著者
鈴木 真理子 大海 昌平
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.241-247, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
17
被引用文献数
2

イエネコFelis catusによる在来種の捕食は,日本においても特に島嶼部において深刻な問題である.鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する遺存固有種アマミノクロウサギPentalagus furnessiの養育行動を2017年1月から3月にかけて調査していたところ,繁殖穴で離乳間近の幼獣がイエネコに捕獲される動画を自動撮影カメラによって撮影したので報告する.繁殖穴における出産は2017年1月14日~15日の夜に行われたが,幼獣(35日齢)がイエネコに捕獲されたのは2月19日1時ごろで,この前日は繁殖穴を母獣が埋め戻さずに入り口が開いたままになった初めての日であった.この動画の撮影後,幼獣は巣穴に戻っていないことから,捕食あるいは受傷等の原因で死亡した可能性が高い.イエネコは幼獣の捕獲から約30分後,および1日後と4日後に巣穴の前に出現し,一方アマミノクロウサギの母獣は1日後に巣穴を訪問していた.幼獣の捕食は,本種の個体群動態に大きな影響を与えうる.本研究により,アマミノクロウサギに対するイエネコの脅威があらためて明らかとなった.山間部で野生化したイエネコによるアマミノクロウサギ個体群への負の影響を早急に取り除く必要がある.
著者
鈴木 真理子 大海 昌平
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.257-266, 2017 (Released:2018-02-01)
参考文献数
25

養育行動の記録は,親から子への投資や子の発達過程を知るための基礎情報であり,域外保全のためにも重要な情報である.アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)は鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する遺存固有種である.母獣は休息用の巣穴とは別の場所に繁殖用の巣穴を持ち,その中で幼獣を育てる.2015年秋に奄美大島の農地内に掘られた繁殖穴を発見し,2015年9月から2017年5月まで自動撮影カメラにより撮影を行ったところ,2016年4月から5月までと,2016年12月から2017年2月までの2回の繁殖が確認された.アマミノクロウサギの養育行動は,繁殖穴形成,産座づくり,出産,授乳からなっていた.繁殖穴形成から授乳の間,母獣の訪問時刻は午前2時から3時に集中していた.産仔数は1頭または2頭で,授乳は2日に1回の頻度で規則正しく行われた.幼獣は生後約10日齢まで繁殖穴の中で授乳され,約10日齢から繁殖穴の外に出て授乳されるようになり,30–34日齢で授乳後に巣穴の外を出歩くようになった.母獣の授乳のための訪問のうち,授乳時間は非常に短く,滞在時間の大半を繁殖穴の入口の開け閉めに費やしていた.この巣穴の開け閉めに要する時間は,幼獣の成長とともに短くなった.今回の観察により,アマミノクロウサギの養育行動は,他のアナウサギ類と同様に非常に短時間で行われており,さらに幼獣の成長に合わせて養育にかかるコストを減らしている可能性が示唆された.
著者
都築 章子 鈴木 真理子
出版者
京都大学高等教育研究開発推進センター
雑誌
京都大学高等教育研究 (ISSN:13414836)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.27-36, 2009-12-01

This paper examines the trends of science and technology communication (STC) activities implemented at higher education institutions (HEIs) in Japan, based on a framework comprising four kinds of STC activities: PR from research institutions, science journalism, two-way scientific dialogue between researchers and citizens, and science education. We reviewed the history of STC in the UK, the U.S., Europe, and Japan. After surveying ten STC activities, it was found that HEIs in Japan have developed a variety of STC models for the last few years. These have succeeded in enhancing citizens' access to science and technology and establishing closer ties between citizens and academic communities. The future challenge for HEIs is to expand and improve STC education, including the liberal arts education for undergraduates, in order to promote greater public engagement in science.
著者
椎 崇 井口 巴樹 黒田 明平 鈴木 真理香 島﨑 珠美 三巻 祥浩
出版者
一般社団法人 日本医薬品情報学会
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-30, 2023-05-30 (Released:2023-05-31)
参考文献数
10

