著者
伊藤 康男 阿部 達哉 富岳 亮 小森 哲夫 荒木 信夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-107, 2010 (Released:2010-03-03)
参考文献数
11
被引用文献数
9 22

症例は19歳女性である.急性の異常行動と変動する意識障害で発症した.入院時妊娠17週で児の発育に問題はなかった.髄液検査で単核球優位の細胞数増多,抗NMDA受容体抗体陽性,頭部MRIで明らかな異常所見なく,非ヘルペス性辺縁系脳炎が考えられた.妊娠26週目より意識障害は徐々に改善し,妊娠37週で自然分娩した.骨盤MRIで卵巣奇形腫をみとめず,分娩後の抗NMDA受容体抗体が陰性化したことより,本症例の発症に妊娠との関連が示唆された.妊娠中に発症した抗NMDA受容体抗体陽性の非ヘルペス性辺縁系脳炎の報告例はまだなく,貴重な症例と考えたので報告する.
著者
小森 哲夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.33-38, 2021 (Released:2021-07-28)
参考文献数
9

Many patients with neuromuscular disease are involved in respiratory insufficiency. It becomes difficult problem especially in those patient with COVID–19. There are 7 important factors for the respiratory care in this condition. Those are risk of aerosol, care plan for non–invasive positive pressure ventilation and tracheostomy invasive positive pressure ventilation, tips of suction, oxygen therapy, mechanical clearance of tracheal air way and rehabilitation technique of respiratory care.The risk of aerosol might be the most important for every other 6 factors. I informed each factor precisely. It should be useful for daily clinical setting.
著者
北野 晃祐 浅川 孝司 上出 直人 寄本 恵輔 米田 正樹 菊地 豊 澤田 誠 小森 哲夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0997, 2017 (Released:2017-04-24)

【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の運動療法として,筋力トレーニングや全身運動が機能低下を緩和することが示されているが,ホームエクササイズの有効性の検証は皆無である。本研究では,ALS患者に対するホームエクササイズの効果を前向き多施設共同研究により検証した。【方法】国内6施設にて,神経内科医によりALSの診断を受け,ALS機能評価尺度(ALSFRS-R)の総得点が30点以上の軽症ALS患者19例を介入群とした。さらに,ALSFRS-Rの総得点が30点以上で,年齢,性別,初発症状部位,罹病期間,球麻痺症状の有無,非侵襲的陽圧換気療法の有無,ALSFRS-Rの得点,を介入群と統計学的にマッチさせた軽症ALS患者76例を対照群とした。なお,比較対照群は,同じ国内6施設において理学療法を含む通常の診療行為がなされた症例である。介入群には,理学療法士が対象患者に対して通常理学療法に加えて,腕・体幹の筋力トレーニングとストレッチ,足・体幹の筋力トレーニング,日常生活動作運動で構成したホームエクササイズを指導した。追跡期間は6ヶ月間とし,記録用紙を用いて実施頻度を記録した。安全性を確保するため,理学療法士が対象者の状況を1ヶ月ごとに確認した。主要評価項目はALSFRS-Rの得点とし,両群ともにベースラインと6ヶ月後に評価した。さらに介入群には副次評価項目として,Cough peak flow(CPF),ALS Assessment Questionnaire40(ALSAQ40),Multidimensional Fatigue Inventory(MFI)を,ベースラインと6ヶ月後に評価した。両群におけるベースラインと6ヶ月後の主要評価項目および介入群の副次評価項目を統計学的に解析した。なお,統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】介入群のうち13名(68%)が介入を完遂した。脱落例は,突然死や転倒に伴う骨折および急激な認知症状悪化によるもので,ホームエクササイズによる有害事象は認められなかった。介入完遂例は全例が週3回以上のホームエクササイズを実施することができた。効果評価として,6ヶ月経過後におけるALSFRS-R総得点には,介入群と対照群に有意差は認められなかった。一方,ALSFRS-Rの下位項目得点では,球機能と四肢機能には両群間で有意差を認めなかったが,呼吸機能では両群間に有意差が認められた(p<0.001)。すなわち,6ヶ月後の介入群の呼吸機能得点は対照群よりも有意に高く,呼吸機能が維持されていた。また,介入群におけるCPF,ALSAQ40,MFIは,介入前後で変化は認められず維持されていた。【結論】障害が軽度なALS患者に対するホームエクササイズの指導は,安全性および実行可能性があり,さらに呼吸機能の維持に有効であることが示された。