著者
原 幹周 吉田 英樹 小田桐 伶 前田 貴哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.515-519, 2020 (Released:2020-08-20)
参考文献数
20

〔目的〕運動レベル経皮的電気神経刺激(TENS)の即時的な鎮痛効果は,周波数とパルス幅の組み合わせにより変化するか検討した.〔対象と方法〕健常成人16名を対象とし,人工的な疼痛に対して周波数とパルス幅の組み合わせが異なる6種類の運動レベルTENS条件とコントロール条件の計7条件を実施した.各条件の鎮痛効果は,Numerical Rating Scale(NRS)と前頭前皮質の酸素化ヘモグロビン量(Fp-HbO<sub>2</sub>)を用いて比較した.〔結果〕NRS,Fp-HbO<sub>2</sub>ともにコントロール条件と比較して,全TENS実施条件において有意に鎮痛効果が認められたが,TENS実施条件間で有意な差は認められなかった.〔結語〕運動レベルTENSの即時的な鎮痛効果は周波数,パルス幅による差が認められなかった.
著者
佐藤 輝 吉田 英樹 前田 愛 松本 健太 向中野 直哉 川村 真琴 小西 杏奈 島田 瑞希 高桑 奈緒美 鳴海 萌 天坂 興 原 幹周 小田桐 伶 前田 貴哉
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0668, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】低負荷(最大随意収縮(MVC)の20%程度)で実施される等尺性収縮後の筋弛緩法(PIR)と対象者の随意的努力を必要としない神経筋電気刺激(NMES)では,筋ポンプ作用に基づき筋血流量が改善する可能性が指摘されており,臨床では筋・筋膜性疼痛や浮腫の改善などに活用されている。しかし,PIRやNMESが筋循環動態に及ぼす影響の詳細は十分に検証されていないのが現状である。以上から本研究では,PIRとNMESが筋血流動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】健常者16名を対象とし,仰臥位を保持した対象者の右上腕二頭筋(BB)に対して3つの条件(条件1:PIRを実施する条件,条件2:NMESを実施する条件,条件3:コントロール条件)を無作為順序で日を改めて実施した。条件1では,対象者は,右BBに対するPIRとして,右肘関節90度屈曲位かつ右前腕90度回外位にて20%MVCでの右BBの等尺性収縮を10秒間実施し,その後,右肘関節完全伸展位かつ右前腕90度回外位にて20秒間右BBを弛緩させた。この右BBの収縮と弛緩の計30秒間を1セットとして,10セット5分間を連続で実施した。PIR終了後,対象者は安静仰臥位をさらに15分保った。条件2では,対象者は,右BBに対するNMES(波形:対称性矩形波,電流強度:肘関節の僅かな屈曲運動は起こる程度,周波数:30 Hz,パルス幅:250 μsec,オン・オフ時間:各5秒)を20分受けた。条件3では,対象者は安静仰臥位を20分保持するのみとした。各条件の実施中,筋血流量の指標として右BBの酸素化ヘモグロビン量(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン量(deoxy-Hb)を測定し,各条件開始時の測定値を基準として各条件での5分後(条件1のPIR終了時)及び20分後(各条件の終了時)でのoxy-Hbとdeoxy-Hbの経時的変化を多重比較検定にて検討した。【結果】条件1(PIR)では,oxy-Hbの明らか変化は認めなかったが,deoxy-Hbは条件開始5分後(PIR終了時)で有意に増加し,条件開始20分後でも有意に増加した状態であった。一方,条件2(NMES)では,oxy-Hbは条件開始5分後及び20分後で増加傾向を示したが,deoxy-Hbは同時点で減少傾向を示した。条件3では,oxy-Hb,deoxy-Hbともに経過中での明らかな変化を認めなかった。【結論】本結果は,PIRではdeoxy-Hbが増加するのに対し,NMESではoxy-Hbが増加する可能性を示しており,両者の筋循環動態に及ぼす影響の違いが明らかとなった。PIRのような低負荷随意運動では筋収縮に必要なATP産生は好気的代謝系に依存するのに対し,電気刺激に伴う筋収縮では嫌気的代謝系に依存する(Hamada, 2003)。このため,PIRでは酸素需要が高まりoxy-Hbと比較してdeoxy-Hbが増加するが,NMESでは酸素需要がPIR程には高まらないため,deoxy-Hbと比較してoxy-Hbが増加したと推察する。PIRとNMESはともに筋血流量を改善する可能性があるが,筋循環動態に及ぼす影響は対照的であり,臨床では目的に応じた使い分けも考慮すべきである。
著者
小田桐 伶
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.135-139, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
18

〔目的〕脳卒中者において発症時と発症後2週時の体組成を比較し,差をもたらした原因を考察することである.〔対象と方法〕急性期脳卒中患者33名を対象とした.Body Mass Index(BMI),体脂肪率,Skeletal Muscle Mass Index(SMI),体幹筋肉量,麻痺側上肢筋肉量,麻痺側下肢筋肉量,非麻痺側上肢筋肉量,非麻痺側下肢筋肉量を,発症3日以内の時点と発症後2週±2日の時点において測定して比較し,それぞれの効果量を算出した.〔結果〕発症から2週間経過すると,BMIは有意に減少するが,SMI,下肢筋肉量,体脂肪率には有意差は認めなかった.体幹と両上肢には有意な筋肉量低下が生じ,その効果量は大きく中等度~強度であった.〔結語〕脳卒中患者は発症から2週間経過すると,両上肢・体幹の筋肉量が低下しやすい.