著者
石田 祐樹 畑 千嘉子 高倉 裕 垂水 彰二
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成21年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.1071, 2009 (Released:2009-08-28)

【目的】脂質を多く含む食品を加熱調理すると不快臭が一部生成し、調理品の風味劣化や品質低下をもたらす要因となる。特に不飽和脂肪酸の加熱分解により生成する一部の揮発性アルデヒドは不快臭の原因物質とされ、これらの不快臭の発生をいかに抑制できるかが重要である。調理に多用される酒類調味料に含まれる有機酸はアミンなどの揮発性塩基物質と結合して不揮発化することが知られているが、本研究では、脂肪酸に対する各有機酸の酸化抑制効果及び揮発性アルデヒド生成抑制効果を検証した。さらに、魚類や畜肉類などを加熱調理した際の酸化抑制及び揮発性アルデヒド生成抑制効果に及ぼす有機酸添加の影響について検討した。【方法】脂質の代表的な脂肪酸として、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸又はステアリン酸をモデル成分として選択した。有機酸は、酒類調味料に比較的多く含まれる、酢酸、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸について検証した。抗酸化はPOV法及びTBA法にて評価を行い、アルデヒドはGC-MSにて分析を行った。【結果】有機酸の中でも特にクエン酸のアルデヒド生成抑制効果が顕著であった。アルデヒド生成量はその脂質に含まれる不飽和脂肪酸量及びその種類に依存しており、魚類では鯖、秋刀魚、鰻の順に、畜肉類では鶏、豚、牛の順に脂質の過酸化が進行していた。これらの食材にクエン酸含有調味料を添加、混合することで、加熱調理時の酸化による揮発性アルデヒドの生成を抑制できることがわかった。
著者
小泉 亜希子 山中 寿城 岡本 匡史 平井 信行 黒瀬 直孝 小川 慶治 川北 貞夫 垂水 彰二 高橋 康次郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.125-131, 2003-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
5

清酒を光照射下で保存した場合に増加する成分について, 溶存酸素濃度がそれらの成分の変化に与える影響について検討し, 以下の結果を得た。(1) トリプトファン類縁化合物6成分が清酒の光照射により生成することを確認した。6成分は, 前報で報告したハルマンのほか, ノルハルマン, 1-エチル-β-カルボリン, 3-インドールカルボキシアルデヒド, 9H-カルバゾールおよび3-メチルー1H-インドールであり, これらは何れも苦味を呈する成分であった。(2) ハルマン, ノルハルマン, 3-インドールカルボキシアルデヒドの3成分は, 溶存酸素低減により増加が抑制され, 9H-カルバゾール, 3-メチルー1H-インドールのの2成分は溶存酸素低減により増加が促進された。1-エチルーβ-カルボリンについては, 溶存酸素低減による影響は明らかでなかった。(3) 16%エタノール含有のマックルベイン緩衝液へのトリプトファン添加試験の結果, 上記6成分が光照射下の保存で生成したことから, これらはトリプトファンから生成することを確認した。また, トリプトファンを添加した清酒の保存試験の結果, トリプトファン濃度の増加により6成分全ての生成量が増加した。(4) 上述の6成分以外にもトリプトファン類縁化合物とGC/MSライブラリー検索の一致率が72%以上である4成分が清酒の光照射により増加することが認められた。
著者
横山 定治 垂水 彰二 小関 佐貴代 菊地 恵美 山田 幸子 早川 潔 八田 一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.174-181, 2002-03-15
被引用文献数
1 3

鰹節のアルコール水抽出物を食塩10%,エタノール5%条件下,醤油麹で分解することで調味料を生産し,官能検査により調味効果を検討すると共に,抗高血圧作用に関与すると言われているアンジオテンシンI変換酵素阻害(ACEI)活性,およびγ-アミノ酪酸(GABA)含量を測定した. <BR>(1) 30℃, 3ケ月の分解熟成後の値はTN 1.53%, FN0.73%, pH 5.32であった.分解途中での酵母,乳酸菌を含め微生物の増殖は見られず,醤油臭が少なく,鰹節風味の豊富な調味料が得られた. <BR>(2) 得られた調味料の食塩濃度は11.8%で,濃口醤油より低い.平均ペプチド鎖長4.7は,醤油の3.5に比較して長鎖であった.HPLC-GPCの結果から,本調味料は醤油と比較して分子量1000-3000程度のペプチドを多く含むことが認められた. <BR>(3) 得られた調味液のACEI活性は10倍希釈液で77.6%であり,IC50は1.52mg protein/mlであった.また本調味料はGABAを35.1mg/100ml含有しており,これは135.0mg/100g solidに相当した.これらの結果から,この調味料が抗高血圧作用等の生体調節機能を示す可能性が考えられた. <BR>(4) 調味料としての有用性を確認する為に,汁物,煮物,酢の物などの調理における調味効果を2点評価法により醤油との比較に於いて官能評価した.塩分を同程度に調製したにも関わらず,清汁,天つゆ,煮物の調理において本調味料は醤油の場合よりも塩辛さが有意(p<0.1)に低く感じられ,酢のものでは酸味が有意に(p<5)抑えられまろやかな味に仕上がった.