Objective: Sennosides A and B, which are dianthrone glycosides contained in Rhubarb and Senna Leaf, exhibit laxative effect. Although a number of over-the-counter (OTC) drugs used as laxatives contain Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf, the total amounts of sennosides A and B are not mentioned in the package insert. To determine the total amounts of sennosides A and B in OTC drugs containing Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf, quantitative analyses of sennosides A and B were performed for 24 OTC drugs.Methods: Sennosides A and B were extracted from 24 OTC drugs and quantitatively analyzed by high-performance liquid chromatography. Statistical analyses were carried out by a one-way analysis of variance followed by Dunnett's test or Tukey's test.Results: The OTC drugs contained sennosides A and B in the range of 1.5-10 mg in the minimum daily dosage and in the range of 2.7-17 mg in the maximum daily dosage. In 11 of the OTC drugs (Products Nos. 1-5, 11, 12, and 15-18), the maximum daily dosage contained almost equal or higher amounts of sennosides A and B compared to that in a tablet of the prescription medicine Pursennid® 12 mg. Furthermore, the amounts of sennosides A and B in the maximum daily dosage were significantly higher in products Nos. 1 and 11 and lower in products Nos. 8-10, 14, and 20-24 compared to those of a tablet of Pursennid® 12 mg.Conclusion: Although some OTC drugs have the same Rhubarb content, the total amounts of sennosides A and B can vary. Thus,there is no correlation between the Rhubarb content and total amounts of sennosides A and B. This is because of the inconsistent quality of Rhubarb and/or the differences in the manufacturing methods of the OTC drugs containing Rhubarb. Because the total amounts of sennosides A and B cannot be estimated based on the Rhubarb content, a constipated patient should start taking an OTC drug containing Rhubarb at the minimum daily dosage. It is also recommended that the total amounts of sennosides A and B are mentioned in the package insert of OTC drugs containing Rhubarb or Rhubarb and Senna Leaf.
著者
菊池 友和 山口 智 鈴木 真理 荒木 信夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.480-483, 2016 (Released:2016-11-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

1ヶ月以上薬物療法を行い効果の得られなかった反復発作性緊張型頭痛(frequent episodic tension–type headache:FTTH)と慢性TTH(chronic TTH:CTTH)に分類し,鍼治療を行い,Visual Analogue Scale(VAS)による自覚症状の評価が50%以上改善したのを有効として,両群の治療回数・期間について検討した.対象は,TTH221例.FTTH82例(男28,女54,平均年齢52.7歳)とCTTH139例(男44,女95,平均年齢50.4歳)である.FTTHの有効率80.1%,CTTHの有効率59.9%であり,FTTH群の方が有意に高値であった(p<0.01).回数・期間はFTTH 2.8回14.9日,CTTH8.9回35.9日であり,FTTHの方が少ない回数で短期間に改善した(p<0.01).FTTHは,鍼治療を3回または2週間継続し,さらにCTTHは9回または5週間継続し効果判定する必要性が示された.
著者
山口 智 菊池 友和 小俣 浩 鈴木 真理 磯部 秀之
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.200-206, 2013-05-29 (Released:2013-10-18)
参考文献数
10

