著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 高田 礼人 岡崎 克則 河岡 義裕
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

シベリアの水禽営巣地ならびに北海道で採取した野鳥の糞便からインフルエンザウイルスを分離し、シベリアに営巣する水禽が様々なHA亜型のインフルエンザウイルスを保持していることを明らかにした。NPならびにH5HA遺伝子の系統進化解析の結果、1997年に香港のヒトとニワトリから分離された強毒H5N1インフルエンザウイルスの起源がこれらの水禽類にあることが判った。したがって、今後ヒトの間に侵入する新型ウイルスのHA亜型を予測するため、シベリア、アジアを含む広範な地域で鳥類インフルエンザの疫学調査を実施する必要がある。北海道のカモから分離した弱毒H5N4ウイルスを用いて強毒H5N1ウイルス感染に対するワクチンを試製し、これが有効であることを示した。そこで、疫学調査で分離されるウイルスは新型ウイルス出現に備え、ワクチン株として系統保存する計画を提案した(日米医学協力研究会2000、厚生省1999)。中国南部のブタにおける抗体調査の結果から、H5ウイルスの感染は少なくとも1977年から散発的に起こっていたことが判明した。一方、H9ウイルスは1983年以降に中国南部のブタに侵入し、その後ブタの間で流行を繰り返していることが判った。
著者
喜田 宏 伊藤 壽啓 梅村 孝司 藤田 正一 前出 吉光 中里 幸和 高田 礼人 岡崎 克則 板倉 智敏
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

ウイルスの病原性発現機構を宿主側の要因を詳細に解析することによって究明することを目的とした。そのため、ウイルス感染によって誘発される宿主細胞由来病原性因子の検出を試みた。インフルエンザウイルス感染発育鶏胚の奨尿膜を超音波破砕し、その可溶性画分をニワトリの静脈内に注射した。ニワトリは汎発性血管内凝固により数分以内に斃死した。この致死活性はヘパリンを静脈内に前投与することによって抑制されたことから、本因子は血液凝固に関与する物質と推定された。陰イオン交換体を用いた高速液体クロマトグラフィーおよび塩析法によって病原性細胞因子を濃縮精製する系を確立し、粗精製致死因子をマウスに免疫して、モノクローナル抗体11クローンを作出した。ニワトリの鼻腔内にインフルエンザウイルス強毒株と弱毒株を実験感染させ、経過を追及した。強毒株はウイルス血症を起こしたが、弱毒株はウイルス血症を起こさなかった。すなわち、強毒株を接種したニワトリでは全身臓器の血管内皮細胞でウイルス増殖が起こり、血管炎を招来した。強毒株の標的が血管内皮細胞であることが明らかになった。損傷した血管内皮細胞から血液凝固因子ならびにサイトカインが放出された結果、汎発性血管内血液凝固を起こし、ニワトリを死に至らしめるものと結論した。この成績はインフルエンザウイルス感染鶏胚奨尿膜から抽出した細胞因子がニワトリに血管内凝固を起す事実と一致する。汎発性血管内血液凝固症候群は様々なウイルス感染症で認められる。したがって、この細胞因子はインフルエンザのみならず他のウイルス感染症においても病原性発現に重要な役割を果たすものと考えられる。ウイルス感染症の治療法を確立するため、本致死因子をコードする遺伝子を同定する必要がある。
著者
伊藤 壽啓
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.53-58, 2009-06-25 (Released:2010-02-01)
参考文献数
7
被引用文献数
3 3

H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界規模の大流行を引き起こし、今尚、各国の養鶏産業界に甚大な被害を与え続けている.またインフルエンザウイルスは鳥類に由来する最も重要な人獣共感染症の病原体の一つであり,本ウイルスの人への直接感染事例もまた増え続けている.本ウイルスは鶏やアヒルなどの家禽以外にも多くの鳥類が感受性を有することから,とくに野生鳥類が本ウイルスの伝播,流行拡大に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている.しかしながら,自然界における本ウイルスのレゼルボアとしての野鳥の役割は未だ完全には理解されていない.そこで高病原性鳥インフルエンザウイルスの生態に果たす野鳥の役割を明らかにする目的で,渡り鳥を含む国内野鳥を対象としたウイルス保有状況調査が環境省,山階鳥類研究所および鳥取大学で実施された.これまで3株のH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離されている.その一つは2007年1月に熊本県相良村において衰弱して発見されたクマタカから分離された.他の2株は2008年4月と5月に青森県十和田湖において斃死したオオハクチョウから分離された. 渡り鳥は季節性に地球規模で移動することから,同様の問題は他の国々においても常に起こり得る.野鳥を対象とした広範囲な共同疫学調査が高病原性鳥インフルエンザの国際防疫に重要であると考えられている.
著者
伊藤 壽啓
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 = Journal of the Japanese Society on Poultry Diseases (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1-6, 2017-09

