著者
伊藤 康男 阿部 達哉 富岳 亮 小森 哲夫 荒木 信夫
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.103-107, 2010 (Released:2010-03-03)
参考文献数
11
被引用文献数
9 23

症例は19歳女性である.急性の異常行動と変動する意識障害で発症した.入院時妊娠17週で児の発育に問題はなかった.髄液検査で単核球優位の細胞数増多,抗NMDA受容体抗体陽性,頭部MRIで明らかな異常所見なく,非ヘルペス性辺縁系脳炎が考えられた.妊娠26週目より意識障害は徐々に改善し,妊娠37週で自然分娩した.骨盤MRIで卵巣奇形腫をみとめず,分娩後の抗NMDA受容体抗体が陰性化したことより,本症例の発症に妊娠との関連が示唆された.妊娠中に発症した抗NMDA受容体抗体陽性の非ヘルペス性辺縁系脳炎の報告例はまだなく,貴重な症例と考えたので報告する.
著者
菊池 友和 山口 智 荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.253-256, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
13

日本の慢性頭痛のガイドライン2013では,一次性頭痛の急性期治療および予防に対する鍼治療は有効とされている.コクランレビューでは,片頭痛の予防に対する鍼治療は,予防薬物と比較し効果に差がないが,偽鍼と比較しても効果に差がない.しかし,episodicな片頭痛に限定すると偽鍼と真の鍼に効果の差が認められる.一方,本邦の報告でも,慢性片頭痛よりepisodicな片頭痛の方が効果が高いことが報告されている.鍼の作用機序については,片頭痛患者では,脳イメージングを用いた手法により,予防効果や発作期に対し,鍼刺激を行うことにより,主に脳の疼痛関連領域に影響がある可能性が示されている.
著者
菊池 友和 山口 智 鈴木 真理 荒木 信夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.480-483, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1ヶ月以上薬物療法を行い効果の得られなかった反復発作性緊張型頭痛(frequent episodic tension–type headache:FTTH)と慢性TTH(chronic TTH:CTTH)に分類し,鍼治療を行い,Visual Analogue Scale(VAS)による自覚症状の評価が50%以上改善したのを有効として,両群の治療回数・期間について検討した.対象は,TTH221例.FTTH82例(男28,女54,平均年齢52.7歳)とCTTH139例(男44,女95,平均年齢50.4歳)である.FTTHの有効率80.1%,CTTHの有効率59.9%であり,FTTH群の方が有意に高値であった(p<0.01).回数・期間はFTTH 2.8回14.9日,CTTH8.9回35.9日であり,FTTHの方が少ない回数で短期間に改善した(p<0.01).FTTHは,鍼治療を3回または2週間継続し,さらにCTTHは9回または5週間継続し効果判定する必要性が示された.
著者
荒木 信夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.5-6, 2016

The Japanese Society of Neurological Therapeutics is pleased to announce the launch of an electronic version of the Societys journal. Beginning in 2016, the Societys journal will be open access and all manuscripts will be accessible in both PDF and HTML (XML) format on J–STAGE (Japan Science and Technology Information Aggregator, Electronic). Each manuscript will have a unique digital object identifier (doi) that provides a permanent link to the manuscript and facilitates citation by researchers anywhere in the world. Members of the Japanese Society of Neurological Therapeutics will receive regular emails that include the table of contents of new issues as well as other important information about the journal.
著者
菊池 友和 山口 智 荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.88-91, 2022 (Released:2022-04-23)
参考文献数
16

日本の慢性疼痛のガイドライン 2021 では,「統合医療」の項で、「鍼灸治療は慢性疼痛に有用か?」というクリニカル・クエスチョン(CQ)で推奨度は2(弱):施行することを弱く推奨する(提案する)、とあり、慢性片頭痛や慢性緊張型頭痛などにも推奨され始めている。慢性疼痛患者に対する鍼治療効果を脳イメージングを用いた手法により,検討した結果、慢性片頭痛では初回では反応しなかった下行性疼痛調節系の部位が4週間継続して鍼治療を行うことで、賦活した。さらに慢性腰痛ではシャム鍼と比較し、真の鍼で脳活動部位に差異が認められ、痛み軽減も有意に真の鍼の方が高かった。このように慢性疼痛患者に対する鍼治療効果は、脳の疼痛関連領域にも影響がある可能性が示された。
著者
堀部 豪 荒木 信夫 小内 愛 井畑 真太朗 山口 智
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.34-40, 2023-02-01 (Released:2023-06-01)
参考文献数
25