目的 : 片頭痛の発作予防に対する鍼治療効果を頭痛日数と頸肩部の筋群および咀嚼筋の圧痛や筋緊張を指標に分析し、その関連性について検討した。方法 : 対象は国際頭痛分類第II版の片頭痛の診断基準を満たした70例(男性22例、女性48例)平均年齢35.5歳±14.3歳(mean±S.D.)、また前兆のある片頭痛13例、前兆のない片頭痛57例である。  鍼治療を2ヶ月間行い、中等度以上の頭痛日数と頸肩部の筋群および咀嚼筋の圧痛や筋緊張を鍼治療前後で比較した。また頭痛日数の減少と圧痛および筋緊張の改善の関連性についても分析した。結果 : 鍼治療により、中等度以上の頭痛日数は減少し(p<0.05)圧痛や筋緊張も改善した(p<0.01)。また、頭痛日数の減少と頸部圧痛·肩部圧痛·咀嚼筋部圧痛の改善に正の相関が示され、頸部の関連が最も強かった。考察及び結語 : 鍼治療を一定期間継続することにより、頭痛日数が減少するとともに、頸肩部の筋群と咀嚼筋の圧痛や緊張が改善したことから、片頭痛に対する鍼治療効果はこうした筋群の圧痛を緩和することで頭痛日数が減少し、発作予防に寄与したものと考える。また、片頭痛の発作予防に対する鍼治療の作用機序は、上位頸神経や三叉神経を求心路とし、三叉神経脊髄路核を経て高位中枢に影響を及ぼし、発作予防に関与している可能性も考えられる。
著者
菊池 友和 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 鈴木 真理 田中 晃一 磯部 秀之 三村 俊英
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.51-58, 2011 (Released:2011-06-27)
参考文献数
19
被引用文献数
3

【はじめに】本邦でVDT作業者のQOLや作業能力を指標とした鍼治療に関する報告は極めて少ない。 そこで、 この前向き研究では鍼治療がVDT作業者のQOLと作業能力に及ぼす影響について検討した。 【方法】VDT作業者61例、 男性41例、 女性20例である。 鍼治療は1回/週、 個々の頸や肩の症状に応じて行った。 評価はSF-36とWAIを、 初診時と1ヵ月後の値を統計学的に検討した。 【結果】VDT作業者のSF-36は、 身体的健康度、 精神的健康度、 体の痛み、 日常役割機能 (身体) が上昇し、 活力も上昇する傾向が認められWAIも上昇した。 治療前のSF-36の各項目とWAI値、 さらに鍼治療後における体の痛みとWAI値の改善率に正の相関関係が認められた。 【結論】鍼治療によりVDT作業者の有する頸肩こりの症状が改善するとともに、 QOLと作業能力が向上した。 今後増加が予想されるVDT作業者のQOLや作業能力の向上に対し、 鍼治療の有用性が高いことが示唆された。
著者
鈴木 真理 山口 智 五十嵐 久佳 小俣 浩 菊池 友和 田中 晃一 磯部 秀之 大野 修嗣 三村 俊英 君嶋 眞理子
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.829-836, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

【はじめに】近年、 情報化の発達により、 VDT作業者は急増している。 VDT作業者における心身の疲労は以前から問題視されているが、 多くのVDT作業者が有する頸肩こりや眼疲労に対する鍼治療効果についての報告は数少ない。 そこでこの前向き研究では、 VDT作業者の愁訴に対する鍼治療効果について検討した。 【方法】対象はVDT作業者61例 (男性41例、 女性20例) である。 鍼治療は、 週1回、 計4回、 個々の頸や肩の症状に応じて、 円皮鍼を用いて行った。 評価は、 頸こり・肩こりと眼疲労を自己記入式で行った。 VAS値の経時的変化、 また鍼治療前と4週後のVAS値より改善率を算出し、 眼疲労と頸こり・肩こりの関連について検討した。 【結果】鍼治療により頸こり、 肩こり、 眼疲労のVASの値はともに、 初診時より徐々に減少を示した。 また、 眼疲労と頸こり・肩こりの改善率には正の相関が認められた。 【結論】VDT作業者の頸や肩のこりに対し鍼治療を行い、 頸肩こりが軽減するとともに、 眼疲労も改善することが示された。 鍼治療は産業医学の分野で有用性の高いことが示唆された。
著者
池田 威秀 足立 朋子 鈴木 真理子 秋山 豊子
出版者
慶應義塾大学日吉紀要刊行委員会
雑誌
慶應義塾大学日吉紀要. 自然科学 (ISSN:09117237)
巻号頁・発行日
no.57, pp.11-46, 2015