2016年11月,H5N6亜型のウイルスによる高病原性鳥インフルエンザが青森県下で発生した。本亜型のウイルスによる発生は我が国では初めてであったが,高病原性鳥インフルエンザの国内発生としては,およそ2年ぶりのことであった。その後,本年3月までの約4カ月間に1道8県において合計12事例が報告されたが,いずれの発生においても,早期通報とその後の的確な初動対応がなされ,二次的な流行拡大は一切認められなかった。そのため,2017年6月28日をもって,我が国はOIEの規約に基づき,清浄国への復帰を果たしている。しかしながら,これまでの諸外国の流行状況をみると,来シーズンも我が国への新たなウイルスの侵入リスクは依然として高いと言わざるを得えない。農林水産省は近頃公表した疫学調査チーム報告書の中で,今後の我が国の高病原性鳥インフルエンザ防疫対策の更なる強化に向けた提言をまとめている。
著者
伊藤 壽啓
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-7, 2013-09-25
参考文献数
8

この10年間にH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは世界64カ国におよぶ大流行を引き起こし,今尚,中国,ベトナム,インドネシア,エジプトなど一部の国々においては,家禽や野鳥間のみならず,家禽から人への直接伝播をも含めた流行が繰り返されている。一方,2013年3月,中国本土において,H7N9亜型の低病原性鳥インフルエンザウイルスが人に感染し,これまでに感染者134名,うち43名の死亡が確認されている(2013年7月20日現在)。その他にも,メキシコにおけるH7N3亜型,台湾におけるH5N2亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスの出現や,以前からアジアを中心に蔓延を続けるH9N2亜型の鳥インフルエンザウイルス,さらには2013年6月の台湾におけるH6N1亜型鳥インフルエンザウイルスの人への感染など,海外における鳥インフルエンザの流行状況は,近年一段と多様化,複雑化の様相を呈している。
著者
伊藤 壽啓 喜田 宏
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

インフルエンザウイルスは人の他に多くの鳥類および哺乳動物に感染する。ニワトリ、ウマ、ブタ、ミンク、アザラシ等に致死的な流行を起こし、その被害は甚大である。最近、これらのインフルエンザウイルスの遺伝子はすべて野生水禽のウイルスに由来することが明らかとなった。また、渡りガモのウイルスが中国南部でアヒルを介してブタに伝播し、ブタの呼吸器でヒトのウイルスと遺伝子再集合体を形成することによってヒトに導入されたという新型ウイルスの出現機構が明らかにされた。しかし、ウイルスが異なる動物種間を伝播するメカニズムが解明されていない。我々はインフルエンザウイルスの宿主域とレセプター特異性が関連する成績を得た。本研究はレセプター特異性を分子レベルで解析することにより、インフルエンザウイルスの異動物種間伝播のメカニズムを明らかにすることを目的として企画された。まずインフルエンザウイルスの代表的な宿主であるカモ、ウマおよびブタの標的細胞表面のレセプターの糖鎖構造をシアル酸の結合様式の違いを認識するレクチンを用いて解析した。これにより、ウイルスのレセプター結合特異性と宿主細胞表面の糖鎖構造が宿主域を決定する重要な要因であることを証明した。一方、シアル酸の分子種の違い(Neu5Ac,Neu5Gc等)を認識する特異抗体を用いて、N-グリコリル型シアル酸(Neu5Gc)の分布がカモのウイルスの腸管での増殖部位と相関する成績を得た。さらに、このNeu5Gcを認識するヒト由来ウイルス変異株のヘマグルチニンを持ち、他の遺伝子は全てカモのウイルス由来である遺伝子再集合体を得た。このウイルスがカモの腸管で増殖するか否かを現在検討中である。これによりインフルエンザウイルスのカモの腸管における増殖に関わる因子が明らかになるであろう。また、この研究過程で各種動物由来赤血球を用いた凝集試験により、インフルエンザウイルスのレセプター特異性を調べる簡便法を確立した。古くから知られるこのインフルエンザウイルスの血球凝集の機構をウイルスのレセプター結合特異性と血球表面に存在する糖鎖構造という観点から究明することが出来た。今後はヘマグルチニン以外のウイルス構成蛋白に関してインフルエンザウイルスの宿主域に関わる因子を明らかにし、インフルエンザウイルスの異動物種間伝播のメカニズムをさらに解明したい。
著者
伊藤 壽啓 喜田 宏 伊藤 啓史 大槻 公一 堀本 泰介 河岡 義裕
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

