著者
宮脇 長人 表 千晶 小栁 喬 笹木 哲也 武 春美 松田 章 北野 滋
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.98-101, 2017-02-15 (Released:2017-03-01)
参考文献数
8
被引用文献数
4

小型円筒型界面前進凍結濃縮試験装置およびスケールアップ用装置としての循環流壁面冷却型界面前進凍結濃縮装置を用いて日本酒の凍結濃縮を行った.前者においては,市販清酒のアルコール度数を12.5vol-%から24.0%に,また,後者においては市販日本酒原酒のアルコール度数を17.0vol-%から27.1%に濃縮することができた.後者の濃縮酒については,これをアルコール濃度基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した結果,濃縮前後でほとんど変化はなく,界面前進凍結濃縮法により成分分布プロフィールを維持したままの濃縮が可能となることがわかった.このことは,濃縮前と比較して成分分布が大きく変化するこれまでの蒸留酒とは異なる,これまでにない新カテゴリーの日本酒および各種アルコール飲料の製造が可能となることを意味している.
著者
四宮 陽子 宮脇 長人
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.271-279, 2009-05-15
参考文献数
22
被引用文献数
1

食料自給率40%の2002年と60%の1970年の食事を国民栄養調査結果などの資料に基づいて再現し,食品構成や栄養バランスおよび食料消費に伴うCO<SUB>2</SUB>排出量の比較を行った.<BR>1. 1970年は和・洋・中の料理の種類に関わらず,ご飯とみそ汁,漬物がベースという食事パターンが多かった.2002年は主食の米が減少し,主菜の肉類や魚介類が豊富に増加し,副菜も季節,産地を問わず贅沢に多様化した.<BR>2. PFCバランスを比較すると1970年の方が理想バランスに近く,2002年はたんぱく質と脂質が増加し,炭水化物が減少していた.<BR>3. 献立から計算された1日平均CO<SUB>2</SUB>排出量は,1970年907g/日に対して,2002年は2743g/日と約3倍に増加し,その差は環境省のCO<SUB>2</SUB>削減目標値1人1日1kgを大幅に超えた.この増加の原因は摂取量増加と自給率低下の両方が考えられる.
著者
宮脇 長人
出版者
石川県立大学
雑誌
石川県立大学研究紀要 = Bulletin of Ishikawa Prefectural University (ISSN:24347167)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-9, 2018-03

液状食品の濃縮法として、凍結濃縮法は蒸発法や膜濃縮法と比較して最も高品質が得られるものの、これまでにあまり実用化されていない。凍結濃縮法の一つである界面前進凍結濃縮法について、そのいくつかの技術的課題を克服することによって、その実用化への可能性を見出すことができた。本方法の最大の特長は濃縮前後において成分分布プロフィールがほとんど変化しないことである。本方法をいくつかの石川県特産品に適用した。その結果、加賀棒茶高品質濃縮品、高濃度濃縮日本酒(アルコール濃度 27.1 vol%)、補糖不要のブルーベリーワイン、ルビーロマンワインなど、これまでにない高品質濃縮食品新素材を提案することができた。
著者
宮脇 長人 表 千晶 小栁 喬 笹木 哲也 武 春美 松田 章 田所 佳奈 三輪 章志
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.159-165, 2021

<p>流路閉鎖循環方式界面前進凍結濃縮装置を用いてルビーロマン果汁の凍結濃縮を行い,糖度を14.6Brixから23.0Brixに濃縮することができた.濃縮果汁をBrix基準で濃縮還元し,濃縮前試料と有機酸分布および香気成分分布を比較した.有機酸分布については濃縮前後でほとんど変化はなく,また,香気成分分布についても,その分布プロフィールはそれほど変化していない高品質濃縮が可能であることがわかった.</p><p>凍結濃縮果汁を発酵させてルビーロマンワインを試作した結果,アルコール濃度は14.5vol-%となり,本方法によれば補糖を必要とすることなく,十分に高いアルコール濃度が得られることがわかった.ルビーロマンワインの有機酸分布においては,発酵前後ともリンゴ酸が主成分であるが,発酵によりピログルタミン酸,乳酸が僅かに増加,酢酸,コハク酸が大きく増加した.また香気成分分析においては,発酵により原果汁香気成分のいくつかは消失し,これに代って,ethanol,isoamyl acetate,isoamyl alcohol,ethyl octanoate,phenethyl alcohol,octanoic acid,decanoic acidなど,発酵生産物が大きく増大したものの,試作ルビーロマンワインは全体としてはルビーロマン香気成分を十分保持していることがわかった.以上により,界面前進凍結濃縮果汁を用いることで,これまでに無い,新しいタイプのルビーロマンワイン製造への可能性が示された.</p>
著者
宮脇 長人
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.255-266, 2021-06-15 (Released:2021-06-25)
参考文献数
73

The primary physicochemical aspects of freezing are the substantial reduction of water activity and the increase of osmotic pressure by freeze-induced concentration. The temperature-dependent ice fraction subsequently affects the changes in thermal properties and specific chemical reaction processes. In frozen food, the ice structure is strongly determined by the moving ice-front through the balance of water mass transfer and heat transfer. By controlling the ice structure, progressive freeze-concentration could be applied to concentrate liquid food with high quality. In some living organisms, freeze-related biosubstances are produced and accumulated for freeze-tolerance. The cell structure also plays an important role in the freeze-tolerance of cells in microorganisms, plants, and animals.