教育挿図資料近年, 当大学で発生した飲酒事故の重要性に鑑み, 飲酒事故を未然に防ぐことを目的に事業を展開した。生物学の分野から, 学生個々人のアルコールのパッチテスト, その後のアンケート調査, その解析, 意識調査, 自分の遺伝的体質の解析(アルコール分解酵素の遺伝子鑑定)や, 肝臓におけるアルコールの分解作(酵素反応)の理解を進める授業などを展開した。また, 授業用資料(PPT)やパンフレット作成を行なった。生物学を履修している学生には, これらを用いて授業を展開し, 飲酒事故防止のための理解を進める。生物学を履修していない学生には, これらの資料をウェブで公開して閲覧できるようにする。加えて, 将来的なアルコール中毒や肝機能障害のリスク回避, さらに最近多様化してきた他の薬物中毒に対しても, その危険性を広報していく。以上のことから, 全塾的・長期的に, 学生がアルコールと他の薬物への対応の仕方を習得し, 将来的に心身ともに健康維持できるよう, 教育支援を行なった。
著者
鈴木 真理子 鈴木 裕子 竹山 理恵 徳田 良英
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.37 Suppl. No.2 (第45回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H4P3257, 2010 (Released:2010-05-25)

【目的】四肢運動時において重心移動が生じるため,姿勢の調節が必要である.姿勢は,筋収縮によって発生する反作用を見越して運動調節する機構により,簡単には崩れにくいように働く.このため,予測的な姿勢調節が随意運動に先行して行われる必要がある(吉尾ら. 2007).これを先行姿勢調節機構(Anticipatory Postural Adjustments:以下APA)という.APAの先行研究では上肢外転肢位で,落下する重錘を掴む際,主動作筋に先行して対側の体幹筋が活動し,重錘を放す際,対側の体幹筋が抑制する事が明らかになっている(Alexander, et al. 2001).本研究は,上肢前方挙上時の体幹のAPAを計測し,姿勢調節におけるさまざまなstrategyを類型的に把握し検討することを目的とする.【対象・方法】対象者は健常成人24名(男性14名,女性10名:平均年齢21.8±0.6歳,身長166.6±8.2cm,体重54.5±7.8kg)とした.実験装置は,被検者が立位で肩関節を90度屈曲した肢位の手掌から40cm上方に風船を設置した.実験課題は開始肢位は両上肢を体側に下垂した開眼立位とし,風船を合図無しに落とし,被験者は肩関節屈曲運動を素早く行い,風船を把持する事とした.上記課題はフォースプレート(Kistler社製,サンプリング周波数1KHz)上で行い,課題前後の重心の軌跡を測定した.右三角筋前部線維,両側外腹斜筋,両側脊柱起立筋の筋活動を筋電計(DKH社製EMG計測システム,サンプリング周波数1KHz)にて同期して計測した.また,ビデオカメラによって矢状面の被験者の姿勢と姿勢保持のためのstrategyを観察した.解析方法は,安静立位の開始時点から三角筋の筋活動の賦活開始時点までの体幹筋の筋電図の波形からパターンに分類し,姿勢・動作との対応を探った.【説明と同意】ヘルシンキ宣言に則り,対象者に研究内容を説明し,同意を得た.【結果】全被験者で,APAの出現後から上肢挙上運動開始までの間に重心が後方に移動した.重心の後方移動距離(平均±標準偏差)は(1.1±0.5cm)で,各群間で有意差はなかった(p>.05).筋電図の波形から,A群(5名),B群(10名),C群(9名)に分類した.各群の概要は以下の通りであった.A群は,三角筋が活動する100-200msec前に外腹斜筋が抑制,50-100msec前に脊柱起立筋が活性化した群である.ビデオ解析の結果,A群は立位姿勢のalignmentが比較的良好で, 課題時の重心の後方移動は全てhip strategyによって行っていた.B群は,安静立位時に外腹斜筋の筋活動が著明に認められないものである.外腹斜筋にAPAがみられず,三角筋が活動する20-80msec前に脊柱起立筋が活性化した. ビデオ解析の結果,B群10名全員の立位姿勢alignmentは概ね不良で,過半数は頚椎前彎と胸椎後彎が強く,骨盤が後傾した姿勢であった. 課題時の重心の後方移動は8名がhip strategy, 2名がankle strategyによって行っていた.C群は,外腹斜筋,脊柱起立筋にAPAがみられないものである. ビデオ解析の結果, 課題時の重心の後方移動はC群9名中, 7名がankle strategy, 1名がhip strategy,残りの1名が knee strategy によって行っていた.【考察】全被験者において重心が後方に移動しているのは,上肢前方挙上の際に,上肢の重みにより重心が前方に移動することを予測し,姿勢を保持するために無意識的に行われている.重心移動時に,各群間で筋活動が異なるのは,姿勢とstrategyの影響によると考える.まず,A群とB群においては,同じhip strategyによって重心の後方移動を行っている. A群においては外腹斜筋に抑制のAPAが生じたが,B群においては生じなかった.A群は安静立位で腹筋群を使用した良姿勢をとっており,脊柱起立筋に拮抗して外腹斜筋は抑制されたが,B群の安静立位は腹筋群をあまり使用しない不良姿勢であったため外腹斜筋に抑制のAPAが出現しなかったと考える.次に,体幹筋にAPAが生じたA・B群と生じなかったC群を比較する. A・B群はhip strategy, C群の多くはankle strategyにて重心の後方移動を行っている.よって,APAをhip strategyにて行った場合は体幹筋が, ankle strategyにてAPAを行う場合は体幹ではなく,下肢の筋活動が三角筋に先行する可能性が示唆された.【理学療法研究の意義】姿勢調節に重要なAPA出現の仕方を姿勢・動作との対応から類型的に把握することを試みたもので,パイロットスタディーとして意義がある.
著者
栗田 健 明田 真樹 森 基 大石 隆幸 高森 草平 小野 元揮 木元 貴之 岩本 仁 日野原 晃 田仲 紗樹 吉岡 毅 鈴木 真理子 山﨑 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Cb1390, 2012

