著者
太田 淳子 小澤 浩之 愼 宏太郎
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.170-174, 2008-11-30 (Released:2012-08-20)
参考文献数
7

患者は初診時年齢24歳6か月の女性.左側第一小臼歯から第二大臼歯まで連続する片側性鋏状咬合と著しい叢生を伴うAngle II級1類症例であった.治療としては, 上顎の歯列弓幅径の縮小と下顎歯列弓幅径の拡大により左側の鋏状咬合の改善を行った.その際, 上顎は歯列弓縮小用のポーター型装置, 可撤式スライディングプレートおよびアーム付きリンガルアーチを順に使用し, 下顎はポーター型拡大装置を使用した.これらの装置は, 片側性鋏状咬合であることを考慮し左右で異なるforce systemになるようデザインに工夫を施した.左側大臼歯の咬合が回復した後はパラタルアーチ, cross elasticsおよびヘッドギアを使用し, 左側の咬合の維持と安定に努めた.また, 上顎両側第一小臼歯および下顎左側第二小臼歯を抜去し治療した.その結果, 機能的な咬合の安定と個性正常咬合を得ることができた.
著者
平出 隆俊 小澤 浩之 斉藤 茂 柴田 恭典
出版者
昭和大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

平成5年度は、平成4年度にまとめた『歯の健康に関するアンケート』から得られた、1.咬合ならびに顎機能異常の出現状況の精度を検討するため毎年実施している矯正専門医による歯科検診の『咬合異常の頻度』との比較検討を行った.その結果、高校3年次男子においては歯科検診:22%、アンケートによる自己申告性:26.5%とほぼ同程度の割合であった.従って、本アンケート調査結果は信頼性の高いものと判断できた.このことから次に2.スポーツ活動時に生じた歯・顎・顔面部外傷による咬合・顎機能異常の出現との関連を調査した.その結果、スポーツ外傷は男子:13.8%、女子:0%であった.男子のスポーツ外傷のうち外傷が原因となりその後、咬合・顎機能に異常を訴えたものは男子:41.7%であった.以上のことから活発な顎・顔面部の成長発育期における学童のスポーツ活動に対しては、安全性に対する歯科医学的に検討されるべき点が示唆される.1、2の調査結果をもとにスポーツ活動時における顎機能を調査するため、平成5年度は中学1年生から高等3年生までの6学年に『咬合圧シート』を配布し回収した.現在本資料を解析中である.このことによりスポーツ活動を積極的に行っているものとそうでないものの差異、ならびに各種スポーツ活動に特有に見られる顎機能を調査中である.
著者
小澤 浩之
出版者
昭和大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1996

【目的】強制的歯牙移動時の疼痛により、プロトオンコジンのひとつであるFos陽性細胞が脳に発現することが中枢神経における可塑性、持続性疼痛と関連が深い現象として注目されているが、そのメカニズム解明の第一歩として今回は動物実験におけるFos陽性細胞出現の推移と、アンケート調査により実施した矯正治療中の患者の傷み感覚の推移について比較検討することとした。【動物実験の方法】Urethane,α-chloralose麻酔下で、Wistar ratをindomethacin投与群、非投与群に分けそれぞれ200gで上顎切歯を離開する矯正刺激を加えた。各群とも刺激直後、2時間後、12時間後に4%paraformaldehyde溶液で灌流固定し脳幹部の凍結切片作成後、抗c-foc抗体を用いたABCによりSP5CにおけるFOS陽性細胞を免疫組織学的に検索した。また、矯正刺激を24時間経験させたラットに1週間後同様の手順で刺激し経時変化を調べた(矯正刺激経験群)。【結果および考察】動物実験における経時変化では、2時間後をピークとして陽性細胞が認められた。indomethacin投与群においては反応が見らなかった。一方患者の痛み反応としては、2時間後より痛み反応が出現し、48時間をピークとして減少した。また矯正治療直後にロキソニン(三共)60mgを経口投与した場合、痛み減少傾向を示した。したがって、Fos陽性細胞の出現は、実際の痛み感覚よりもかなり早く出現し、そそ消失後も実際の痛みは長く継続する性質があり、それにプロスタグランディンが関与していることが示唆された。また、痛み刺激経験群においては、動物実験においてはFos発現細胞数が減少し、患者においては痛み反応が低下した。したがって、間欠的に繰り返される痛み刺激に対して、受容系が寛容状態になることが示唆された。