著者
中村 栄治 小池 則満
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.24, pp.23-24002, 2023 (Released:2023-12-04)
参考文献数
9

大規模地震が発生した場合,名古屋駅周辺地区において,対向人流の交錯による人流交通の閉塞を防ぐための対策として,主要な徒歩による帰宅経路となるすべての歩道を一方通行化することの有効性を,シミュレーションにより量的に評価した.地震による停電により交通信号は無灯火となり,横断歩道では車両より歩行者が優先して通行する条件でシミュレーションを行った.当該地区の都市再生安全確保計画で記された徒歩帰宅者数を基準値とした場合,基準値の 6 倍までの徒歩帰宅者数であれば,一方通行化した避難経路においては人流交通の閉塞を防ぐことができることが明らかになった.この上限値は,歩道上の花壇や建築物による歩道の狭窄,および人流の合流により決まることがわかった.
著者
今井 裕太郎 小池 則満 西村 雄一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_66-I_73, 2012

木曽三川下流・伊勢湾岸の低平地においては、東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会が設置され、巨大台風に対する大規模な事前広域避難について検討がされている。そこで本研究では、名古屋市内の港区、南区、中川区の伊勢湾台風被害のあった公立小学校計6校の5年生もしくは6年生の保護者対象にアンケート調査を行った。その結果、事前広域避難そのものへの認識が低く、現状では円滑な広域避難は期待できないこと、ほとんどの家族が浸水域内に避難してしまうこと、大多数がマイカーで移動することが予想され、渋滞・駐車場対策が必要であることを述べた。また、上陸時間によって避難開始の時間が異なることから、呼びかけのタイミングが重要である可能性があることなどを指摘した。
著者
小池 則満
出版者
愛知工業大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は、傷病者搬送システムの評価モデルを構築し、傷病者発生から搬送までの一連のプロセスを定式化して評価を行い、次のような知見を得た。・傷病者搬送活動に関わるリスクは、「留置リスク」「長時間搬送リスク」「医療混乱リスク」に分類され、これらのリスクは相互に関係していることを明らかにした。・「医療混乱リスク」は、医療機関における傷病者の受入速度として定義することにより、過去の事例との相対的評価が可能となることを指摘した。・ケーススタディとして、航空機事故(ガルーダ・インドネシア航空機火災)および列車事故(信楽高原鉄道事故)をとりあげた。搬送時間を政策変数とした場合、全体のリスク低減は難しいがリスクの性質を変えることは可能であることを指摘した。・阪神・淡路大震災において、医療機関混乱の原因となった傷病者の医療機関への集中について、予測モデルを構築し、医療機関のロケーションが重要であることを指摘した。・名古屋市およびその周辺の災害拠点病院について、周辺地域の現状を調査し、それぞれの医療機関の立地状況に即した対策立案が必要と考えられることを指摘した。これら一連の研究は、災害医学分野と土木工学・交通工学分野の研究者・担当者がリスクに関する認識を共有して対応を話し合うための理論として、有用であると考える。課題としては、リスクを低減する災害情報システムの提案、具体的には、指令システムの改良、地理情報システムを用いたリスク評価システムなどが挙げられる。