【目的】 先行研究で投球障害肘群は肩群に比べ手内筋の筋力低下を有していることが分かった。このことは手内筋が効率よく機能せずに、手外筋を有意に働かせてボールを把持することで、手・肘関節への影響が大きくなることが示唆された。しかし手内筋機能不全が投球動作の繰り返しで生じたものか、もともと機能不全が存在したことにより投球障害肘の原因となったのかは不明であった。そこで今回我々は手内筋機能不全が多く認められた投球障害肘群において、投球による影響がない非投球側の評価を行い、両側に機能不全を有する割合について調査したので以下に報告する。【方法】 対象は、投球障害肘の診断により当院リハビリテーション科に処方があった20例とした。対象は肘単独例のみとし、他関節障害の合併や既往、神経障害および手術歴を有する症例は除外した。性別は全例男性で、年齢は、平均16.4±5.1歳(11歳~34歳)であった。観察項目は、両側の1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)と2. 母指・小指対立筋の二項目とした。共通肢位として座位にて肩関節屈曲90°位をとり、投球時の肢位を想定し肘伸展位・手関節背屈位を保持して行った。1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)は、徒手筋力検査(以下MMT)で3を参考とし、可能であれば可、指が屈曲するなど不十分な場合を機能不全とした。2.母指・小指対立筋も同様に、MMTで3を参考とし、指腹同士が接すれば可、IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした。なお統計学的評価には、二項検定を用い、P値0.05未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし、当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化に配慮してデータを利用した。【結果】 投球障害肘の投球側虫様筋・骨間筋機能不全は、65.0%、に発生しており、そのうち健側にも認められたものが76.9%であった(統計学的有意差なし)。投球側母指・小指対立筋機能不全は、65.0%に発生しており、そのうち健側にも認められたものは53.8%であった(統計学的有意差なし)。一方、非投球側での機能障害をみると、両側に発生している比率が、虫様筋・骨間筋機能不全例では90.9%、母指・小指対立筋機能不全例では100%であった(統計学的有意差あり)。【考察】 我々は第46回日本理学療法学術大会において手内筋機能低下が投球障害肩より投球障害肘に多く認められることを報告している。しかし手内筋機能不全が伴って投球動作を反復したために投球障害肘が発生するのか、肘にストレスがかかる投球動作を反復したために手内筋機能不全が発生したのかは過去の報告では分からなかった。そこで今回投球していない非投球側の機能と比較することで投球による影響なのか、もともとの機能不全であるのかを検討した。今回の結果より、各観察項目での投球側・非投球側の両側に手内筋の機能不全を有する割合は多い傾向があったが、統計学的有意差はなかった。一方、非投球側に機能不全がみられた症例は、投球側の機能不全も有す症例が多く、統計的有意差もあることが分かった。このことより手内筋の機能不全は、投球の影響によって後発的に生じるのではなく、もともと機能不全を有したものが、投球動作を繰り返したことにより投球障害肘を発症している可能性が高いと考えられた。そのため投球障害肘の発生予防や障害を有した場合のリハビリテーションの中で虫様筋・骨間筋機能不全および母指・小指対立筋機能不全の評価と機能改善が重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 投球障害肘の身体機能の要因の中で手内筋である虫様筋・骨間筋や母指・小指対立筋に機能不全を有することが多いということが分かった。本研究から投球障害肘を治療する際には、評価として手内筋機能に着目することが重要と考える。また今回設定した評価方法は簡便であり、障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された。
著者
永田 智子 鈴木 真理子 稲垣 成哲 森広 浩一郎
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.Suppl., pp.161-164, 2008-02-10 (Released:2016-08-04)
参考文献数
4
被引用文献数
4

