著者
木下 侑里 藤本 和久 李 民 篠原 理恵 小林 征洋 川名 誠司 佐伯 秀久
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.63, no.10, pp.1348-1352, 2014-12-01 (Released:2017-02-10)

海産物摂食により発症したアニサキスアレルギーの2例を経験した.症例1は,サバ,タイ,ヒラメを摂食後に膨疹と呼吸困難が出現した.特異的IgE (ImmunoCAP)はアニサキスがclass 5であった. ELISAによる特異的IgE測定では,アニサキス非加熱粗抽出液およびAni s 12が陽性であった.症例2は,ヒラメとブリを摂食後に掻痒と呼吸困難が出現した.特異的IgEはImmunoCAPではアニサキスがclass 6で, ELISAではアニサキス非加熱粗抽出液とAni s 1, 4, 6と12が陽性であった.いずれも被疑食物を用いたプリックテストは陰性であった.症例1ではAni s 12が唯一陽性の抗原であったこと,症例2ではAni s 12が最も強く陽性であったことから, Ani s 12を主要抗原の一つと考えた. Ani s 12は2011年に同定されたアニサキスの新しい抗原である.従来知られていたAni s 1, 2と7に加えて, Ani s 12特異的IgEの測定は今後アニサキスアレルギー診断に有用になる可能性があると考えた.
著者
義澤 雄介 川名 誠司
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.115, no.10, pp.1473-1480, 2005-09-20 (Released:2014-12-10)

円形脱毛症の病変部には,リンパ球とともに肥満細胞の浸潤が認められ,円形脱毛症において肥満細胞が重要な病因的役割を果たしていることが推察されている.我々は,第2世代抗ヒスタミン薬であるエバスチンによる円形脱毛症治療を試み,その効果を検討した.円形脱毛症患者23例にエバスチン10 mgを1日1回投与し(エバスチン投与群),プラセーボ群として9例にディアゼパム2 mgを1日1回投与した(ディアゼパム投与群).それぞれ3カ月間投与し,脱毛病変の観察を行ったところ,エバスチン投与群では23例中14例(60.9%)に発毛を認め,ディアゼパム投与群では9例中1例(11.1%)のみに発毛を認め,その比率はエバスチン投与群で統計学的に有意に高かった(p=0.0179).また,ディアゼパム投与群で発毛を認めなかった8例に対し,ディアゼパム投与終了後からエバスチン10 mgを3カ月間投与したところ,6例に発毛が認められた.これらの結果は,円形脱毛症に対してエバスチンが有効であることを示唆した.エバスチン投与群において発毛を認めた14症例と認めなかった9症例に分けて検討すると,性別,罹病期間,重症度の構成に差はなかったが,平均年齢は発毛を認めた14症例で有意に高く(それぞれ45.3±16.9歳,25.3±9.3歳.p=0.0088),年齢が高いほどエバスチンの効果が高い可能性が考えられた.
著者
菊地 伊豆実 田沼 弘之 川名 誠司
出版者
日本医科大学医学会
雑誌
日本医科大学医学会雑誌 (ISSN:13498975)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.6-13, 2013 (Released:2013-03-11)
参考文献数
70

In hyperkeratotic type tinea pedis, a sufficient curative effect is generally not obtained with topical antimycotic agents alone, because the main symptom is plantar keratosis. Oral antifungal drugs, such as itraconazole and terbinafine, are useful for treating hyperkeratotic tinea pedis in patients who can orally ingest drugs. In patients who do not respond to oral antifungal agents, we recommend the combination of an oral antifungal agent (such as itraconazole or terbinafine) and a topical antifungal agent, although problems may be encountered in obtaining reimbursement under the Japanese health insurance system. If oral administration is impossible, various topical application methods, such as concurrent use of urea ointments and the use of occlusive dressing technique, can be tried. In any case, it is important to continue treatment without losing hope. Combination therapy with oral and topical antimycotics is considered the most effective treatment. I generalized including domestic and foreign reports, and I pointed out problems, mainly regarding the cure for disease in consideration of the pharmacokinetics in the stratum corneum. In the future, we hope to see the development of more oral and topical antifungal agents that have fewer systemic adverse effects (in particular, hepatic disorders), have interactions with other drugs, and are transferred to the skin at higher concentrations. Treatment regimens (including dosage and treatment period) for existing drugs will also have to be reviewed in multicentre clinical trials.
著者
矢部 朋子 三石 剛 川名 誠司
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.114, no.7, pp.1271-1275, 2004

