著者
佐藤 淳 木下 豪太
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.307-319, 2020 (Released:2020-08-04)
参考文献数
58

次世代シークエンサーは2005年ごろから実用化が進んだ新型DNAシークエンサーであり,現在も急速なスピードで改良されている.現時点で開発から10年以上が経ち,日本の哺乳類学でも少しずつ利用されつつある一方で,未だ十分に活用されていないのが現状である.本稿では,最近の研究事例を紹介することで,今後の日本の哺乳類学における次世代シークエンサーの利用を促進するきっかけとしたい.次世代シークエンサーが提供するデータにより,従来と比較して桁の異なる莫大な量のDNA情報が利用可能となったことで,進化生物学,生態学,分類学等の基礎科学だけでなく,野生哺乳類の保護・管理等の応用科学分野においても大きな貢献が期待される.
著者
佐藤 淳 Wolsan Mieczyslaw
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.23-40, 2012 (Released:2012-07-18)
参考文献数
98
被引用文献数
1

レッサーパンダAilurus fulgensはジャイアントパンダと共に食肉目Carnivoraの中で高度な草食適応を果たした種である.1825年の分類学的記載以来,約190年もの間,他の食肉類との進化的類縁関係は謎であった.本総説ではレッサーパンダの進化的由来に関するこれまでの分子系統学的研究を振り返り最新の知見を提供する.近年の主に核遺伝子を利用した分子系統学的研究においては,レッサーパンダはイタチ上科Musteloideaの主要な系統であり,イタチ科Mustelidaeとアライグマ科Procyonidaeから構成される系統に近縁であることが強く支持されている.また,分岐年代推定によりレッサーパンダの系統の起源は約3,000万年前にあると推定された.さらに生物地理学的解析により,その起源はアジアにあることが示唆された.レッサーパンダの系統分化は始新世から漸新世にかけての大規模な地球環境変動の影響を受けたと考えられる.
著者
米山 裕子 佐藤 啓造 九島 巳樹 栗原 竜也 藤城 雅也 水野 駿 金 成彌 佐藤 淳一 根本 紀子 李 暁鵬 福地 麗 澤口 聡子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.326-339, 2016 (Released:2017-02-21)
参考文献数
24

突然死の原因疾患は心疾患や脳血管疾患の頻度が高く,感染症による急死は比較的少ないこともあり,内因性急死としての感染症について剖検例をもとに詳細に検討した報告は少ない.特に,心疾患による突然死と比較・検討した報告は見当たらない.本研究では当教室で経験した感染症突然死15例と心臓突然死45例について事歴や解剖所見を比較・検討した.感染症の死因は肺炎9例,肺結核4例,胆嚢炎1例,膀胱炎1例であり,性別は男8例,女7例であった.心臓突然死では虚血性心疾患23例,アルコール性心筋症11例,その他の心疾患11例であった.感染症突然死と心臓突然死について単変量解析を行うと,有意な因子として,性別 (男性:女性,感染症8:7,心臓38:7),るい痩 (感染症9/15,心臓13/45),眼結膜蒼白 (感染症12/15,心臓9/45),心肥大 (感染症3/15,心臓34/45),心拡張 (感染症1/15,心臓23/45),豚脂様凝血 (感染症14/15,心臓10/45),暗赤色流動性心臓血 (感染症11/15,心臓44/45),心筋内線維化巣 (感染症4/15,心臓37/45),肺門リンパ節腫脹 (感染症13/15,心臓10/45),諸臓器うっ血 (感染症6/15,心臓36/45),胆嚢膨隆 (感染症11/15,心臓15/45),胃内空虚 (感染症11/15,心臓16/45),感染脾 (感染症8/15,心臓1/45)が抽出された.有意差がなかった項目は,肥満,死斑の程度,諸臓器溢血点,卵円孔開存,肺水腫,脂肪肝,副腎菲薄,動脈硬化,胃粘膜出血,腎硬化であった.多変量解析では,眼結膜蒼白,豚脂様凝血,心筋内線維化巣,心肥大の4因子が感染症突然死と心臓突然死とを区別する有意因子として抽出された.眼結膜蒼白,豚脂様凝血の2項目が感染症突然死に,心筋内線維化巣,心肥大の2項目が心臓突然死に特徴的な所見であると考えられた.死に至る際,血液循環が悪くなると眼結膜にうっ血が生じるが,心臓突然死の場合はうっ血状態がそのまま観察できるのに対し,感染症による突然死では慢性感染症の持続による消耗性貧血を伴う場合があり,うっ血しても貧血様に見える可能性がある.豚脂様凝血は消耗性疾患や死戦期の長い死亡の際に見られることが多い血液の凝固である.死後には血管内で徐々に血液凝固が進行し,暗赤色の軟凝血様となり,血球成分と血漿成分に分離し,その上層部には豚脂様凝血が見られる.剖検時に眼結膜蒼白,豚脂様凝血の所見があれば感染症による突然死を疑い,感染症の病巣の検索とその病巣の所見を詳細に報告すべきと考えられた.感染症突然死では,るい痩が高頻度に見られたので,感染症突然死防止のためには日頃からの十分な栄養摂取が必要と考えられた.また,感染症突然死と心臓突然死両方で副腎菲薄が見られたので,突然死防止のためには3次元コンピュータ連動断層撮影(computed tomography:CT)による副腎の容積測定を健診で行い,副腎が菲薄な人では感染症の早期治療が肝要であることが示唆された.
著者
山内 敏正 神谷 英紀 宇都宮 一典 綿田 裕孝 川浪 大治 佐藤 淳子 北田 宗弘 古家 大祐 原田 範雄 幣 憲一郎 城尾 恵里奈 鈴木 亮 坊内 良太郎 太田 康晴 近藤 龍也 日本糖尿病学会コンセンサスステートメント策定に関する委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.91-109, 2020-03-30 (Released:2020-03-30)
参考文献数
158
被引用文献数
1

