著者
"桑原 季雄"
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.90-96,

与論島では昭和54年をピークに観光客が減少していくなかで、様々なイベントを企画することによって、シーズンオフ期の冬場の観光客の開拓と誘致を積極的にはかってきた。従来の若者中心のビーチ観光やマスツーリズムから、ブーム後は様々なイベントの企画によって幅広い年齢層、多様な観光客の誘致を目指して大きく方向転換した。また、ブーム期は兼業農家が激増したが、ブーム後は兼業農家が減少し専業農家が増え、脱観光産業化と農業重視の方向性が顕著である。特に、切り花や輸送野菜への多角化と畜産の比重が増大した。観光も、受動的観光から能動的観光へ、量から質の観光へ、自然依存型から自然利用型観光へ、娯楽型から健康・癒しの観光へ、農業と観光の分離から連携へ、個人から島民全体の観光へ、夏型から通年型観光へとシフトし、「健康・癒し」を軸にセルフイメージの構築と差別化の過程にある。"Tourism in Yoron had its peak in 1979 and after that the number of tourists decreased markedly. After the boom, Yoron islanders have ever been trying to bring tourists back again by creating various kinds of events and attractions not only in summer but also in off-seasons. During the boom, farmers were more depending on tourist industries. A fter the boom, they are more depending on agriculture and stock breeding. Tourism in Yoron also sifted from passive to active, from quantitative to qualitative, from amusement to health oriented, and from summer to all year round type tourism. Yoron island seems to be still in the process of constructing self-image to differentiate her from other touristic sites by focusing on 'health and healing'."
著者
レーマン ハフィーズ ウル
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
no.56, pp.57-60,

ミクロネシア連邦は西太平洋のカロリン諸島とも呼ばれる島々からなる地域で、地理的には、西から東へヤップ、チューク、ポンペイおよびコスラエの四つの州にわかれており、後者の三つの島は火山性の島々である。先行研究では、カロリン諸島の火山島は太平洋プレートが未知のホットスポット上を通過し、西から東へ火山島の年齢が若くなるとされる。しかし、先に述べた三つの島での火山活動の時期は重なっており、チューク環礁の島々とポンペイ島には同年代の火山岩が存在する。また、コスラエ島にもポンペイ島と同年代の火山岩があり、それらの火山島は(数百キロもお互いに離れている島々)、ホットスポット上にプレートが通過した時に形成されたとは考えにくい。本研究の目的はミクロネシア連邦の火山島の地質調査を含む、岩石試料の岩石学、地球科学および年代学的な研究を行い、火山島の成因を明らかにする。
著者
北村 有迅 小濱 賢 村里 晃 長谷川 亮太 笠原 慎平 眞邉 健人 川端 訓代 キタムラ ユウジン コハマ ケン ムラサト コウ ハセガワ リョウタ カサハラ シンペイ マナベ ケント カワバタ クニヨ KITAMURA Yujin KOHAMA Ken MURASATO Kou HASEGAWA Ryota KASAHARA Shimpei MANABE Kento KAWABATA Kuniyo
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.3-6, 2015-03-31

四万十帯は付加体形成や地震発生の地質的痕跡を多く包含することから、海洋プレートの沈み込みに伴うプレート境界の諸現象を理解する鍵となる。プレート境界の動的現象を念頭に置いた付加体研究は南海トラフ沿岸で行われているが、琉球海溝沿いではまだ行われていない。本研究では種子島において、地質調査と化学組成分析からの岩石の変形を定量し、この地域の負荷体形成史を議論することを目的とする。調査の結果、比較的高温にさらされたと思われる種子島の頁岩には圧力溶解が発達しており、沈み込みによる埋没でなく、深成岩体の上昇による熱的影響を強く受けていることが示唆された。
著者
小片 守 折原 義行 吾郷 一利 吾郷 美保子 オガタ マモル オリハラ ヨシユキ アゴウ カズトシ アゴウ ミホコ OGATA Mamoru ORIHARA Yoshiyuki AGO Kazutoshi AGO Mihoko
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.3-6, 2003-02-28

