著者
小片 守 折原 義行 吾郷 一利 吾郷 美保子 オガタ マモル オリハラ ヨシユキ アゴウ カズトシ アゴウ ミホコ OGATA Mamoru ORIHARA Yoshiyuki AGO Kazutoshi AGO Mihoko
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.3-6, 2003-02-28

自殺を予防する方策を探るための第一歩として,鹿児島県島嶼地区における最近3年間(1999-2001年)の自殺例について検討したところ,総数は165人,年間平均自殺率(人口10万対)は29.0であった.男性自殺率は46.5で,女性の値13.0に比して有意に高値を示した.10年前(1989-1991年)と比較すると,男性60歳代に有意の増加を認めた.自殺の背景を10年前と比較すると,男性では厭世,経済的理由の割合が有意に増加していたが,女性では差を認めなかった.昨今の景気低迷が島嶼地区においても特に60歳代男性に大きく影響していることがうかがえる.自殺者の世帯人数の比率を島嶼地区全体と比較すると,自殺者では独居,2人暮らしの比率がともに有意に高値を示した.したがって,夫婦や家族相互の心の交流が自殺者減少のための重要な要素と思われる.また,自殺企図経験者の割合が男性では12%,女性では21%を占めていたことから,特に自殺未遂経験者を対象とした心理学的ケアなどの社会的対策によって自殺者数を減少できるのではないかと考える. Cases of suicide in the islands of Kagoshima Prefecture for the last three years (1999-2001) were investigated. The total number was 165. Average annual suicide rate (per 100,000 population) was estimated to be 29.0. Suicide rate in the male (46.5) was larger than that in the female (13.0; p<0.0001). Suicide rate in the male in sixties was larger than that in 1989-1991 (p=0.0002). As a background of suicide, pessimistic and economical reasons of male suicides were increased (p<0.0001). Recent business depression might have lead to increase male suicidal number. Single or two-person households and past suicide attempt were considered to be risk factors for suicide. Protective activities by government, society and family should be developed for reducing suicidal number.SECTION ONE: HUMAN ACTIVITY: Report 1
著者
小片 守 林 敬人
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

小児・高齢者に対する身体的虐待に基づく多発外傷によって好中球が各臓器内に浸潤することを,好中球マーカーmyeloperoxidase,接着因子P-selectin,遊走因子interleukin-8等を指標とした免疫組織化学によって証明し,身体的虐待の法医学的証明法として有用であることを明らかにした。さらに,好中球が産生する組織障害因子がすでに発現しており,被虐待者は多臓器不全の前段階ともいうべき状態にある可能性が示唆された。
著者
小片 守 林 敬人
出版者
鹿児島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

各種虐待の法医病理学的証明法の開発を目的として, まず高齢者虐待例の胸腺・副腎重量を対照例と比較したところ, 重量に有意差を認めなかった。しかしながら, 虐待期間が3ヶ月未満の虐待例の副腎重量は対照例に比して有意に増加していた。次に, 各種臓器に浸潤する白血球数を検討したところ, 特に肺・肝臓において虐待例で有意に増加しており, 高齢者に対する身体的虐待の法医病理学的証明法として有用である可能性が示唆された。
著者
小片 守
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. PRMU, パターン認識・メディア理解 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.524, pp.27-32, 2001-12-13

個人識別とは, 身許不明の遺体や白骨が誰であるか, 現場に残された血痕などの斑痕や指紋などの皮膚紋理が誰に由来するものであるかを識別することであり, その対象によって様々な方法が用いられる。白骨の場合は, その性別, 年齢, 身長を推定して捜査範囲を絞り, 該当すると思われる人物を見つけて, スーパーインポーズ法, 復顔法等の形態学的検査並びに血液型, DNA多型等の遺伝学的検査を行って個人が同定されていく。今回は, 実際の白骨・歯牙鑑定例などをもとに, 法医学で行われる個人識別法の実際について御紹介する。