「糖尿病診療ガイドライン」は,エビデンスに基づく糖尿病診療の推進と糖尿病診療の均てん化を目的とし,3年ごとに改訂され刊行されている.「糖尿病診療ガイドライン」の策定は然るべきプロセスを踏まえる必要があり,糖尿病診療に必要なアップデート事項を毎年ガイドラインとして刊行することは困難である.そこで,日本糖尿病学会として,今後はアップデート事項を適宜コンセンサスステートメントとして刊行していくことを決定した.そのため,日本糖尿病学会理事会の下に,事務局長,事務局長代行並びに幹事からなる「コンセンサスステートメント策定に関する委員会」を設置し,本委員会が中心となって,アップデートの必要なテーマの選択とその執筆者を選び,理事会の承認を得た後に執筆を行った.本コンセンサスステートメントについては,全理事が査読者を務めた.また,他学会ガイドラインとの整合性の観点から,関連学会に外部評価もお願いした.本コンセンサスステートメントは,我が国における糖尿病診療に関する考え方について,テーマごとにできうる限り新しいエビデンスを含め,我が国の専門家間でのコンセンサスが得られた見解を取り纏めたものとご理解いただき,最善の糖尿病診療を行う上で活用していただきたい.糖尿病患者数は世界のどこよりも急速にアジア地域で増加しており,世界の糖尿病人口の3分の1はこの地域に集中していることから,我が国からコンセンサスステートメントをタイムリーに示していくことは,極めて重要な意義を有することと考えられる.今後,英語版の刊行も予定している.今回は,その第1報として,「糖尿病患者の栄養食事指導」をテーマにコンセンサスステートメントを作成した.我が国における糖尿病患者に対する栄養食事指導の考え方やその指導について,アップデートが必要なフォーカスすべき4つの内容(目標体重および総エネルギー摂取量の設定,炭水化物の摂取量,タンパク質の摂取量,管理栄養士による栄養食事指導)で構成している.主に糖尿病の管理を目的としたものであるが,タンパク質の摂取量においては,糖尿病性腎症やサルコペニア,高齢者の場合に関しても言及している.コンセンサスステートメントは,今後も糖尿病診療について適宜アップデートが必要なテーマを選び,できうる限り最新のエビデンスを盛り込みながら定期的に刊行していく.コンセンサスステートメントが,我が国での糖尿病診療の向上に貢献することを期待するとともに,新しいエビデンスを加えながら,より良いものに進化し続けていくことを願っている.
著者
臼田 慎 河奈 裕正 加藤 仁夫 城戸 寛史 佐藤 淳一 式守 道夫 関根 秀志 高橋 哲 藤井 俊治 矢島 安朝 瀬戸 晥一
出版者
公益社団法人 日本顎顔面インプラント学会
雑誌
日本顎顔面インプラント学会誌 (ISSN:1347894X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.89-100, 2017-08-25 (Released:2018-12-25)
参考文献数
2