【目的】神経サルコイドーシスは両側末梢性顔面神経麻痺の原因疾患の一つであるが、 これに対して鍼治療を実施した報告は我々が調査した限り存在しない。 今回、 両側末梢性顔面神経麻痺を発症、 神経サルコイドーシスが強く疑われた患者に対して鍼治療を実施し良好な経過を認めた症例を報告する。 【症例】73歳男性。 主訴:両側顔面神経麻痺。 現病歴:X年7月24日に右顔面神経麻痺発症、 27日に左顔面神経麻痺発症。 8月2日に当院脳神経内科を受診、 翌日に精査加療のため入院。 精査により神経サルコイドーシスが強く疑われステロイドパルス療法を実施。 8月26日に退院するも両側顔面神経麻痺は残存、 9月13日に当科を受診し鍼治療が開始。 身長159cm。 体重48.6kg。 神経学的所見:バレー徴候陰性、 病的反射陰性、 上下肢の深部腱反射や感覚検査は正常。 MMTは左足関節背屈のみ3。 柳原法:右26点、 左10点。 顔面神経を目標とした鍼通電刺激による表情筋収縮反応は、 右は0.04mAで収縮あり、 左は0.30mAで収縮なし。 右は軽度、 左は重度麻痺と考え、 麻痺の改善・後遺症の抑制を目的に鍼治療を実施。 鍼治療方法:右は聴会 (GB2)・下関 (ST7) へ鍼通電療法。 左は前頭筋、 眼輪筋の上・下、 上唇鼻翼挙筋、 鼻筋、 大・小頬骨筋、 口輪筋、 口角下制筋、 広頚筋へ置鍼治療を10分間実施、 106病日からは同部位に非同期鍼通電療法を実施。 治療頻度:週1-2回。 評価:柳原法。 経過:脳神経内科から処方されたステロイド薬に鍼治療を併用し、 右は170病日に38点、 左は204病日目に38点となった。 【考察・結語】本症例への治療効果は薬物治療と鍼治療の併用効果と言える。 神経サルコイドーシスが疑われた両側顔面神経麻痺患者に対して、 顔面神経の障害程度を考慮した鍼治療を実施した結果良好な治療成績を認め、 鍼治療は治療法の選択肢の一つとなり得る可能性が示唆された。
著者
山本 悦子 仲俣 菜都美 間嶋 満 倉林 均 高橋 一司 荒木 信夫 山元 敏正
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.408-411, 2022 (Released:2022-11-22)
参考文献数
10

嚥下障害は進行期のParkinson病(Parkinson disease:PD)患者の生命予後に大きく関わる症状の一つであり,病気の進行に伴い緩徐に出現するが,自覚的,他覚的にも気づきにくいことが多い.本研究の目的は,嚥下障害の出現頻度が高い進行期PD患者を対象として,食事摂取の可否に関連する因子を明らかにし,PD患者の嚥下障害を簡便に評価できる方法を検討することである.対象:当院脳神経内科に入院した進行期PD患者37名,平均年齢は77.0±5.8歳(meant±SD),平均罹病年数は7.9±6.3年であった.方法:嚥下造影検査(videofluoroscopic examination of swallowing:VF)の結果から明らかな嚥下障害を認めたか否かをもとに対象例を嚥下障害なし群と嚥下障害あり群の2群に分けた.次に両群を簡便に分別するための因子を検討するために,年齢,性別,罹病期間,入院期間,入院から嚥下造影検査までの日数,Hoehn&Yahr stage,VF検査時点の血清アルブミン値,body mass index,mini mental state examination(MMSE),咽頭反射の有無,反復唾液嚥下テストの値,自己喀痰排出能力,最長発声持続時間(maximum phonation time:MPT),声量,発話明瞭度,握力,歩行能力,入院期間,入院からVF検査までの日数について比較した.結果:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPT,咽頭反射で有意差を認めたが,他の項目では両群間に差はなかった.結論:握力,自己喀痰排出能力,声量,MPTが進行期PD患者の嚥下障害の有無を簡便に検出する指標となり得ることが明らかになった.
著者
出口 一郎 荒木 信夫 前島 伸一郎 武田 英孝 古屋 大典 加藤 裕司 棚橋 紀夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.749-754, 2008 (Released:2008-10-30)
参考文献数
15
被引用文献数
1 2

