著者
小野 直哉 田上 麻衣子 高澤 直美 東郷 俊宏
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.17-32, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
4

現在、 鍼灸をはじめ、 伝統医学を取り巻く国際環境は、 従来の我々の認識を超え、 急激に変化している。 近年、 極東アジアのいくつかの国々では自国の伝統医学の古典医学書や伝統医学の一部分を、 国連教育科学文化機関 (UNESCO) の世界記録遺産や無形文化遺産へ登録した。 また、 世界保健機関 (WHO) では疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) のICD-10からICD-11への改訂に伴い、 伝統医学をICD-11に盛り込む作業が行われている。 更に、 国際標準化機構 (ISO) では極東アジアの伝統医学の国際標準化の作業が進められている。 WHOと公的関係を持つ世界鍼灸学会連合会 (WFAS) でも鍼灸の国際標準化の作業が進められている。 更に、 生物多様性条約 (CBD) では伝統医学にも関わる遺伝資源と伝統的知識の議論が行われている。 伝統医学に関する事柄は、 他にも世界知的所有権機関 (WIPO) や世界貿易機構 (WTO/TRIPS)、 国連食糧農業機関 (FAO) など、 多岐に亘る国際機関で個別に議論されている。 本パネルディスカッションでは、 最初に、 CBD及び名古屋議定書における伝統的知識の保護に関する要点を整理し、 WIPOにおける議論の状況と伝統医学に関わる伝統的知識のUNESCOでの無形文化遺産の登録の現状を明らかにし、 鍼灸の伝統的知識の保護に関する今後の課題について検討した。 次に、 WFASがWHOから委託された形で鍼灸の国際標準化を進めている現状と経過を整理し、 JSAMの立場とWFASの鍼灸の国際標準化作業における問題点を明らかにし、 WFASでの鍼灸の国際標準化作業とISOでの鍼灸の国際標準化作業の関係について検討した。 最後に、 WHOで鍼灸の国際標準化が初めてなされた1980年代から、 ISO/TC249において鍼灸の国際標準策定が進行している現在までの鍼灸の国際標準化の流れを整理し、 鍼灸の国際標準化を主に担っている国々における伝統医学の国際標準化の現況を概観し、 伝統医学の国際標準化の背後に潜む伝統医学のヘゲモニー争いの様相と今後の伝統医学の国際標準化の課題について検討した。
著者
福田 早苗 渡邊 映理 小野 直哉 坪内 美樹 白川 太郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.293-300, 2006 (Released:2014-07-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的 近年,その市場の増大が注目される現代西洋医学以外の伝統的な医療や治療方法であるが,国内での使用の実態を明らかにした報告は,あまり多くない。本研究では,自記式質問票を用いて,町単位の実態調査を実施し,その使用実態を明らかにするとともに,結果から伺える問題点をとらえる。方法 熊本県小国町町民35歳以上64歳以下の3,501人全員を対象とした自記式質問票を実施した(回収率83.6%)。質問票の内容は,「個人の属性」,「健康状態」,「生活習慣」についてであった。現代西洋医学以外の伝統的な医療や治療方法の使用経験の有無については,「漢方薬」,「栄養補助食品/健康食品(カルシウム・ビタミンなど)」,「カイロプラクティック/整体」,「マッサージ/指圧」,「イメージ療法/ヨガ/瞑想」,「鍼灸」,「気功/太極拳」,「アロマセラピー/ハーブ」,「温泉」について,それぞれ,「使用頻度」・「医師の処方/薦めの有無」・「目的」・「効果」・「費用」についてたずねた。結果 現代西洋医学以外の伝統的な医療や治療方法使用・摂取は,約57%であり,全体的に年齢が高いほど,女性であるほど,高かった。最も多いのは,栄養補助食品/健康食品で女性47%,男性35.3%であった。医師に薦められて(処方で)用いている項目で最も多いものは,「漢方薬」であり,女性で24.8%,男性で11.4%であった。もっとも治療院や専門店の利用率が高いのは,カイロプラクティック/整体であった(男性68.6%,女性70.5%)。結論 現代西洋医学以外の伝統的な医療や治療方法使用・摂取は,約57%と,各国平均に比べても高く,使用・摂取は,女性や年齢が高いものに多かった。利用状況は高く,健康政策上に無視できない影響を与えると考えられる。
著者
岩 昌宏 浦田 繁 小野 直哉 近藤 史生 沢崎 健太 本田 達朗 堀 紀子 矢野 忠 川喜田 健司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-71, 2004-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

我国において鍼灸の経済評価に関する研究はほとんどなされていない。そこで鍼灸の経済評価に関する研究方法を確立するために、そのモデルケースとして、「職場 (企業) における鍼治療の経済評価に関する研究」を紹介するとともに、今後の経済評価を加えた鍼灸研究の方向性について考察した。本稿ではモデルケース2例の研究内容の詳細と経済評価を行う際の重要ポイントについて紹介する。