著者
小池 重夫 久野 由基一 森田 博行
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.510-515, 1982-06-30 (Released:2009-02-17)
参考文献数
26
被引用文献数
3 3

本実験では, シリカがウサギの肺マクロファージと腹腔内の多形核白血球の過酸化脂質の生成, 乳酸脱水素酵素の細胞外放出, ニトロブルーテトラゾリウム (NBT) の還元能に及ぼす影響を調べた。対照にはマクロファージ単独, あるいはコランダム (Al2O3) を選んだ。3mg/107cells のシリカを1時間, 肺マクロファージに捕食させると過酸化脂質-酸化された不飽和脂肪酸の分解産物であるマロニルジアルデヒドであらわす-が増量した。また, マクロファージ外に放出した乳酸脱水素酵素の活性は著明に亢進し, シリカが細胞膜を傷害したことを示している。シリカはコランダムに比べて顕著なNBTの還元能を示したが, これはシリカを捕食したマクロファージにスーパーオキシドの産生が亢進したことを示すものである。以上の結果はシリカは肺マクロファージに捕食されて, 過酸化脂質の生成を促進すると同時にスーパーオキシドの生成を亢進し, 細胞膜を傷害することを示している。
著者
小池 重夫 駒谷 美智子
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.4-8, 1969-01-20

さきに,長谷川等は沃化メチル中毒家兎の血清に顕著なにごりが見られること,またこのにごりは血清総脂質血清コレステロールの増加によることを発見し報告している。 本実験では,9羽の家兎に,長谷川等の方法に従い,中毒量の57mg/kgのCH_3Iを皮下注射し,48時間後に心臓より採決した。血清トリグセライド(TG)量は注射後は注射前に比べて約19倍の増加,血清総コレステロールは約2倍の増加を示した。したがって血清のにごりは主としてのTG増加によるものと推定される。血清TGの増加には二つの成因が考えられる。一つはTGが肝で過剰生産されて血中に流出する場合,もう一つはTGが末稍流血中のリポ蛋白リパーゼ(LPL)の働きで,水解される過程が障害される場合である。さらに上記二つの成因が共に起こり相加されて働くことも考えられる。 沃化メチル中毒のtriglyceridemiaの成因としては,むしろ肝におけるTGの過剰生産が主因となると推定されるが,今回は後者,すなわちLPLの阻害について実験した。 CH_3I注射家兎のtriglyceridemicの血漿に比べて,家兎のpost-heparin LPLの活性を20%程度余分に阻害した。したがってtriglyceridemicの血漿にはLPLの阻害因子が含まれているとも考えられる。Holletはこのinhibitorの化学的,物理的性質からしてglycoproteinでないかと推定している。 本実験ではCH_3I注射家兎の血漿の中のglycoprotein量を結合蛋白ヘキソーズとmucoprotein量で測定したところ,両者ともに注射前の値に比べて有意に増加していた。またセルローズアセテート膜によると電気泳動法による血清glycorpteinの分画を求めたところ,注射後の血清は注射前の血清に比べてAlb.とγ-globulin分画の割合の減少と,α_1, α_2, β_1, β_2 globulin分画の割合の増加が見られた。これは同時に泳動した血清蛋白の分画の動きと平行している。CH_3I注射家兎のにごつた血漿が,注射前の血漿に比べてLPLの活性を阻害する力が強いことを,血清のglycoprotein量の増加,分画の変動とあわせ考えるとLPLのinhibitorの一つとしてglycoproteinがあげられよう。