著者
長野 友彦 友田 秀紀 小泉 幸毅 森山 雅志 山本 大誠 赤津 嘉樹 德永 武男 梅津 祐一
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11287, (Released:2017-12-14)
参考文献数
39

【目的】本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟における脳卒中患者の歩行自立再獲得日数への障害の重症度と低栄養の影響を検証することであった。【方法】対象は病棟内歩行が自立した65 歳以上の脳卒中患者116 名とした。分析は歩行自立再獲得日数に関連する潜在変数を障害の重症度と低栄養に分類してそれらに関連する観測変数から仮説モデルを作成し,共分散構造分析で検証した。【結果】年齢を層別化すると,前期高齢者群ではおもに障害の重症度が歩行自立再獲得日数に関連しており,低栄養の関連性は認められなかった。後期高齢者群では障害の重症度と低栄養が歩行自立再獲得日数に関連し,低栄養には嚥下障害が関連していた。【結論】回復期リハビリテーション病棟の脳卒中患者では,障害の重症度と低栄養のそれぞれが歩行自立再獲得日数に影響することが明らかになった。さらに,嚥下障害を伴う後期高齢者群では栄養管理の重要性が示唆された。
著者
立丸 允啓 大峯 三郎 馬場 健太郎 福井 貴暁 緒方 宏武 和田 菜摘 長野 友彦 小泉 幸毅
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.33-41, 2023-04-20 (Released:2023-04-20)
参考文献数
27

【目的】本研究の目的は,脳卒中患者における歩行自立判定指標として杖把持片脚立位時間が妥当性を認めるか検証することであった。【方法】脳卒中患者103名を解析対象とし相関分析,退院時病棟内歩行能力での2群間比較,多重ロジスティック回帰分析を行った。【結果】杖把持麻痺側・非麻痺側片脚立位時間ともに相関係数はBerg Balance Scaleが最高値で,歩行自立群と見守り群との比較でも有意差が認められた。多重ロジスティック回帰分析では,杖把持麻痺側片脚立位時間と認知関連行動アセスメント(Cognitive-related Behavioral Assessment:以下,CBA)が選択された。【結論】脳卒中患者の歩行自立判定指標として,杖把持麻痺側・非麻痺側片脚立位時間ともに妥当な評価方法であることが確認された。また,杖把持麻痺側片脚立位時間とCBAとの組み合わせが高精度な歩行自立判定指標になることが示唆された。
著者
小川 彰 伊藤 陽子 森原 寛子 金棒 優美 黒川 賢三 國廣 和恵 橋本 展幸 小泉 幸毅 宮岡 秀子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.E0981-E0981, 2004

【目的】回復期病棟に入院する患者は発症から間もない方が多い。そのため身体機能面の問題に加え、心理的問題も抱えていると推測される。そこで今回、回復期病棟における入院患者の心理状況を把握する目的で調査・分析した。<BR>【対象】H15年11月19日時点の当院回復期病棟入院患者40名(当該病棟料非算定者、失語症により有効回答不能、HDS-R20点以下、アンケート実施による心理面への影響が予測される者は除外)を対象者とした。40名(男21名、女19名)の平均年齢は64.9歳、主疾患は脳血管疾患29名、整形疾患9名、その他2名であり、発症から調査日までの期間は平均97.2日、Barthel Index(以下B.I)は平均81.1点、日常生活自立度はJランク10名、A19名、B11名であった。<BR>【方法】1.精神心理面を把握する指標として、意欲低下の程度はSDS(自己評価式抑うつ尺度)、生活の質はQUIK(自己記入式QOL質問表)でアンケート調査した。SDSは20の質問(満点80点)からなり、点数が高い程うつ状態は重い。QUIKは50項目(満点50点)からなり、点数が高い程生活の質が低く、その程度は「きわめて良好」から「きわめて不良」までの6段階に分類され、更に身体関係、情緒適応、対人関係、生活目標の4尺度に分類されている。なお、身体関係尺度のみ20点満点のため10点満点に換算した。2.SDSを基にうつの有無で年齢、発症からの期間、疾患、麻痺別、B.I、日常生活自立度等からなる基本情報とQUIKを比較、分析した。3.うつの程度を正常、軽度うつ、中程度うつの3段階で比較、分析した。【結果】1.SDS平均42.9点、正常13名(32.5%)、軽度うつ16名(40%)、中程度うつ11名(27.5%)であった。QUIK平均17.1点、6段階のうちきわめて良好0名、良好2名(5%)、普通8名(20%)、いくぶん不良11名(27.5%)、不良16名(40%)、きわめて不良3名(7.5%)であった。項目別の平均は身体関係尺度3.4点、情緒適応尺度3.5点、対人関係尺度2.7点、生活目標尺度4.1点であった。2.SDSを基にうつの有無で比較すると平均年齢は無68.8歳・有63歳、発症からの期間は無89.7日・有100.8日、QUIKは無10.4点・有20.3点であった。片麻痺ではうつ無9名中右片麻痺4名(44.4%)、うつ有22名中右片麻痺14名(63.6%)であった。3.うつの程度で比較するとB.Iは正常85.4点、軽度うつ84.4点、中程度うつ71.4点。QUIKは正常10.4点、軽度うつ16.8点、中程度うつ25.5点であった。<BR>【考察】40名の7割弱がうつ状態にあり、また7割強が生活の質を不良と感じていることが確認された。QUIKの4尺度では大差無く、多種多様の悩みを抱えていることが分かった。うつ状態は年齢が比較的若く、発症から3ヶ月以上、右片麻痺の者、また能力が低い者ほどうつの程度が重く、生活の質も低い傾向にあった。またうつ状態でない者でも、生活の質は低い傾向にあった。以上より回復期病棟では、身体機能面への治療のみならず、誰もが心理的不安を抱えているという視点での関わりが必要である。
著者
阿比留 友樹 藤原 和志 則竹 賢人 浅原 亮太 新野尾 嘉孝 友田 秀紀 小泉 幸毅 森山 雅志 梅津 祐一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48102062, 2013 (Released:2013-06-20)