症例は59歳女性.突然の眩暈,嘔吐のため当院へ救急搬送された.頭部MRI拡散強調画像上,左上小脳動脈灌流域に急性期脳梗塞所見を認め,加療を開始した.入院後上記症状の改善を認めたが,入院5日後に施行した神経心理学的検査では記憶・遂行機能などの認知機能の著明な障害を呈し,SPECTでも両側基底核,小脳,側頭葉,頭頂葉および前頭葉におよぶ広範な血流低下がみられた.入院約1カ月および2カ月後の神経心理学的検査では認知機能の著明な改善を認め,SPECTでも上記部位の血流は改善していた. 本症例は小脳梗塞にて認知機能障害を呈したCerebellar cognitive affective syndromeと考えられた.従来,認知・行動障害は小脳後方領域の障害,また感情障害は虫部の障害と関連があるとする報告や,認知障害は後下小脳動脈領域の障害で生じ,上小脳動脈領域の障害では生じないという報告があるが,本症例では上小脳動脈領域の梗塞で遂行機能障害を呈し,情動性変化は認められなかった.
著者
荒木 信夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.502-507, 2015-03-10 (Released:2016-03-10)
参考文献数
11
著者
菊池 友和 山口 智 荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.253-256, 2019

<p>日本の慢性頭痛のガイドライン2013では,一次性頭痛の急性期治療および予防に対する鍼治療は有効とされている.コクランレビューでは,片頭痛の予防に対する鍼治療は,予防薬物と比較し効果に差がないが,偽鍼と比較しても効果に差がない.しかし,episodicな片頭痛に限定すると偽鍼と真の鍼に効果の差が認められる.一方,本邦の報告でも,慢性片頭痛よりepisodicな片頭痛の方が効果が高いことが報告されている.鍼の作用機序については,片頭痛患者では,脳イメージングを用いた手法により,予防効果や発作期に対し,鍼刺激を行うことにより,主に脳の疼痛関連領域に影響がある可能性が示されている.</p>
著者
荒木 信夫
出版者
日本自律神経学会
雑誌
自律神経 (ISSN:02889250)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.59-63, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
19

片頭痛に伴う症状には,自律神経の異常を示唆するものが多く認められる.前兆のある片頭痛患者の発作間欠期において,交感神経系の機能低下,およびsubstance-PやCGRPなどニューロペプチド系の機能低下および脱神経過敏,NO産生亢進およびNOの血管拡張作用の増強が存在することが示された.また,発作間欠期において発汗機能も低下していた.一方,片頭痛の頭痛発作時には,交感神経機能低下の状態が改善していることが確認された.脳血流を検討した結果,片頭痛発作時には視床下部を中心とした血流低下がみられた.髄液減少症の検討で,体位性頻脈症候群患者では髄液産生が充分でなく低髄液圧による起立性頭痛を呈することが示唆された.
著者
野本 直樹 多川 正 荒木 信夫 大久保 努 上村 繁樹
雑誌
宇部工業高等専門学校研究報告 (ISSN:03864359)
巻号頁・発行日
no.66, pp.5-9, 2020-03

To investigate the hygienic environment in Peru, we visited Cusco sewage treatment plant. The altitude of Cusco sewage treatment plant is 3,193 m being considered that it is one of the treatment plants installed at the highest elevation in the world. It is the newest plant in Peru and the present facility has run since 2014. The treatment type is trickling filter with PVC media. One of the features for being installed at high altitude is installing blowers to supply oxygen despite that trickling filter substantially does not need aeration. It is because of the low oxygen concentration in the air at high altitude. It should be noticed that the plant was entirely controlled by modernized and sophisticated system despite that it was built in developing country.
著者
上村 繁樹 大久保 努 多川 正 大野 翔平 荒木 信夫
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.303-312, 2017
被引用文献数
1

インドネシア,ジョグジャカルタのスクナン村では,住民による革新的なごみマネジメント・システムが運営されている。住民は,家庭ごみを,プラスチック,紙,金属・ガラス,生ごみに分別し,資源ごみは売却され,生ごみはコンポストにされて肥料として利用されている。また,プラスチック袋等のごみから作られた工芸品 (エコ雑貨) を生産・販売するなど,さまざまな工夫を凝らしたリサイクル活動がなされている。この活動によって,村に収入が入るだけではなく,村の生活環境も大幅に改善された。本稿では,この地域密着型ごみマネジメント・システムの詳細を紹介するとともに,途上国の農村における廃棄物管理のあり方について考察する。
著者
荒木 信夫 山口 隆司
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

都市下水処理UASB内に生息する嫌気性原生動物種ごとの季節変動を把握するため,顕微鏡観察による原生動物の計測と18SrRNA遺伝子を標的としたクローニング解析及びダイレクトシーケンス解析による同定を行った.原生動物は水温の変化によって増減し,最大11×103cells/mL(秋期),最低で0cells/mL(春期)となった.UASB内にはMetopuscontortusが優占していた.Metopusspの一細胞をマイクロマニピュレーターを用いて捕獲し,古細菌の16SrRNA遺伝子クローニングやFISH解析を行ったところ,酢酸資化性メタン生成古細菌が104cellsレベルで共生していた.原生動物の有無による連続実験の結果MetopusspはUASB内のバクテリア細胞を含む浮遊性成分を捕食していた.