著者
小松 和彦

講書始の儀におけるご進講の内容(平成31年1月11日)
著者
小松 和彦
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.68, pp.115-136, 1996-03-29

死はさまざまなイメージで語られる。生者にとって,死の体験を語ることができない限り,死は外在的なものであり,他人の死を眺め,その死の体験を想像し,そのイメージを作り上げることによってしか死を表現することができない。物部の葬送儀礼では,まずそのイメージは「生」のカテゴリーの象徴的逆転として語り示される。日常における「右」の強調に対して「左」の強調,日常の作法に対するその逆転の作法,等々。そうした葬式の作法によって「死」のカテゴリーが形成され,そして,そうした「死」の記号は死の記号であるがために,死という出来事の回りに配置され,日常生活のなかに持ち込むことがタブーとされることになる。日本では,葬式にこうした「死」の記号が用いられるのは一般的なことに属するが,物部の葬式ではそれがかなり徹底しているといっていいだろう。物部の葬式は,死者の霊の「あの世」への追放と「あの世」での再生を期待したモチーフを強調した儀礼となっている。その典型的儀礼行為が,山伏の宿借りを拒絶する奇妙な儀礼的問答(山伏問答)であろう。死出の旅に発ったはずの死者の霊が立ち戻ってくるということを演劇化したこの儀礼は,亡くなったばかりの死者とは,あの世に行くのを好まずに現世に戻ってくるものなのだ,という観念を前提にしており,物部の人々の死を迎える気持ちや死後観を如実に伝えているといえる。物部の葬送儀礼では,西方浄土観が強調されている。しかし,それは葬送儀礼が仏教の影響を強く受けているためであって,それ以前は,古代の地下の冥界にもつながるような他界観を持っていたことが「みこ神」儀礼などからうかがうことができる。しかし,西方浄土観にせよ,地下他界観にせよ,そのイメージはきわめて素朴で,現世こそ楽園であるということを強調している。一種の異装習俗である「師走男に,正月女」の埋葬習俗は,調査資料も乏しく,まだほとんど解明されていない習俗である。ここでの「異装」は,怨霊の一種である「七人みさき」に引かれるのを避けるために,「女」ならば「七人みさき」の災いが発現するので「女」を「男」とみせかけて埋葬する,いわば「トリック」である。「異装」して埋葬するという奇妙な埋葬法に関心が向かいがちであるが,むしろ問題の核心は,なぜ正月という「時」に「女」が死ぬと「七人みさき」が発現するのか,という点にある。物部村に限ったことではないが,葬送儀礼に参加した人たちは儀礼的ケガレ,いいかえれば一種の日常生活からの隔離の状態に入る。物部では,これを「ブクがかかる」と称している。物部では,ブクと呼ばれるケガレは死,出産,婚礼の際に生じるという。いわゆる誕生・結婚・死の人生における大きな節目に当たり時にブクが生じるのである。この人生の節目に当たる儀礼で共食するとブクがかかるという。したがって,物部では,ブクは儀礼に参加した人々のカテゴリーを浮き上がらせる機能も帯びている。
著者
小松和彦編
出版者
せりか書房
巻号頁・発行日
2017
著者
小松 和彦 コマツ カズヒコ
雑誌
井上円了選集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.449-463, 2001-05-20
著者
小松 和彦
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
日本研究
巻号頁・発行日
vol.35, pp.311-340, 2007-05-21

高知県香美市の山間地域、旧物部村(この村の南半分が近世の槇山郷である)には、いざなぎ流と呼ばれる民俗宗教が伝承されている。いざなぎ流は、神道、陰陽道、修験道、シャーマニズム、民間信仰などが混淆した宗教で、その宗教的専門家はいざなぎ流太夫と呼ばれている。本稿は、このいざなぎ流太夫たちの先祖たちが関与していたと思われる「天の神」の祭り、特に岡内村の名本家の天の神祭りを詳細に記述し若干の考察をすることを目的としている。
著者
藤永 真史 小林 久茂 小松 和彦 小木曽 秀紀 上原 敬義 小野 佳枝 冨田 恭範 小河原 孝司
出版者
関東東山病害虫研究会
雑誌
関東東山病害虫研究会報 (ISSN:13471899)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.52, pp.25-29, 2005-12-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
4

長野県のセルリー栽培において最も問題である病害は, 連作によって引き起こされる難防除土壌病害の萎黄病である。これまでは, 化学合成薬剤である土壌くん蒸剤によって恒常的に防除を実施してきたが, 現状, 生産農家からは環境に負荷をかけない防除法の開発が強く要望されている。そこで, セルリー萎黄病防除対策として, 家庭用小型ボイラーを利用した簡易型熱散水殺菌装置による熱水土壌消毒法の有効性を検証した。その結果, 本法はセルリー萎黄病に対し高い防除効果を示すとともに, セルリー萎黄病菌密度は収穫時まで低く維持され, さらに, アスター萎凋病菌, カーネーション萎凋病菌, トルコギキョウ立枯病菌に対しても, 十分な殺菌効果が認められた。これらの作物は施設花き生産の基幹品目であることから, 今後の普及適応拡大に有望と判断される。
著者
小松 和彦
出版者
学士会
雑誌
学士会会報
巻号頁・発行日
vol.2015, no.6, pp.41-52, 2015-11
著者
小松 和彦
出版者
桧書店
雑誌
観世
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.50-55, 2005-03
著者
早川 聞多 鈴木 貞美 井上 章一 小松 和彦 鈴木 貞美 早川 聞多
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998 (Released:1998-04-01)

日本における生命観についての学際的、総合的研究の一環として、性愛についての学際的・通史的研究を課題として取り組み、関連図書約500点余を購入し、国際日本文化研究センター図書室に入れた。最終年度の研究代表者、早川聞多は、絵画、とりわけ徳川時代の浮世絵春画を対象とし、そこに書かれた言葉と描かれた絵との関連を分析する新たな手法による研究を重ねて、徳川時代の性愛、とりわけ男色などに関する風俗全般の表象の研究を飛躍的に発展させた。前二年度にわたる研究代表者、鈴木貞美は、とくに明治後半期から大正期の生命観と性愛観の変容の過程を、進化論受容や大正生命主義などの思想史、「自然主義」などの文芸思想の展開、および文芸上の性愛の表現を探る論考を重ねた。井上章一は、風俗史の観点から、近・現代において性愛の営まれる場所の諸相の解明を中心に、未開拓の分野に成果をまとめた。小松和彦は、近親相姦の伝承に関して取り組み、その端緒をひらいた。全体としては、性愛学(セクソロジー)の隆盛の中で、手薄であったり、未開拓であったりした領域を開拓したものの、「生命観から見た性愛観」という角度に絞ったまとめがなし切れなかった。「生命観」という研究対象がアモルフなものなので、研究過程にあっては、いたしかたないともいえるが、今後は「生命観」の研究それ自体の確定とアプローチの角度の分節化など、方法の明確化が必要であるとの結論に達した。鈴木貞美がこれを今後の課題として分担することを確認し、終了した。