著者
足立 厚子 大塚 晴彦 山野 希 濱岡 大 井上 友介 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本皮膚免疫アレルギー学会
雑誌
日本皮膚免疫アレルギー学会雑誌 (ISSN:24337846)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.317-322, 2019-04-30 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

多種の魚摂取や, 魚コラーゲンペプチド入り美容ドリンク剤飲用によって, 口腔アレルギー症候群や, 運動が加わると食物依存性運動誘発アナフィラキシーを起こした22歳女性の症例を経験した。測定しうるすべての魚に対する特異的IgE (CAP FEIA法) が陽性であるとともに, プリックテストにて検査したすべての魚, 魚加工品, 美容ドリンク剤および美容ドリンク剤主成分の魚コラーゲンペプチドに強陽性を示した。ELISA法にて自験例の原因アレルゲンは, 主要アレルゲンであるパルブアルブミンではなくコラーゲンであると診断した。コラーゲンペプチドは家畜由来と魚由来とがあり, 産業原料として粉末や水溶液で流通している。コラーゲンペプチドは食品やドリンク剤のみならず, 化粧品にも多く含まれる。魚類アレルギー患者では注意が必要である。
著者
木下 侑里 藤本 和久 李 民 篠原 理恵 小林 征洋 川名 誠司 佐伯 秀久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1348-1352, 2014-12-01 (Released:2017-02-10)

海産物摂食により発症したアニサキスアレルギーの2例を経験した.症例1は,サバ,タイ,ヒラメを摂食後に膨疹と呼吸困難が出現した.特異的IgE (ImmunoCAP)はアニサキスがclass 5であった. ELISAによる特異的IgE測定では,アニサキス非加熱粗抽出液およびAni s 12が陽性であった.症例2は,ヒラメとブリを摂食後に掻痒と呼吸困難が出現した.特異的IgEはImmunoCAPではアニサキスがclass 6で, ELISAではアニサキス非加熱粗抽出液とAni s 1, 4, 6と12が陽性であった.いずれも被疑食物を用いたプリックテストは陰性であった.症例1ではAni s 12が唯一陽性の抗原であったこと,症例2ではAni s 12が最も強く陽性であったことから, Ani s 12を主要抗原の一つと考えた. Ani s 12は2011年に同定されたアニサキスの新しい抗原である.従来知られていたAni s 1, 2と7に加えて, Ani s 12特異的IgEの測定は今後アニサキスアレルギー診断に有用になる可能性があると考えた.
著者
林 綾乃 深井 和吉 小林 征洋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.209-212, 2020 (Released:2020-05-21)
参考文献数
12

症例は28歳男性,製造業.昼食時琵琶湖の小鮎あめ煮®を2尾摂取直後に胃痛が出現し,胃薬を内服した.1時間後に顔面に瘙痒伴う発赤が出現し,呼吸困難となり救急搬送された.食材について皮膚テスト,血清検査による原因検索を行った.皮膚プリックテストでは琵琶湖のコアユ・エビ・カニ・イカに陽性を示し,一般的なアユや他の魚類は陰性であった.抗原特異的IgEではエビ・カニ・ダニ・ガ・ユスリカ・ゴキブリに陽性を示したが,rGad c 1(タラパルブアルブミン),rPen a 1(エビトロポミオシン)の各アレルゲンコンポーネントは陰性であった.またELISAではコアユ・アユ・マサバの抽出液およびマサバパルブアルブミン・マサバコラーゲンの反応はみられなかった.以上より琵琶湖のコアユによるアナフィラキシーと診断した.琵琶湖のコアユによるアレルギーは本症例が初めての報告である.コアユ特有の原因抗原が存在する可能性が考えられた.
著者
白川 典子 藤本 和久 市山 進 小林 征洋 佐伯 秀久
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.50-54, 2017-01-31 (Released:2017-02-28)
参考文献数
18

症例は21歳男性。3年前, サケのホイル焼きを摂食後, 全身に搔痒を伴う発疹が出現し, 呼吸苦をきたした。その後もハモで顔面腫脹・発疹・呼吸苦, タラで顔面腫脹・発疹, ウナギおよびサンマで口腔内違和感, アミノコラーゲン入り栄養ドリンクで膨疹が出現した。Prick to prick test ではウナギ (加熱) , アナゴ (加熱) , サンマ (生) が陽性だったが, サンマ以外の生魚は陰性であった。ELISA法によるアレルゲンの検索を行い, 魚類コラーゲンが原因抗原であると診断した。魚類コラーゲンアレルギー患者では, 生魚を用いたprick to prick test では偽陰性になることがあり注意を要する。また, コラーゲンは加熱によっても抗原性が低減化しない。さらに近年では, 魚類コラーゲンが栄養ドリンクや化粧品にも用いられている。ウナギ目の魚類による即時型アレルギーの報告は少なく, 検査方法および生活指導に注意を要する。