1999年から2003年の間に当科を受診したヒトパルボウイルスB19(human parvovirus B19,以下HPVB 19)感染患者67例について,臨床症状,合併症,妊婦が感染した場合の胎児への影響について検討した.患者は0歳から60歳で,30歳代の女性が最も多かった.患者数は2001年に多く,月別に比較すると,6月に多かった.また,主な臨床症状について小児と成人における出現率を比較したところ,顔面,四肢の紅斑は小児に多く,手足の浮腫,関節痛が成人に多くみられた.皮疹の性状には,成人,小児ともに典型的な顔面の平手打ち様の紅斑や四肢のレース状の紅斑以外に躯幹,四肢の点状紅斑があった.また小児では顔面,躯幹,四肢の点状出血があった.HPVB19に感染した成人女性35例中妊婦は14例で,そのうち2例(14.3%)は妊娠の経過に異常を来たし,1例は子宮内胎児死亡,もう1例は切迫早産であった.妊婦にHPVB19が感染した場合は慎重な対応が必要と考えた.
著者
川名 誠司 東 直行 山岡 淳一 井村 純 片山 美玲
出版者
日本医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は、皮膚におけるCRH-POMC反応系が毛周期の制御機構に及ぼす影響を解明することにある。前年度(2003)は、心理ストレスがマウス毛周期のtelogen stageを有意に延長させ、そのメカニズムは毛包ケラチノサイト、脂腺細胞に強く発現するCRHの作用を介することを証明した。従来、毛周期の研究にはC57BL/6マウスの背部皮膚を機械的に脱毛し、直後から成長期が同調して開始する性質を利用する。我々の研究もこの性質を応用している。しかしながら、現在、成長期の強制発現がどのようなメカニズムに基づいているか不明である。本研究の遂行にあたって、このメカニズムを明らかにしておくことは必要不可欠のことと考える。特に、CRHの関与については興味深い。そこで、今年度(2004)はCRHノックアウトマウスとwildマウスにおいて、脱毛によって誘導された毛周期毎に皮膚に分布する神経線維ならびに活性化肥満細胞数の経時的変化、神経ペプチド(CRHおよびSubstance P ;SP)、神経成長因子(Nerve growth factor ; NGFおよびGlial cell line-derived neutrophilic factor ; GDNF)の発現についてELISAにて測定し、同時に免疫組織化学染色にてその局在を検討した。その結果、両マウスに共通して、成長期初期(anagen I〜III)に毛包ケラチノサイト、脂腺細胞、平滑筋細胞にNGFが急速かつ多量に発現することが一義的変化であることが明らかになった。その後、POMCの発現、SP陽性神経線維の増加、活性化肥満細胞の増加、毛包におけるTNF-αなどサイトカインの増加が続いた。CRHノックアウトマウスにおいてはCRHの発現はなかったが、α-MSH、ACTHなどPOMCの発現はwild typeと有意の差はなかった。以上の結果は、機械的脱毛によって皮膚に創傷反応をきたした結果NGFが産生され、ケラチノサイトの増殖、神経細胞の可塑化/成長、肥満細胞由来のサイトカインによる毛乳頭細胞の活性化などの反応が進展していったことを示唆した。また、CRHの存在がなくとも別のルート(例えば、NGFなどの作用)でPOMCの発現が誘導され、その後の毛周期が進行、維持されることが推測された。