1997-1998年にかけて香港において鶏由来高度病原性インフルエンザウイルスがヒトに伝播し、18名の市民が感染し、うち6名を死に至らしめた。このウイルスはいずれの株も鶏に対しては一様に全身感染を引き起こし、高い致死性を示したが、哺乳動物に対する病原性では明らかに2つのグループに区別された。すなわちグループ1は50%マウス致死量(MLD_<50>)が0.3から11PFUの間であり、もう一つのグループ2はMLD_<50>が10^3以上であった。この成績から鶏由来高度病原性インフルエンザウイルスの哺乳動物に対する病原性にはウイルス蛋白の一つであるヘマグルチニンの開裂性に加えて、さらに別の因子が関与しているものと推察された。一方、野生水禽由来の弱毒インフルエンザウイルスを鶏で継代することにより、弱毒株が強毒の家禽ペストウイルスに変異することが明らかとなった。この成績は自然界の水鳥が保有している弱毒のインフルエンザウイルスが鶏に伝播し、そこで受け継がれる間に病原性を獲得し得る潜在能力を保持していること、また鶏体内にはそのような強毒変異株を選択する環境要因が存在することを示している。また、この過程で得られた一連の病原性変異株はインフルエンザウイルスの宿主適応や病原性獲得機序のさらなる解明のための有用なツールとして今後の研究に利用できる。そしてそれはプラスミドから変異インフルエンザウイルスを作出可能なリバースジェネティクス法の併用によって、さらに確実な研究成果が期待されるであろう。現在はその実験系を用いた人工ウイルスの作出に成功しており、今後、最終段階である感染実験による病原性獲得因子の解析を計画している。
著者
伊藤 壽啓 大槻 公一
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

鶏の強毒インフルエンザ、いわゆる家禽ペストは急性で致死的な伝染病であり、一度流行するとその国の養鶏産業は壊滅的な打撃を被る。しかし、野鳥が保有する弱毒のトリインフルエンザウイルスがどのようなメカニズムで鶏に対する病原性を獲得するのかは詳らかではない。そこで本研究では弱毒トリインフルエンザウイルス病原性獲得機構の分子レベルでの解明を試みた。我々はまず、国内に飛来する渡り烏から分離された弱毒トリインフルエンザウイルスを鶏ヒナの気嚢で24代、さらに脳で5代継代した。最終的に得られた24a5b株は鶏に対する致死率が100%の強毒株に変異していた。そこでこの弱毒ウイルス親株と一連の継代株のHA開裂部位のアミノ酸配列を調べた。その結果、親株の開裂部位には、塩基性アミノ酸R(アルギニン)が-1位と-5位にそれぞれ離れて単独で存在する典型的な弱毒型HAのアミノ酸配列であったが、継代を繰り返す間に2度の点変異と3塩基の挿入が起こり塩基性のアミノ酸(Rまたはリジン(K))への置換あるいは挿入が起こり、結果としてR-R-K-K-Rという合計5個の塩基性アミノ酸が連続した強毒ウイルスに変異していたことが明らかとなった。一方、継代株のニワトリ体内での増殖試験では継代を重ねるごとに、最初は鶏でほとんど増殖できなかった親株が徐々に他臓器増殖性を獲得し、最終的に脳を含む全身で増殖可能な強毒ウイルスに変異していたことが明かとなった。即ち、自然界においても渡り鳥が保有する弱毒トリインフルエンザウイルスが鶏に伝播し、鶏から鶏へと次々に新たな感染が操り返される間に、HAの開裂部位のアミノ酸が段階的に置換し、徐々に多臓器増殖性を獲得して強毒ウイルスに変異するものと考えられた。
著者
喜田 宏 YAMNIKOVA Sv 河岡 義裕 高田 礼人 岡崎 克則 SVETRANA Yam デメネフ V. ヤムニコバ S. ルボフ D.K. 伊藤 壽啓
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

