の甲州ワインと比較して最大7倍程度のβ-ダマセノン濃度を含有する甲州ワインが得られた.
著者
小林 弘憲
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.111, no.6, pp.381-387, 2016 (Released:2018-07-13)
参考文献数
33

ワインの香りは,その品質を決定する重要な要素である。ワインの香りは,ブドウに由来する香り,酵母による発酵香,MLFによる香り,熟成で生じる香りが渾然一体となったものであるが,なかでもブドウの品種に特徴的な香りがよく表れていることが重視される。一方,未熟な香りなど,ブドウに起因する好ましくない香りも知られている。本稿では,甲州,マスカット・ベーリーA,シラーと各品種に特徴的な香りの研究に取り組んでいる著者に,ブドウに由来するポジティブな香,ネガティブな香について,わかりやすく解説していただいた。