自殺を予防する方策を探るための第一歩として,鹿児島県島嶼地区における最近3年間(1999-2001年)の自殺例について検討したところ,総数は165人,年間平均自殺率(人口10万対)は29.0であった.男性自殺率は46.5で,女性の値13.0に比して有意に高値を示した.10年前(1989-1991年)と比較すると,男性60歳代に有意の増加を認めた.自殺の背景を10年前と比較すると,男性では厭世,経済的理由の割合が有意に増加していたが,女性では差を認めなかった.昨今の景気低迷が島嶼地区においても特に60歳代男性に大きく影響していることがうかがえる.自殺者の世帯人数の比率を島嶼地区全体と比較すると,自殺者では独居,2人暮らしの比率がともに有意に高値を示した.したがって,夫婦や家族相互の心の交流が自殺者減少のための重要な要素と思われる.また,自殺企図経験者の割合が男性では12%,女性では21%を占めていたことから,特に自殺未遂経験者を対象とした心理学的ケアなどの社会的対策によって自殺者数を減少できるのではないかと考える. Cases of suicide in the islands of Kagoshima Prefecture for the last three years (1999-2001) were investigated. The total number was 165. Average annual suicide rate (per 100,000 population) was estimated to be 29.0. Suicide rate in the male (46.5) was larger than that in the female (13.0; p<0.0001). Suicide rate in the male in sixties was larger than that in 1989-1991 (p=0.0002). As a background of suicide, pessimistic and economical reasons of male suicides were increased (p<0.0001). Recent business depression might have lead to increase male suicidal number. Single or two-person households and past suicide attempt were considered to be risk factors for suicide. Protective activities by government, society and family should be developed for reducing suicidal number.SECTION ONE: HUMAN ACTIVITY: Report 1
著者
長嶋 俊介 ナガシマ シュンスケ NAGASHIMA Shunsuke
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.80-82, 2011-03-31

この島は火山災害の島であり、硫黄鉱山の島であり、急激な過疎化の島である。その社会がどう動いたのか。既存外部データ・地図で補いつつ、現場確認などを行った。そして、それら作業の延長で、ある種理想的な、現場資料保存・開示の事例に接した。小中学繋ぎ廊下資料館(以下「資料館」)の所在である。考古学資料・生活生産道具・動物剥製・文献展示保持である。口永良部事例は、資料館を持てない小型島嶼での島研究力・郷土教育力確保の、重要参考事例となる。The Kuchino-erabujima Island has an active volcano, which has causeddevastation to the island throughout its history, and it also has a sulphur mine. Theisland has been suffering from rapid depopulation- an added problem to its smallpopulation. How has this society changed? Unfortunately there is little record offormal island history; its main record is not held on even in a bigger neighbouringisland. Therefore, we investigated the social mobility through pre-existing externaldata and maps with on-site verif ications. We demonstrate a case of an idealisticpreservation and display of resources in this paper: the "Resource Centre" locatedalong the corridor of the local elementary/junior high school. It displays and preservesarchaeological resources, tools, animal stuff ing, and local literatures. This has shiftedthe handicaps away from small island researchers of having limited resources. Thecase of Kuchino-erabujima Island provides an important example for small islandswithout resource centres: this empowers present and future generations to engage intheir life-long education of their own homeland as well as for island researchers.
著者
新名主 健一
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
no.45, pp.7-10,

平和教育の概念は二つの層に分けてとらえられる.一つは「戦争反対!」のようなスローガンに代表される戦争の回避・防止に関わる教育である. もう一つは「平和でのどかな風景だ」というような状況が,人間の存在を脅かす他の何ものもなく,その状況の構成要因が,あるべき姿を保っているかどうかの検証の教育である. 具体的には政治・経済・社会・環境等が人間の幸せを希求するような教育である.後者は前者の背景をなしている. 本論は以上のような前提の下,長崎大学・琉球大学・鹿児島大学のシラバス等から,鹿児島大学での平和教育の実態を検討し問題点を指摘した. また鹿児島県での平和教育の取り組みを二つの例をあげて検討し問題点を指摘した. 次に論者が国語科教育学を専門とするので,国語科教科書に出てくる「一つの花」「石うすの歌」の平和教材としての妥当性の検討と問題点の指摘を行ったものである.
著者
梁川 英俊
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
no.51, pp.1-5,

黒島は作家・有吉佐和子の小説『私は忘れない』の舞台である。この小説は発表の翌年に映画化され、黒島の名を日本中に知らしめた。島にはそれを記念する文学碑がある。小説の末尾には、島の人々がテレビによって変わっていく様子が描かれているが、実際に島にテレビを寄贈したのは他ならぬ有吉であった。この小説が黒島に与えた影響を把握するために、関係者への聞き取り調査が必要である。
著者
鵜戸 聡
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
no.56, pp.75-78,

