著者
森 陵一 小高 鐵男 添田 聡 佐藤 淳 柿野 淳 浜戸 祥平 高木 久 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1223-1229, 2005-12-25
被引用文献数
2 32

若い大型動物の中には, 葉状骨(laminar bone)で長骨を形成し, 成長に伴い, ハバース骨に置換されることが知られている.今回は, 若いウシ, ブタ, ヒツジの脛骨を, 走査電顕による反射電子像で観察した.ウシの新生子と1ヶ月齢は典型的な同心円状の葉状骨を示し, ブタの新生子と1ヶ月齢は葉状骨による網目状構造を示した.ヒツジの新生子はウシに類似し, それらの骨量の形成速度は, 6ヶ月齢までは同様で, ブタよりは高比率を示した.ウシの骨単位は6ヶ月齢で最内層に少数現れ, 1歳齢では外層に葉状骨が残存するものの骨全体に現れていた.ブタの6ヶ月齢は最外層を除き, 多量の骨単位が観察された.ヒツジの6ヶ月齢に骨単位は認められず, 1歳齢では中層に限り少量観察されたが, その量はウシよりも高比率を示した.ヒツジの1歳齢ではウシと比べ, 骨単位の広い骨吸収領域が観察され, ヒツジの骨量は6ヶ月齢から1歳齢にかけて減少した.その結果, 1歳齢のウシは, ヒツジよりも高い葉状骨の割合を保持し, ブタは, 最も速い骨単位による骨改造を示した.今回観察した3種の成長過程における長骨の組織像と骨量の相違は, 同一の科(ウシとヒツジ)では, 体重や体高の違いに起因し, 科が異なるブタは, 前者と比べ多産系で, 幼体期に母体への依存度が高いためかもしれない.言い換えると, ブタの骨量の低さは歩行の遅さを強く示唆する.また, それぞれの動物間で, 骨単位の初期形成の部位が異なることが推察されたが, この, 点と骨改造の正確な開始時期は, 今後, 連続的な経齢変化を追って検討する必要がある.
著者
森 陵一 小高 鐵男 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.101-106, 1999-02-25
参考文献数
12

真皮膠原線維の代謝回転が早いためと考えられる皮膚脆弱症をもつ11歳齢ホルスタイン雌ウシ(Cow1)の橈骨骨幹の横断切片を用いて, 形態学的および物理化学的な検索を行った. 巨大なCow1は成長の安定した5-6.5歳齢の正常雌ウシの約1.5倍の体重を示した. その骨試料を正常な12歳齢雌ウシ(Cow2)と比較した. 今まで, 若いウシやある草食恐竜の長骨骨幹は, 付加的に形成される同心円状の葉状骨(laminar bone)からなり, また, このような葉状骨は成長の早い家畜や大型犬の成長期の骨に特徴的に見られると報告されている. Cow1とCow2の骨量はほぼ同じであったが, Cow1はCow2と比べて外層1/2で少数の骨単位しかもたず, 全層ではCow2と1歳齢の去勢雄ウシの中間型を示した. Cow1とCow2の間に, CaとP量, Vickers硬さに有意差は認められなかった. しかし, Cow1の骨の膠原細線維は不均一な直径と乱れた配列を示した. このことから, 既に報告された皮膚脆弱症の真皮と骨の膠原細線維の形成に何らかの相関性のあることが推察された. 葉状骨の残存量からは, 11歳齢のCow1はおそらく最近まで成長しており, その結果として, ある草食恐竜の様に巨大化したと考えられた.