著者
足達 太郎 小路 晋作 高須 啓志 MIDEGA Charles A. O. KHAN Zeyaur R. MOHAMED Hassan RUTHIRI Joseph M. 中村 傑 TAMO Manuele YUSUF Sani R.
出版者
東京農業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

アフリカの食用作物栽培ではかねてより、おとり作物の利用や混作といった持続的手法がもちいられてきた。本研究では、こうした手法がトウモロコシやササゲなどの食用作物を加害する害虫やその天敵の生態にどのような影響をおよぼすのかをあきらかにした。さらにこれらの手法を、昆虫病原ウイルスや導入天敵といったあらたな害虫防除資材とくみあわせることにより、合理的かつ経済的な環境保全型害虫管理体系を構築することを検討した。
著者
小路 晋作 伊藤 浩二 日鷹 一雅 中村 浩二
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.279-290, 2015-11-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
65
被引用文献数
3

水稲の省力型農法である「不耕起V溝直播栽培」(以降、V溝直播と略す)では、冬期にいったん給水し、代かきを行った後、播種期前に落水して圃場を乾燥させる。イネの出芽後(石川県珠洲市では6月中旬以降)から収穫直前まで湛水し、夏期の落水処理(中干し)を行わない。また、苗箱施用殺虫剤を使用しない。このようなV溝直播の管理方式は、水田の生物多様性に慣行の移植栽培とは異なる影響を及ぼす可能性がある。本稿では、石川県珠洲市のV溝直播と移植栽培の水田において、水生コウチュウ・カメムシ類、水田雑草、稲株上の節足動物の群集を比較し、以下の結果を得た:(1)V溝直播では6月中旬以降に繁殖する水生コウチュウ・カメムシ類の密度が高かった。この原因として、湛水期間が昆虫の繁殖期や移入期と合致すること、さらに苗箱施用殺虫剤が使用されないことが考えられた。(2)V溝直播では夏に広く安定した水域があり、そこにミズオオバコ等の希少な水生植物が生育し、有効な保全場所となった。(3)両農法の生物群集は、調査対象群のすべてにおいて大きく異なり、両農法の混在により生じる環境の異質性が、水田の動植物のベータ多様性を高める可能性が示唆された。一方、V溝直播には以下の影響も認められた:(1)4月から6月中旬にかけて落水するため、この時期に水中で繁殖する種群には不適である。(2)初期防除が行われないため、一部の害虫(イネミズゾウムシ、ツマグロヨコバイ)の密度が増加した。本調査地におけるV溝直播水田では、慣行の移植栽培と同様に、8月中旬に殺虫剤散布が2回行われており、生物多様性への悪影響が懸念される。本調査の結果は、一地域に二つの農法が混在し、それぞれに異なる生物群集が成立することにより、今後の水田動植物の多様性が保全される可能性を示している。