ミクロネシア連邦ポンペイ島のポーンラキード村においてカピンガマランギ系住民の工芸品を調査した。ポンペイ島に自生するマングローブやマホガニーなどの木材や象牙椰子の種子を用いて、海洋生物やトカゲ、釣針、伝統的な帆かけカヌーなどを象った彫刻が販売されていた。編み飾りは、ココヤシの幹の先端の若い繊維を煮て脱色した白いひもを同心円状に編んだ一種の組紐細工で、しばしばアクセントとしてパンダヌスの葉から作った焦げ茶色のひもを混ぜ、宝貝をあしらって美しい幾何学模様を作りだしていた。カピンガマランギの工芸品は、売買へ短絡的に結びついたものと言うよりは、習慣化された無心の製作行為の結果として生じるのであり、その行為も結果も過度に意味を問われることはない。その材質や形象によってさまざまな意味を誘発しつつ、しかもその意味を現勢化する言説を削ぎ落とされているがゆえに、意味の発生する一歩手前、意味形成の閾に立ちずさんでいる。
著者
山本 雅史 冨永 茂人
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.136-139,

与論島における主要な在来カンキツが6種類確認できた。それらは,1)イラブオートー(Citrus kerajivar. kabuchii, カブチー類縁種), 2)ユンヌオートー(C. oto, オートー), 3)ウンジョウキ(C. nobilis, クネンボ類縁種), 4)イシカタ(C. rokugatsu, ロクガツミカン), 5)キンカン(C. depressa, シイクワシャー), 6)ノボルミカン(C. sp., 雑柑タイプ)である。このうち,ウンジョウキとノボルミカンは,与論島において偶発的に生じたものと考えられる。残る4種類は南西諸島の他の島でも同じ種類のものが栽培されている。しかし,いずれの在来カンキツの呼称も他の島とは異なっており,これらのカンキツが近年導入されたものではなく,古くから与論島で栽培されてきたことがうかがえた。Six citrus accessions grown in Yoron island were classified as follows; 1) Irabu otou (Citrus keraji var. kabuchii, Kabuchii relative), 2) Yunnu otou (C. oto, Otou), 3) Unjouki (C. nobilis, Kunenbo relative), 4)Ishikata(C. rokugatsu, Rokugatsumikan), 5) Kinkan (C. depressa, Shiikuwasha), 6)Noboru mikan (C. sp., hybrid type). Unjouki and Noboru mikan were considered to be chance seedlings arisen in Yoron island. The other four accessions were observed in the other islands of Nansei archipelago. Since the names of all accessions in Yoron island were differed from those of other islands, it could be considered that there has been long history of cultivation of local citrus accessions.
著者
YAMAMOTO Sota
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.27-33,

In the 1950s, people in the Federated States of Micronesia (FSM) still ate a "traditional" diet based on starchy staple crops and marine resources, but this began to be replaced by imported food such as rice, flour, sugar, fatty foods, and other processed foods after the United States Department of Agriculture started its supplementary feeding program in the 1960s. This phenomenon accelerated after a Compact of Free Association was signed between the FSM and the United States in 1986. Since then, the FSM has faced serious public health problems due to this new diet and other lifestyle changes. On small islands and atolls, imported foods and medicines may not arrive for more than a month if a typhoon or an oil crisis occurs. In this study, a detailed study of household food consumption is shown to represent the present situation of food security on Piis-Paneu Island (Chuuk Atoll, Chuuk State) and Pingelap Island (Pohnpei State).
著者
"桑原 季雄"
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.21-30,

与論島では昭和54年をピークに観光客が減少していくなかで,様々なイベントを企画することによって,シーズンオフ期の冬場の観光客の開拓と誘致を積極的にはかってきた。従来の若者中心のビーチ観光やマスツーリズムから,ブーム後は様々なイベントの企画によって幅広い年齢層,多様な観光客の誘致を目指し,受動的観光から積極的観光政策へ大きく方向転換した。本稿では与論島の観光の現状と再生に向けた様々な取り組みについて紹介し,与論島の観光の性格や変遷の特徴について考察する。"Tourism in Yoron had its peak in 1979 and after that the number of tourists decreased markedly. Afterthe boom, Yoron islanders have ever been trying to bring tourists back again by creating various kinds ofevents and attractions not only in su ㎜ er but also in winte and all year round. Thus Yoron tourism haschanged from a mere beach tourism and mass tourism to a tourism which atracts a wider range of tourists,or from passive tourism to proactive tourism. The paper discusses about the present situation of tourismand the various efforts toward the rivitarization of tourism in Yoron Island."
著者
"佐藤 宏之"
出版者
鹿児島大学
雑誌
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers (ISSN:13450441)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.7-8,

本研究は、16世紀から19世紀半ばの「小氷期」と呼ばれる世界的に寒冷とされた時期に、種子島においてどのような気候変動や災害が発生し、それにいかに社会が対応していたのか、『種子島家譜』をもとにあきらかにしたものである。