著者
小関 誠 レカ ラジュ・ジュネジャ 白川 修一郎
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.143-150, 2004-11-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
35
被引用文献数
2

人生の3分の1を占める「眠り」は人間にとって最も重要な生命現象の一つである。現代においては5人に1人が一ヶ月以内に不眠を経験し、外来新患では一ヶ月以上続く長期不眠愁訴を持つ者が10人に1人以上存在する。また、睡眠障害が引き起こす交通事故等の国民の経済損失は年間1兆4,000億円と算定され、医療費の支出も全国で年間5,000億円以上、睡眠薬にかかる医療コストだけでも最低1,825億円の支出があると推定されている。種々の天然成分が睡眠におよぼす効果はこれまで幾つか報告されている。ヒマラヤスギやマツなどに含まれる香気成分の一つであるセドロールには交感神経の興奮を抑制し副交感神経活動を優位にさせる効果があり、更に睡眠においては総睡眠時間の延長、入眠潜時の短縮、睡眠効率の上昇が認められている。数十種類の香気成分を含む西洋ハーブの一種であるバレリアナには鎮静効果があることが知られており、ヒト臨床試験において睡眠潜時の減少、睡眠の質の改善、徐波睡眠の延長などが確認されている。