- 著者
-
小田部 雄次
- 出版者
- 静岡福祉情報短期大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2000
近代天皇制国家における女性の社会的位置は、一般に男性より下位におかれることが多く、たとえば職業、学業、その他の分野において、女性の活躍する場は限定されていた。しかしながら、女性の社会的能力は、そうした時代にあっても十分な可能性を有したものであった。十全な社会的活躍の場が保障されなかった女性たちにとって、天皇制国家の官僚システムに連動した職務や活動の舞台は重要なものであった。本研究は、そうした社会的な制限下にあった女性たちが、天皇制システムの中で、自らの可能性をどのように実現しえたのか、また、逆には、天皇制システムが女性の可能性をどのように制限し、かつ発展させていたのかを追究した。とりわけ、女官に焦点をあて、天皇の「付属物」的な存在としてみなされがちな女官やそれに類似する女性の機能が、時代の制限下の中で、女性の能力発揮の場として提供されていたかを明らかにした。具体的には、「『明治婦人録』に見る独立婦人」をテーマとして、明治期の女性の主たる職業や社会的活動の種類と、それに従事した具体的な女性名、およびその統計的処理をした。その際、宮中に関係する女性の全容把握につとめ、女性全体の中で宮中関係女性がどういう位置にあるかを検討した。また、補論として「『華族画報』に見る華族女性」を調査し、華族家における女性の動態把握につとめた。さらに、「近代の宮廷女性一覧」を作成し、女官などの宮廷女性の人物誌としてまとめた。その際、『日本近代女性人名辞典』、『平成新修旧華族家系大成』を基本的文献として、近代の女官の総体把握につとめた。