現職教師がデジタル・ティーチング・ポートフォリオを作成する活動とそのためのブログ環境を設定し,実践,評価した.実践では4名の現職教師が理科の授業についてブログに書き込みを行った.実践に参加した現職教師へ行ったインタビューから,本ブログ環境はおおむね使いやすいものであり,活動は授業の振り返りに役立つことがわかった.それに加えて,教師が実践や振り返りを継続するために,「日々のデータの蓄積」「蓄積されたデータの再利用」「他教師との比較による刺激」「実践継続の励み」「課題の提示」という機能が必要であり,ブログ環境や支援活動に組み込む必要があることがわかった.
著者
鈴木 真理子 大海 昌平
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.241-247, 2017

<p>イエネコ<i>Felis catus</i>による在来種の捕食は,日本においても特に島嶼部において深刻な問題である.鹿児島県奄美大島と徳之島にのみ生息する遺存固有種アマミノクロウサギ<i>Pentalagus furnessi</i>の養育行動を2017年1月から3月にかけて調査していたところ,繁殖穴で離乳間近の幼獣がイエネコに捕獲される動画を自動撮影カメラによって撮影したので報告する.繁殖穴における出産は2017年1月14日~15日の夜に行われたが,幼獣(35日齢)がイエネコに捕獲されたのは2月19日1時ごろで,この前日は繁殖穴を母獣が埋め戻さずに入り口が開いたままになった初めての日であった.この動画の撮影後,幼獣は巣穴に戻っていないことから,捕食あるいは受傷等の原因で死亡した可能性が高い.イエネコは幼獣の捕獲から約30分後,および1日後と4日後に巣穴の前に出現し,一方アマミノクロウサギの母獣は1日後に巣穴を訪問していた.幼獣の捕食は,本種の個体群動態に大きな影響を与えうる.本研究により,アマミノクロウサギに対するイエネコの脅威があらためて明らかとなった.山間部で野生化したイエネコによるアマミノクロウサギ個体群への負の影響を早急に取り除く必要がある.</p>
著者
栗田 健 小野 元揮 木元 貴之 岩本 仁 日野原 晃 田仲 紗樹 吉岡 毅 鈴木 真理子 山﨑 哲也 明田 真樹 森 基 大石 隆幸 高森 草平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb1390, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 先行研究で投球障害肘群は肩群に比べ手内筋の筋力低下を有していることが分かった。このことは手内筋が効率よく機能せずに、手外筋を有意に働かせてボールを把持することで、手・肘関節への影響が大きくなることが示唆された。しかし手内筋機能不全が投球動作の繰り返しで生じたものか、もともと機能不全が存在したことにより投球障害肘の原因となったのかは不明であった。そこで今回我々は手内筋機能不全が多く認められた投球障害肘群において、投球による影響がない非投球側の評価を行い、両側に機能不全を有する割合について調査したので以下に報告する。【方法】 対象は、投球障害肘の診断により当院リハビリテーション科に処方があった20例とした。対象は肘単独例のみとし、他関節障害の合併や既往、神経障害および手術歴を有する症例は除外した。性別は全例男性で、年齢は、平均16.4±5.1歳(11歳~34歳)であった。観察項目は、両側の1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)と2. 