著者
宮脇 長人 表 千晶 小栁 喬 笹木 哲也 武 春美 松田 章 北野 滋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.98-101, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
4

小型円筒型界面前進凍結濃縮試験装置およびスケールアップ用装置としての循環流壁面冷却型界面前進凍結濃縮装置を用いて日本酒の凍結濃縮を行った.前者においては,市販清酒のアルコール度数を12.5vol-%から24.0%に,また,後者においては市販日本酒原酒のアルコール度数を17.0vol-%から27.1%に濃縮することができた.後者の濃縮酒については,これをアルコール濃度基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した結果,濃縮前後でほとんど変化はなく,界面前進凍結濃縮法により成分分布プロフィールを維持したままの濃縮が可能となることがわかった.このことは,濃縮前と比較して成分分布が大きく変化するこれまでの蒸留酒とは異なる,これまでにない新カテゴリーの日本酒および各種アルコール飲料の製造が可能となることを意味している.
著者
宮脇 長人 表 千晶 小栁 喬 笹木 哲也 武 春美 松田 章 田所 佳奈 三輪 章志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.159-165, 2021

<p>流路閉鎖循環方式界面前進凍結濃縮装置を用いてルビーロマン果汁の凍結濃縮を行い,糖度を14.6Brixから23.0Brixに濃縮することができた.濃縮果汁をBrix基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した.有機酸分布については濃縮前後でほとんど変化はなく,また,香気成分分布についても,その分布プロフィールはそれほど変化していない高品質濃縮が可能であることがわかった.</p><p>凍結濃縮果汁を発酵させてルビーロマンワインを試作した結果,アルコール濃度は14.5vol-%となり,本方法によれば補糖を必要とすることなく,十分に高いアルコール濃度が得られることがわかった.ルビーロマンワインの有機酸分布においては,発酵前後ともリンゴ酸が主成分であるが,発酵によりピログルタミン酸,乳酸が僅かに増加,酢酸,コハク酸が大きく増加した.また香気成分分析においては,発酵により原果汁香気成分のいくつかは消失し,これに代って,ethanol,isoamyl acetate,isoamyl alcohol,ethyl octanoate,phenethyl alcohol,octanoic acid,decanoic acidなど,発酵生産物が大きく増大したものの,試作ルビーロマンワインは全体としてはルビーロマン香気成分を十分保持していることがわかった.以上により,界面前進凍結濃縮果汁を用いることで,これまでに無い,新しいタイプのルビーロマンワイン製造への可能性が示された.</p>