【目的】アメリカスポーツ医学会は、健常者の体力改善には高度の運動強度で20~25分以上、週3回以上の実施を推奨している。また少なくとも10分以上の運動を断続的に実施し、1日の合計運動が推奨時間に達するものは同様の効果があるとしている。そこで今回、少量・頻回のトレーニングによる全身持久力への効果を検証することを目的とした。【方法】対象は、健常成人男性10名(年齢23.3±0.9歳、BMI22.5±3.2kg/m²)とし、日本光電社製自転車エルゴメータを用い直線的漸増負荷試験を行った。負荷方法は、3分間の安静後、回転数は50~60rpmとし、20wattで3分間のウォームアップ後、20watt/分で漸増負荷を実施した。中止基準は予測最大心拍数(以下予測HRmax)に達するか、自覚的に運動継続が困難となるまでとした。運動負荷試験はアニマ社製AT-1100を用いbreath by breath方式で酸素摂取量(以下V(dot)O2)、最高酸素摂取量(以下peak V(dot)O2)、無酸素性作業閾値(以下AT)、分時換気量(以下VE)、心拍数(以下HR)等を算出した。またBorg Scaleにより1分毎の自覚症状を測定した。運動負荷試験終了後、アークレイ社製ラクテート・プロ2を用い乳酸値を測定した。筋力は、アニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターを用い膝伸展筋力を測定した。トレーニングは、自転車エルゴメータ駆動を1日に10分間を3セット、週3回、1ヶ月間実施し、運動強度は運動負荷試験より酸素摂取予備能の80%とした。トレーニング終了後、同様の運動負荷試験、筋力測定を行った。またV(dot)O2-HR関係式と予測HRmaxから予測最大酸素摂取量(以下予測V(dot)O2max)を算出した。さらに漸増負荷中の仕事率に対する相対HRの増加率を回帰直線で示し、相対HR/仕事率係数を算出した。解析方法として、Wilcoxon符号順位検定を用いトレーニング前後で比較、分析し、有意水準は5%未満とした。【説明と同意】 本研究の各被験者には、ヘルシンキ宣言に基づき研究内容の趣旨を説明し本人の承諾および署名を得た。【結果】トレーニング前後の予測V(dot)O2maxは前34.5±6.8、後36.3±5.4ml/min/kgで、有意差は認めなかったが、向上傾向にあった。また、peak V(dot)O2の時間(前483±88.8、後539.5±94.6sec)、ATの時間(前328±152.8、後423.8±134.4sec)、症候限界時間(前548.4±109.1、後681.6±160.1sec)に有意差を認めた(P<0.05)。相対HR/仕事率係数(前0.6326±0.0927、後0.5994±0.1184)は、有意差は認めなかったが、傾きが緩やかになる傾向にあった。膝伸展筋力、peak V(dot)O2、AT時のV(dot)O2、VEに有意差は認めなかった。また、全対象者で乳酸値データから最大努力を示していたことが確認された。【考察】 一般的にV(dot)O2maxに影響する要因は肺の換気機能、肺拡散機能、心臓の循環機能、末梢組織での代謝機能であり、今回の結果では予測V(dot)O2max やpeak V(dot)O2時のVE、AT時のVEに有意差を認めず、肺機能の改善には至らなかったが、予測V(dot)O2maxが向上傾向にあり、少なからず全身持久力は向上したと考えられる。また、相対HR/仕事率係数は緩やかになる傾向にあり、漸増負荷中の同一仕事量におけるHRは減少したことが示唆された。一方、Clausenらは「全身持久力トレーニングは、筋血管拡張機能の向上や毛細血管網の発達により活動筋最高血流を高める」と報告しており、本研究でもATや症候限界時間の延長から、末梢の活動筋血流量が向上し、代謝機能が改善したと推測される。以上より、今回の少量・頻回のトレーニングは、全身持久力の改善に一定の効果があり、特に末梢組織での代謝機能改善に寄与すると思われた。【理学療法学研究としての意義】少量・頻回のトレーニングは末梢組織での代謝機能改善に有効であることが示唆された。したがって、長時間の運動継続が困難なものや持久力向上を目的としたアプローチを実施する際の一手段として有用であると思われる。