母指・小指対立筋の二項目とした。共通肢位として座位にて肩関節屈曲90°位をとり、投球時の肢位を想定し肘伸展位・手関節背屈位を保持して行った。1.手内筋プラス肢位(虫様筋・骨間筋)は、徒手筋力検査(以下MMT)で3を参考とし、可能であれば可、指が屈曲するなど不十分な場合を機能不全とした。2.母指・小指対立筋も同様に、MMTで3を参考とし、指腹同士が接すれば可、IP関節屈曲するなど代償動作の出現や指の側面での接触は機能不全とした。なお統計学的評価には、二項検定を用い、P値0.05未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者に対し本研究の目的を説明し同意の得られた方のデータを対象とし、当院倫理規定に基づき個人が特定されないよう匿名化に配慮してデータを利用した。【結果】 投球障害肘の投球側虫様筋・骨間筋機能不全は、65.0%、に発生しており、そのうち健側にも認められたものが76.9%であった(統計学的有意差なし)。投球側母指・小指対立筋機能不全は、65.0%に発生しており、そのうち健側にも認められたものは53.8%であった(統計学的有意差なし)。一方、非投球側での機能障害をみると、両側に発生している比率が、虫様筋・骨間筋機能不全例では90.9%、母指・小指対立筋機能不全例では100%であった(統計学的有意差あり)。【考察】 我々は第46回日本理学療法学術大会において手内筋機能低下が投球障害肩より投球障害肘に多く認められることを報告している。しかし手内筋機能不全が伴って投球動作を反復したために投球障害肘が発生するのか、肘にストレスがかかる投球動作を反復したために手内筋機能不全が発生したのかは過去の報告では分からなかった。そこで今回投球していない非投球側の機能と比較することで投球による影響なのか、もともとの機能不全であるのかを検討した。今回の結果より、各観察項目での投球側・非投球側の両側に手内筋の機能不全を有する割合は多い傾向があったが、統計学的有意差はなかった。一方、非投球側に機能不全がみられた症例は、投球側の機能不全も有す症例が多く、統計的有意差もあることが分かった。このことより手内筋の機能不全は、投球の影響によって後発的に生じるのではなく、もともと機能不全を有したものが、投球動作を繰り返したことにより投球障害肘を発症している可能性が高いと考えられた。そのため投球障害肘の発生予防や障害を有した場合のリハビリテーションの中で虫様筋・骨間筋機能不全および母指・小指対立筋機能不全の評価と機能改善が重要であると考えられた。【理学療法学研究としての意義】 投球障害肘の身体機能の要因の中で手内筋である虫様筋・骨間筋や母指・小指対立筋に機能不全を有することが多いということが分かった。本研究から投球障害肘を治療する際には、評価として手内筋機能に着目することが重要と考える。また今回設定した評価方法は簡便であり、障害予防の観点からも競技の指導者や本人により試みることで早期にリスクを発見できる可能性も示唆された。
著者
早川 祥子 Hernandez Alexander D. 鈴木 真理子 菅谷 和沙 香田 啓貴 長谷川 英男 遠藤 秀紀
出版者
Primate Society of Japan
雑誌
霊長類研究 = Primate research (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-10, 2011-06-20
参考文献数
21
被引用文献数
2

