著者
田嶋 哲也 春木 茂男 小貫 琢哉 稲垣 雅春 有田 カイダ 薄井 信介 伊東 浩次 松本 日洋 滝口 典聡
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.806-814, 2018-12-01 (Released:2018-12-29)
参考文献数
19

横隔膜損傷の治療においては,胸腹部外傷であることを念頭に置いた治療戦略が必要である.当院で経験した左外傷性横隔膜損傷9例と報告例50例の検討から,特に手術アプローチに関して考察する.手術アプローチは,開腹先行46例(2例に開胸追加),開胸先行11例(6例に開腹追加),開胸開腹同時2例であった.予後は合併損傷に影響され,開腹先行で40例生存,6例死亡,開胸先行で6例生存,5例死亡,開胸開腹同時は2例生存であった.循環動態の安定した左横隔膜損傷では手術アプローチを考慮する余地があるが,腹腔内臓器損傷への迅速な対応が予後に影響する可能性もあるため,開腹先行アプローチが推奨される.体位は胸腹部ともにアプローチ可能な右半側臥位が有用であり,開腹+胸腔鏡観察は合理的なアプローチの一つである.
著者
小林 真弓 小貫 琢哉 稲垣 雅春 西田 慈子 高木 香織 佐川 義英 中村 玲子 尾臺 珠美 藤岡 陽子 市川 麻以子 遠藤 誠一 坂本 雅恵 島袋 剛二
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.56-60, 2015 (Released:2015-07-10)
参考文献数
19
被引用文献数
2

〔緒言〕月経随伴性気胸 (Catamenial Pneumothorax, 以下CP) は胸腔内子宮内膜症の一種であり, 詳細な病態や標準治療は明らかではない。診療科をまたぐ疾患であり, 呼吸器科医と婦人科医の連携が必要となる。今回, 当院で経験したCP症例の臨床経過を検討した。 〔方法〕1989年1月から2014年8月の間に当院で気胸に対して胸腔鏡下肺手術が施行された症例のうち, 病理学的に肺・胸膜・横隔膜のいずれかに子宮内膜症を認めた8例を対象とし, 臨床像,治療を後方視的に検討した。 〔結果〕発症年齢中央値は37歳。8例中7例 (87.5%) が右側発症であった。骨盤内子宮内膜症の検査をした例が6例, うち5例が骨盤内子宮内膜症を有していた。手術後からの観察期間中央値は33.5か月。8例中6例が術後気胸再発, うち2例はジエノゲスト内服後の再発であった。いずれの症例もジエノゲスト内服またはGnRHa・ジエノゲストSequential療法で再発を防ぐことができた。 〔結語〕気胸は緊急で脱気等の処置が必要であり再発防止には治療薬服用の高いコンプライアンスが求められる。GnRHa投与症例では術後再発を認めておらず, 術後薬物療法としてGnRHaまたはGnRHa・ジエノゲストSequential療法が望ましいと考える。ただし, ジエノゲストのみで再発しない症例もあり, 治療法の選択に関してさらなる症例の集積が必要である。