平成7〜9年夏、カムチャッカ半島南端付近、ハバロフスク郊外のアムール河流域ならびにサハ自治共和国内のレナ河流域において水禽の糞便および湖沼水3,000検体を採取した。8年にはレナ河流域北緯63度30分のコベイスキー地区で採取した約900検体の水禽糞便からインフルエンザウイルスH4N6亜型19株、H4N9亜型1株、H11N1亜型1株、H11N6亜型2株、H11N9亜型8株を分離した。9年にはコベイスキー地区で採取した水禽糞便120検体およびヤク-ツク(北緯62度)で採取した鴨の糞便72検体からは各々H4N6亜型1株およびH3N8亜型5株が分離された。一方、レナ河流域北緯65度00分〜64度36分の四十諸鳥地域で採取した水禽糞便約1,400検体と湖沼水20検体からはウイルスが分離されなかった。カムチャッカ半島ならびにアムール河流域で採取した水禽糞便からインフルエンザウイルスは分離されなかった。以上の成績は、鴨の営巣湖沼がレナ河流域北緯63度付近に存在することを示唆する。平成8年と9年の10月に北海道宗谷地方において採取した480検体の水禽糞便材料からインフルエンザウイルスH1N1亜型、H5N3亜型、H5N4亜型、H6N1亜型、H6N7亜型、H8N1亜型、H8N3亜型、H9N2亜型ならびにH11N9亜型各1株を分離した。平成8年度および9年度にレナ河流域および北海道の水禽糞便から分離したインフルエンザウイルスのNP遺伝子の系統進化解析を実施した。その結果、調べた分離株すべてが新型インフルエンザウイルスの発生地である中国南部を含むアジア大陸に分布するウイルスの系統に属することが判明した。以上の成績は、新型インフルエンザウイルスの抗原亜型を予測するために、シベリアの水禽営巣地におけるインフルエンザウイルスの分布をさらに解明する必要があることを示している。
著者
喜田 宏 岡崎 克則 迫田 義博 河岡 義裕 高田 礼人 伊藤 壽啓
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

新型ウイルスの亜型予測に資するため、鳥類および動物インフルエンザウイルスの疫学調査を実施した。ロシア、モンゴル、中国および北海道で、渡りカモの糞便3,987検体を採取し、亜型の異なるインフルエンザAウイルス212株を分離した。宮城県のブタからH1N2ウイルスを分離した。北海道大学を含む動物インフルエンザセンター5機関で25株のH9ウイルス株を交換し、解析を共同で開始した。渡りカモのウイルス遺伝子を比較解析したところ、日本で分離されたH9インフルエンザウイルスと1996年に韓国でニワトリに被害をもたらしたウイルスが近縁であった。1995~1999年に中国のニワトリから分離されたH9N2ウイルスの遺伝子解析の結果、渡りカモのウイルスと異なる亜群に分類され、ノイラミニダーゼに欠損が認められた。内部蛋白遺伝子は1997年の香港の強毒H5N1ウイルスに内部蛋白遺伝子を供給したH9N2ウイルスの系統とは異なった。香港のブタ、カスピ海のアザラシの抗体調査を行い、インフルエンザウイルスが感染した成績を得た。インフルエンザウイルスの異種動物間伝播機構を明らかにするため、ニワトリ雛の気嚢継代によって得たニワトリ馴化株の遺伝子再集合体を作出し、ニワトリ肺における増殖性を調べた。HA遺伝子を入れ替えた遺伝子再集合体の増殖性に変化はなく、他の因子が関与することが示唆された。新型ウイルスの出現に備え世界の動物インフルエンザの疫学調査とワクチン候補株を系統保存・管理するプロジェクトをWHOに提案し、各国とのネットワーク形成に支援が得られることになった。
著者
伊藤 壽啓
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.90-95, 2004-08-25
著者
喜田 宏 梅村 孝司 迫田 義博 伊藤 壽啓 小笠原 一誠 河岡 義裕 岡崎 克則
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、家禽と家畜のインフルエンザの被害を未然に防ぐとともに、ヒトの新型インフルエンザウイルスの出現に備え、その予防と制圧に資することを目的とする。・動物インフルエンザのグローバルサーベイランスによるウイルス分布の解明2006年秋、日本、モンゴルにおいて採取された渡りガモおよびハクチョウの糞便材料からのウイルス分離を試みた。1,201検体の材料から合計55株のインフルエンザAウイルスを分離同定した。これらの分離株にはH5やH7亜型のインフルエンザウイルスは含まれていなかった。これまでのウイルス分離の成績と合わせると、H1-H16およびN1-N9までの144通りの組合せのうち、133通りのウイルスの系統保存を完了した。・インフルエンザウイルスの病原性決定因子の同定2006年夏、モンゴルの湖沼で死亡野烏が再び発見され、死亡したオオハクチョウおよびホオジロガモの臓器材料からH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離された。分離されたウイルスは、2005年中国やモンゴルの野生水禽から分離された高病原性のH5N1ウイルスと8つの遺伝子分節すべてが近縁であった。また、このウイルスに対して哺乳動物が高い感受性を示すことが動物試験から明らかにした。・ベッドサイド早期迅速インフルエンザ診断法の開発A型インフルエンザウイルスH5およびH7亜型抗原を特異的に検出する簡易診断キットを開発した。本キットの有用性を実験感染動物の材料を用いて評価したところ、NP検出キットより感度は劣るが、H5およびH7抗原を特異的に検出でき、ベットサイド診断法として有用であることが確認された。