著者
小泉 美緒 奥村 将之 玉木 彰
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0770, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】呼吸リハビリテーションにおける下肢の筋力トレーニングのエビデンスレベルは最も高いGrade Aに位置づけられている。しかし,呼吸器疾患患者では呼吸困難感などにより筋力トレーニングに必要な高強度負荷をかけられないという問題がある。そこで近年,骨格筋電気刺激(以下,EMS)が注目されている。これまでにEMSの生理学的効果に着目した先行研究は散見されるが,その効果が現れる実施頻度に関する報告は少ない。そこで本研究では,EMSの異なる実施頻度が下肢の筋厚,筋力,運動耐容能に与える効果を検証し,その効果の差を比較検証することを目的とした。【方法】対象は健常成人男女25名(男性9名・女性16名,年齢:20.3±1.2歳,身長:164.5±7.5cm,体重:56.6±8.2kg)とし,EMS非実施群(Control群)と,EMS実施群を週3日実施群(週3群),週5日実施群(週5群)に無作為に分類した。EMS実施群はベルト電極式骨格筋電気刺激装置を用い,非監視下にて1日1回20分の電気刺激を6週間継続して実施した。強度は対象者の耐えうる最大強度とし,毎回指定の用紙に強度を記入してもらうよう指示した。尚,全ての対象者は6週間のうち最初と最後の1週間の活動量をモニタリングし,日常生活における活動量を統一した。EMS介入前には,超音波診断装置を用い大腿部と下腿部筋厚,等尺性膝関節伸展筋力(膝伸展筋力)及び筋疲労率,体組成などを測定し,さらに運動耐容能として心肺運動負荷試験(CPX)を実施し,6週間後も同様の評価を行った。また,CPXと膝伸展筋力の測定日は別日とした。統計処理は各群のEMS実施前後における各測定値の差を対応のあるt検定で,3群間における各測定値の変化量の差を一元配置分散分析および多重比較にて分析した。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力の関係をPearsonの相関係数を用いて分析した。有意水準は5%とした。【結果】EMS実施後の大腿部,下腿部筋厚は実施前より週3群,週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。また,各群における筋厚の変化量はControl群と比較して週3群,週5群で有意に高値を示し(p<0.05),週3群と週5群間には有意差が認められなかった。EMS実施後の膝伸展筋力は週3群と週5群で有意に高値を示し(p<0.05),膝伸展筋力の変化量はControl群と比較して週3群と週5群で有意に高値を示した(p<0.05)。EMS実施後のpeak Wattと右脚筋肉量は週5群のみ有意に高値を示した(p<0.05)。さらに,大腿部筋厚と膝伸展筋力との間には有意な相関関係が認められた。【結論】6週間のEMSの実施により週3群では筋厚,膝伸展筋力に有意な増加が認められ,その変化量は週5群と比較しても統計学的に有意な差は認めなかった。このことから,EMSは週3日という実施頻度でも十分に下肢の筋力トレーニングとしての効果が得られることが示唆された。
著者
小泉 美緒 玉木 彰 永田 一真 名和 厳 富井 啓介
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.262-265, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
14

症例は73歳男性,特発性肺線維症に気胸を合併していた.公営住宅3階に独居で,ポータブルタイプの酸素濃縮器を使用し,同調式 3 L吸入下で歩行と階段昇降を行っていた.理学療法開始時には下肢筋力低下および運動耐容能の低下を認め,同調式吸入下での階段昇段時に低酸素血症と著しい呼吸困難,呼吸数増加を認めていた.3週間の介入によって下肢筋力,運動耐容能は改善したものの,同調式吸入下では階段昇降時の呼吸困難,低酸素血症は改善しなかったため,同調式から連続式に切り換え可能な呼吸同調器付きの酸素ボンベへ変更した.その結果,連続式吸入下で20段の階段昇段と1回の立位休憩で目標であった階段昇段40段を獲得し,本症例は自宅退院に至った.本症例のような階段昇段時に低酸素血症,呼吸困難,呼吸数増加を呈する患者に対しては,一時的に連続式を使用する指導の検討が必要と考えられた.