目的:インプラント手術に関する重篤な医療トラブルは,社会問題とも言われている.そこで日本顎顔面インプラント学会では関連施設でのアンケート調査を行い,2009年1月より2011年12月末までを対象とした前回調査結果との比較検討を含めて報告する. 方法:本学会認定118施設の2012年1月1日より2014年12月末日までの3年間におけるインプラント手術関連の重篤な医療トラブルのアンケートを回収し分析した. 結果:回収率は89.0%で3年間の合計発生件数は360件であった.主な発生項目は上顎洞炎73件(20.3%),次いで下歯槽神経損傷68件(18.9%),3番目が上顎洞内インプラント迷入67件(18.6%),4番目が心身医学的障害45件(12.5%),5番目がオトガイ神経損傷33件(9.2%)であった. 結論:トラブル発生件数は前回調査の471件から360件と減少した.発生項目の上位5項目は前回調査と順序が異なるものの同じ項目であった.
著者
浅香 卓哉 坂田 健一郎 竹川 英輝 羽藤 裕之 鎌口 真由美 大賀 則孝 佐藤 淳 山崎 裕 北川 善政
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.500-506, 2019-08-20 (Released:2019-10-21)
参考文献数
28

Glossodynia is defined as a burning sensation on the tongue without any systemic or local cause. Although its pathophysiology remains unclear, it has been associated with neuropathic, nociceptive, and psychogenic pains. In Japan, difficulties are encountered in the treatment of glossodynia as prescribed medications are not covered by health insurance. Recently, a traditional Chinese medicine treatment (kampo), rikko-san (TJ-110), has been suggested to be useful for glossodynia. The objective of this retrospective study was to evaluate the efficacy of rikko-san gargling in patients with glossodynia. In total, 221 patients with glossodynia who were treated by rikko-san gargling between 2012 and 2018 were examined. Of these, 90 patients (seven men, 83 women; mean age, 67 years) who were treated by gargling with rikko-san dissolved in water for >1 month and no other medications were included. Tongue pain was assessed using a visual analog scale (VAS). Improvement was defined as at least a 50% reduction in the VAS score after treatment compared with that before treatment. The associations between the efficacy of rikko-san gargling and factors such as age, disease duration, pain area, and psychiatric disorders were evaluated. Improvement was noted in 60% of the patients (54/90) ; the mean administration period to the end of treatment in the improvement group was approximately 5 months. There was no significant correlation between the aforementioned factors and the efficacy of rikko-san gargling. Treatment in 41 patients was completed with rikko-san gargling alone, whereas 40 patients required additional treatment such as another kampo medicine or ethyl loflazepate. No side effect was observed in any patient, although stomatitis was noted in one excluded case. The mechanism underlying rikko-san’s delivery pathway is distinct from that of selective serotonin reuptake inhibitors, benzodiazepines, and nonsteroidal anti-inflammatory drugs. We speculated that saishin (Asiasarum root), one of the major components of rikko-san, may reduce peripheral stimulation to the tongue surface through its anesthetic effect. In addition, the transmucosal actions of other components in rikko-san may influence various receptor-related neuropathic pains. In conclusion, rikko-san gargling is efficacious and safe for the treatment of glossodynia.
著者
山神 彰 山田 武宏 北川 善政 大廣 洋一 佐藤 淳 石黒 信久 今井 俊吾 小林 正紀 井関 健
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.254-261, 2019-05-10 (Released:2020-05-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 4

Third-generation oral cephalosporins are broad-spectrum antimicrobial agents and constitute one of the most used antibiotic classes in Japan. In the “National Action Plan on Antimicrobial Resistance (AMR),” the Japanese government declared implementation of efforts to reduce the use of oral cephalosporins by 50% by 2020, compared to 2013. Antimicrobial resistance generally occurs due to inappropriate use or low-dosage exposure to antibiotic agents. Therefore, the choice of appropriate antibiotics is essential for implementing antimicrobial stewardship. To evaluate the prophylactic effects of antibiotics in impacted mandibular third molar surgery, we compared the rate of surgical site infection (SSI) in patients who were administered cefcapene-pivoxil (CFPN-PI) orally with that in patients who received amoxicillin (AMPC) orally. We conducted a retrospective study by reviewing the medical charts of patients from Hokkaido University Hospital from April 2016 to March 2017. The patients evaluated were classified into two groups: the AMPC group (n = 164) and the CFPN-PI group (n = 129). The SSI ratio of the CFPN-PI group was significantly higher than that of the AMPC group (CFPN-PI group, 11.6% (15/129); AMPC group, 2.4% (4/164); P = 0.002). Multivariate logistic regression analysis demonstrated that “use of CFPN-PI for prophylactic treatment” and “hospitalization after surgery” were independent factors related to the onset of SSI following impacted mandibular third molar surgery. These results demonstrated that AMPC was more effective than CFPN-PI in the prevention of SSI after impacted mandibular third molar surgery, and its regulated dosage can effectively contribute to the optimal use of antimicrobial prophylactic treatment.
著者
鈴木 仁 佐藤 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