屋久島にて見つかったおよそ26歳という,非常に老齢であるニホンザル(メス)の死体の剖検結果を報告する。年齢の推定は死体の歯のエナメル質をヘマトキシリンで染色する方法によって行った。これは餌付けの経験のない野生ニホンザルとしては例外的に高齢であると考えてよい。外傷は見当たらず,病理解剖における主な病変は肺出血であり,対象個体が肺炎に罹患していたことが示唆された。さらに特筆すべきことは,このサルの体内から大量の寄生虫感染が見つかったことである。感染していたのは線虫4種,総数1524個体(<i>Streptopharagus pigmentatus</i> 1270, <i>Gongylonema pulchrum</i> 208, <i>Oesophagostomum aculeatum</i> 36, <i>Trichuris</i> sp. 10)であった。対象個体は老齢のため免疫力が低下しており,寄生虫の感染および蓄積を防ぐことができず,さらには肺炎にも感染して死を迎えたものと考えられる。
著者
大辻 一也 小泉 亜希子 小林 なつみ 鈴木 真理 古川 奈々 久須美 明子 小林 豊和
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.15-20, 2016-04-09 (Released:2016-06-01)
参考文献数
6

ボディコンディションスコア(BCS)は犬や猫の栄養診断法として、臨床ではよく使われる方法である。アメリカ動物病院協会は2010年にBCSを栄養診断のスクリーニングの一つとして取り入れた。日本動物病院協会もこれを受け入れた。さらに世界小動物獣医協会はBCSを栄養診断の世界標準にすることを決めた。このようにBCSはイヌやネコの栄養診断法としてオーソライズされたにもかかわらず、診断者によるばらつきは避けられない。そこで、われわれはBCS診断の精度を上げることを目的に、BCSモデル(モデル)を作成した。モデルは人工的に成型した模擬肋骨の上に、各種ゴム素材を積層しBCS1~5になるように調整し作成した。被毛の代替えとして起毛した布を使用した。実験にはBCSの異なる24頭のイヌを使用した。動物看護学を学ぶ学生にイヌを触診させ、モデルの有無によって、BCS 値のばらつきに違いが出るか否かを検討した。その結果、BCS3およびBCS4と診断されたイヌ群において、モデルを使用して診断した方が、モデル無しで診断した方に比較して、ばらつきは統計的に有意に減少した。BCS2は対象個体数が少なく統計処理が不可能であった。BCS1とBCS5の個体は被験犬の中に含まれなかった。今後、個体数を増やし検討する予定である。また、BCSはモデル有の方が無しに比較して、スコアが高く診断される傾向があった。この点に関しては、モデルの改良が必要と思われた。さらに、一般のイヌの飼い主に、モデルを用いて飼い犬のBCS測定をさせ、モデルの印象について調査した。その結果、モデルが飼い犬の栄養診断に役立ったかとの質問に対しては、約80%の飼い主が役立ったと回答した。さらに、モデルを使うことで、うまく診断できたかと言う質問に対して、約65%の飼い主がうまく診断できたと回答した。以上の結果、このモデルは改良が必要であるが、獣医療従事者のみならず、イヌやネコの飼い主の栄養診断にも有用であることが示唆された。