著者
谷口 奈美 前田 愛子 冨永 昌周
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.534-537, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
12

原発性肢端紅痛症(primary erythromelalgia:PE)は,四肢末端の灼熱痛,発赤,皮膚温上昇を三徴とする難治性臨床症候群である.現状では確立した治療法はない.今回,PEの治療を経験したので報告する.症例は54歳,女性.10年前より温熱刺激による四肢末端の痛み,発赤,灼熱感を自覚するようになった.冷却により一時的に改善したが,痛み制御不良のため紹介受診となった.1日に20回程度の発作的な四肢末端の激しい痛みが出現し,睡眠障害を生じていた.自己免疫疾患,血液疾患は否定され,その症状からPEと診断した.治療は,星状神経節ブロックを施行し,症状の著明な改善がみられた.その後,α1アドレナリン受容体拮抗薬の内服を継続し,症状の改善を維持している.過去の文献から,PEは後根神経節,交感神経節やこれらの末梢神経のナトリウムチャネルの変異があると報告されている.この変異は痛みの感受性変化や血流障害を誘起し,また付随的な局所の発痛物質放出を招き,痛みを遷延化する可能性がある.本症例では交感神経遮断治療が奏効したことから,PEの病態に対する交感神経系の関与が示唆された.
著者
前田 愛 葉山 牧夫 中田 昌男 種本 和雄
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.824-828, 2006-09-15
被引用文献数
2

症例は70歳代女性.2002年8月近医にて胸部X線上左中肺野に石灰化陰影を指摘されたが自覚症状が無く経過観察されていた.2004年10月末,血痰が出現し近医を受診.画像上石灰化像の増大と新たな腫瘤影を認め精査加療目的で紹介人院となった.胸部CTでは拡張した左B^3気管支内腔に数珠状に連なる腫瘤影が存在し,内部には粗大な石灰化像を認めた.気管支鏡検査では左B^3気管支内に充満する黄金色の菌塊と,その末梢に表面粗な気管支結石がみられ,菌塊の培養にてアスペルギルスフミガタスが検出された.気管支結石を伴う気管支・肺アスペルギルス症の診断にて胸腔鏡補助下に左上区域切除術を施行した.気管支結石の成分分析では98%以上が炭酸カルシウムであり,分泌物貯留により生じた気管支結石によって気管支の閉塞をきたし,末梢気管支にアスペルギルスが感染したものと考えられた.
著者
佐藤 輝 吉田 英樹 前田 愛 松本 健太 向中野 直哉 川村 真琴 小西 杏奈 島田 瑞希 高桑 奈緒美 鳴海 萌 天坂 興 原 幹周 小田桐 伶 前田 貴哉
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0668, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】低負荷(最大随意収縮(MVC)の20%程度)で実施される等尺性収縮後の筋弛緩法(PIR)と対象者の随意的努力を必要としない神経筋電気刺激(NMES)では,筋ポンプ作用に基づき筋血流量が改善する可能性が指摘されており,臨床では筋・筋膜性疼痛や浮腫の改善などに活用されている。しかし,PIRやNMESが筋循環動態に及ぼす影響の詳細は十分に検証されていないのが現状である。以上から本研究では,PIRとNMESが筋血流動態に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】健常者16名を対象とし,仰臥位を保持した対象者の右上腕二頭筋(BB)に対して3つの条件(条件1:PIRを実施する条件,条件2:NMESを実施する条件,条件3:コントロール条件)を無作為順序で日を改めて実施した。条件1では,対象者は,右BBに対するPIRとして,右肘関節90度屈曲位かつ右前腕90度回外位にて20%MVCでの右BBの等尺性収縮を10秒間実施し,その後,右肘関節完全伸展位かつ右前腕90度回外位にて20秒間右BBを弛緩させた。この右BBの収縮と弛緩の計30秒間を1セットとして,10セット5分間を連続で実施した。PIR終了後,対象者は安静仰臥位をさらに15分保った。条件2では,対象者は,右BBに対するNMES(波形:対称性矩形波,電流強度:肘関節の僅かな屈曲運動は起こる程度,周波数:30 Hz,パルス幅:250 μsec,オン・オフ時間:各5秒)を20分受けた。条件3では,対象者は安静仰臥位を20分保持するのみとした。各条件の実施中,筋血流量の指標として右BBの酸素化ヘモグロビン量(oxy-Hb)と脱酸素化ヘモグロビン量(deoxy-Hb)を測定し,各条件開始時の測定値を基準として各条件での5分後(条件1のPIR終了時)及び20分後(各条件の終了時)でのoxy-Hbとdeoxy-Hbの経時的変化を多重比較検定にて検討した。【結果】条件1(PIR)では,oxy-Hbの明らか変化は認めなかったが,deoxy-Hbは条件開始5分後(PIR終了時)で有意に増加し,条件開始20分後でも有意に増加した状態であった。一方,条件2(NMES)では,oxy-Hbは条件開始5分後及び20分後で増加傾向を示したが,deoxy-Hbは同時点で減少傾向を示した。条件3では,oxy-Hb,deoxy-Hbともに経過中での明らかな変化を認めなかった。【結論】本結果は,PIRではdeoxy-Hbが増加するのに対し,NMESではoxy-Hbが増加する可能性を示しており,両者の筋循環動態に及ぼす影響の違いが明らかとなった。PIRのような低負荷随意運動では筋収縮に必要なATP産生は好気的代謝系に依存するのに対し,電気刺激に伴う筋収縮では嫌気的代謝系に依存する(Hamada, 2003)。このため,PIRでは酸素需要が高まりoxy-Hbと比較してdeoxy-Hbが増加するが,NMESでは酸素需要がPIR程には高まらないため,deoxy-Hbと比較してoxy-Hbが増加したと推察する。PIRとNMESはともに筋血流量を改善する可能性があるが,筋循環動態に及ぼす影響は対照的であり,臨床では目的に応じた使い分けも考慮すべきである。
著者
谷口 奈美 前田 愛子 冨永 昌周
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.15-0051, (Released:2016-09-06)
参考文献数
12

原発性肢端紅痛症(primary erythromelalgia:PE)は,四肢末端の灼熱痛,発赤,皮膚温上昇を三徴とする難治性臨床症候群である.現状では確立した治療法はない.今回,PEの治療を経験したので報告する.症例は54歳,女性.10年前より温熱刺激による四肢末端の痛み,発赤,灼熱感を自覚するようになった.冷却により一時的に改善したが,痛み制御不良のため紹介受診となった.1日に20回程度の発作的な四肢末端の激しい痛みが出現し,睡眠障害を生じていた.自己免疫疾患,血液疾患は否定され,その症状からPEと診断した.治療は,星状神経節ブロックを施行し,症状の著明な改善がみられた.その後,α1アドレナリン受容体拮抗薬の内服を継続し,症状の改善を維持している.過去の文献から,PEは後根神経節,交感神経節やこれらの末梢神経のナトリウムチャネルの変異があると報告されている.この変異は痛みの感受性変化や血流障害を誘起し,また付随的な局所の発痛物質放出を招き,痛みを遷延化する可能性がある.本症例では交感神経遮断治療が奏効したことから,PEの病態に対する交感神経系の関与が示唆された.