私たちはハツカネズミ(Mus musculus)の進化史理解のため、第8染色体上の毛色関連遺伝子Mc1rを含む近隣7遺伝子のハプロタイプ構造の解析を行った。その結果、3亜種グループの中東・インドにおける自然分布域を特定するとともに、インド亜大陸内の亜種castaneusが空間的に2系統存在することを明らかにした。また、歴史的放散前に亜種内、亜種間の遺伝的交流が存在したことも判明した。さらに。この遺伝子領域のうち、Mc1rにおいて塩基多様性のレベルの著しい低下があり、選択的スイープ現象の存在が示唆され、Mc1r遺伝子への自然淘汰の関与があったと考えられた。
著者
佐藤 淳一
出版者
The Japan Association of Sandplay Therapy
雑誌
箱庭療法学研究 (ISSN:09163662)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.5-16, 2013

心理療法において「死と再生」の象徴過程は心の変容過程として重要なものである。しばしば「死と再生」の概念は,死の体験の後に再生が訪れるという面が注目されがちであるが,そのような過程に必ずしも当てはまらない事例も存在している。そこで本論文は,被虐待経験のある中学生男子との遊戯療法過程を報告し,「死と再生」の概念の再検討を行った。クライエントは自らを「悪」と同一化し,セラピストとの間で激しいちゃんばらを繰り広げ,何度も「死と再生」を演じた。また,動物や人形のフィギュアを箱庭の砂の中に埋める遊びを繰り返した。セラピー過程が進むと,箱庭に墓を立てたり十字架を投げ合うなどして,「死」を弔い,魂を鎮める儀式が行われた。本事例から,「死と再生」のプロセスは,死の体験の後に再生が訪れるというものではなく,むしろ「再生の死」,あるいは「死の再生」という過程が繰り返されること,そしてそのプロセスは弔いや鎮魂のイメージによって完遂されることが示唆された。
著者
根本 紀子 佐藤 啓造 藤城 雅也 西田 幸典 上島 実佳子 米山 裕子 渡邉 義隆 佐藤 淳一 栗原 竜也 長谷川 智華 浅見 昇吾
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.615-632, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
24

不妊治療を含めた生殖に関わる医療を生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)と呼ぶ.第三者が関わるART〔非配偶者間人工授精(artificial insemination with donor's semen:AID),卵子提供,代理出産など〕には種々の医学的,社会的,倫理的問題を伴うものの,規制もないままなしくずし的に行われつつある.第三者の関わるARTについて国民の意識調査を実施した報告は少数あるが,大学生の意識調査を行った研究は見当たらない.本研究ではある程度の医学知識のある昭和大学医学部生と一般学生である上智大生を対象として第三者が関わるARTに対する意識調査を行った.アンケートに答えなくても何ら不利益を被ることのないことを保証したうえでアンケート調査を行ったところ,医学部生235名,上智大生336名より回答を得た(有効回収率94.5%).統計解析は両集団で目的とする選択肢を選択した人数の比率の差をχ二乗検定またはFisherの直接確立法検定で評価し,P<0.05を有意水準とした.第三者の関わるARTの例としてAID,卵子提供,ホストマザー型(体外受精型)代理出産,サロゲートマザー型(人工授精型)代理出産を取り上げ,その是非を尋ねたところ,医学生と一般学生で有意差は認められなかったものの,前3者については両群とも70%以上の学生が肯定的な意見を示したのに対し,サロゲートマザー型代理出産については両群とも40%以上の学生が否定的な意見を示した.「自身の配偶子の提供を求められた場合」と「自身あるいは配偶者が代理出産を依頼された場合」の是非については有意に医学生の方が一般学生より抵抗感は少なかった.1999年の一般国民を対象とした第三者の関わるARTについての意識調査では7割から8割の国民が否定的な意見を述べたことに注目すると,この十数年間で第三者の関わるARTについての一般国民の考え方も技術の進歩と普及に伴い,かなり変化したといえる.今回,これからARTを受けることになる可能性のある若い世代に対する意識調査でAID,卵子提供,ホストマザー型代理出産について肯定的な意見が多数を占めたことは注目すべき結果といえる.本稿では上記三つのARTはドナーや代理母の安全を確保したうえで法整備を進めるべきであると提言したい.また,サロゲートマザー型代理出産は代理母に感染などの危険があるうえ,社会的,倫理的問題を多く伴うので,規制することも視野に入れたうえで法整備を進めるべきと考える.なお,第三者の関わるARTの実施に当たってはARTに直接関与しない専門医によりARTを受ける夫婦およびドナー,代理母に対し,利点,欠点,危険性が十分説明されたうえで当事者の真摯な同意を法的資格を有するコーディネーターが確認したうえでの実施が望まれる.ARTに関する法律が存在しない現在,医学的,倫理的,法的,社会的に十分な議論をしたうえでの一日も早い法整備,制度作りが望まれる.
著者
佐藤 淳一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.203-210, 2005-08-25 (Released:2010-07-16)
参考文献数
44
被引用文献数
5 2

The purpose of this study was to construct Jung's Psychological Types Scale (JPTS), and to examine its reliability and validity. First, 87 pairs of items were written, and their content validity examined by two Jungian analysts, who judged 74 pairs of them to be appropriate. In Study 1 542 undergraduates, 245 men and 297 women, responded to the interim scale. Exploratory factor analysis found three factors: extraversion-introversion (E-I), thinking-feeling (T-F), and sensation-intuition (S-N). Results of additional factor analyses indicated that the three factors were almost orthogonal. Then, nine item pairs each for the subscales were selected for the JPTS. The scale had high alpha and test-retest reliability coefficients. In Study 2, concurrent validity of the scale was examined in terms of Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) Form M. The correlations showed meaningful patterns for concurrent validity. In addition, the scale was evaluated in terms of NEO Five Factor Inventory (NEO-FFI), a five-factor model (FFM) scale. The result showed that the three factors of E-I, T-F, and S-N corresponded to Extraversion (positive), Agreeableness (negative), and Openness (negative) of NEO-FFI, respectively.
著者
上田 博唯 小林 亮博 佐竹 純二 近間 正樹 佐藤 淳 木戸出正継
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.87-97, 2006-01-15
被引用文献数
10

ユビキタス環境における対話型ロボットインタフェースの対話戦略を提案する.近い将来,ユビキタス環境は多種多様なホームサービスをユーザに提供すると期待されている.しかし,サービスの複雑化・多機能化にともない,用意されたすべてのサービスをユーザが把握することは困難となる.そこで,この課題を解決するために,ユーザの状況理解を補助し,サービス実行のきっかけとなるユーザ発話を誘導することができる,連想しりとり型対話戦略を提案する.この対話戦略は,ユーザが何気なく発話したキーワードをもとに関連する知識をしりとり的にユーザに提供することで,サービスのきっかけとなる発話をユーザから誘導する.ロボットは木構造で表現された知識を持ち,関連のあるキーワードを連想する.音声対話システムを試作し,対話のみを行う評価実験と実際にユビキタス型住宅での生活実験の中での評価実験を行った結果,連想しりとり型対話戦略の正当性を確認することができた.This paper presents a new dialog-strategy for an interactive robot interface in home network (so-called ubiquitous environment). In this environment the users can receive more intelligent services provided by many networked appliances. However it becomes more difficult for users to understand the whole services. In this paper we propose the associative shiritori dialog strategy. An interactive robot continuously tries to obtain a keyword that triggers the service through the shiritori like word game the conversation with the user. In this dialog-strategy, the interactive robot has the tree-structured knowledge that consists of keywords that are associated with the real world and services. Using this tree-structured knowledge, the robot chooses a matched keyword in the user's previous talked sentence. Then the robot construct the next utterance by using the tree-structured knowledge. By this mechanism, the robot can obtain the user's needs while the user feels that he/she has a natural conversation with the robot. We developed an interactive robot dialog system to evaluate our proposed strategy. Through the experiment, the robot showed its ability to obtain proper key words that trigger the meaningful services.