著者
高木 久史
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.469-485, 2009-01-25 (Released:2017-07-22)

日本中世における債権・債務・信用一般に関する実証分析は少ない。本稿では信用の中でも商業上の信用の問題,具体的には掛取引について論じる。方法としては,非経済的側面との関係(例えば政治史)に触れながら,中世後期とくに15世紀から17世紀初頭にかけての掛取引の事例検出,とくに16世紀前半を中心とした事例検出を行い,時代的特徴を示す。とくに中世後期については徳政に関する事例とそれ以外とに分けて論じる。結果,徳政にかかる売掛金の扱いに関する商人慣習法の存在と幕府徳政令によるその追認,一方での各徳政令における売掛債権破棄志向(戦争等を契機とする債務者救済の特別措置によるもの)等を示す。実態面では,高額・長距離掛取引の実施,支払期日観念ならびに期日超過に伴う利子支払特約の存在,売掛債権の文書化,年市的性格をもつ京都馬市での掛取引の実施,当事者相互の売掛金の持ち合い,国質・所質名目での売掛金取立の実施(とそれを拒否する動向),等について示す。全体としては,概して遅くとも15世紀後半以後における掛取引の広範な実施,ならびに近世初頭までの継続的な実施を示す。
著者
佐藤 れえ子 山岸 浩之 内藤 善久 村上 大蔵 大島 寛一 高木 久 藤田 茂 佐々木 重荘
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.46, no.7, pp.577-581, 1993-07-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
14
被引用文献数
6 11

1990年5~7月. キャットフードによるビタミンD中毒が疑われた猫4頭について, 血中ビタミンD代謝産物濃度とキャットフード中のビタミンD含有量を測定し, 石灰沈着との因果関係を追究した. また, 4頭の実験猫を用いてそのキャットフードによる給与試験を実施した. 全症例は同一市販キャットフードを主体に飼育され, 症例1と2は尿毒症に陥っていた. 血漿Ca濃度は症例1の初診時を除き全症例で11mg/dl以上を, また25 (OH) D濃度は100ng/ml以上を呈した. 死亡例では全身性の石灰沈着が著明に認められ, 上皮小体の萎縮が観察された. いっぽう, キャットフード中のビタミンD含有量は5, 290IU/100gと異常な高値を示し, キャットフードの給与試験では給与開始後血漿25 (OH) D濃度は著しく上昇しCa濃度も増加した.
著者
森 陵一 小高 鐵男 添田 聡 佐藤 淳 柿野 淳 浜戸 祥平 高木 久 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1223-1229, 2005-12-25
被引用文献数
2 32

若い大型動物の中には, 葉状骨(laminar bone)で長骨を形成し, 成長に伴い, ハバース骨に置換されることが知られている.今回は, 若いウシ, ブタ, ヒツジの脛骨を, 走査電顕による反射電子像で観察した.ウシの新生子と1ヶ月齢は典型的な同心円状の葉状骨を示し, ブタの新生子と1ヶ月齢は葉状骨による網目状構造を示した.ヒツジの新生子はウシに類似し, それらの骨量の形成速度は, 6ヶ月齢までは同様で, ブタよりは高比率を示した.ウシの骨単位は6ヶ月齢で最内層に少数現れ, 1歳齢では外層に葉状骨が残存するものの骨全体に現れていた.ブタの6ヶ月齢は最外層を除き, 多量の骨単位が観察された.ヒツジの6ヶ月齢に骨単位は認められず, 1歳齢では中層に限り少量観察されたが, その量はウシよりも高比率を示した.ヒツジの1歳齢ではウシと比べ, 骨単位の広い骨吸収領域が観察され, ヒツジの骨量は6ヶ月齢から1歳齢にかけて減少した.その結果, 1歳齢のウシは, ヒツジよりも高い葉状骨の割合を保持し, ブタは, 最も速い骨単位による骨改造を示した.今回観察した3種の成長過程における長骨の組織像と骨量の相違は, 同一の科(ウシとヒツジ)では, 体重や体高の違いに起因し, 科が異なるブタは, 前者と比べ多産系で, 幼体期に母体への依存度が高いためかもしれない.言い換えると, ブタの骨量の低さは歩行の遅さを強く示唆する.また, それぞれの動物間で, 骨単位の初期形成の部位が異なることが推察されたが, この, 点と骨改造の正確な開始時期は, 今後, 連続的な経齢変化を追って検討する必要がある.
著者
高木 久之 北田 敏廣
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.827-846, 1994-12-31
被引用文献数
10

ドップラーソーダデータによって得られた乱流運動エネルギーの鉛直分布を1次元k-ε乱流モデルを用いて再現することを試みた.その過程を通じて,ε方程式中のモデルパラメータ値に対する検討及び,乱れの運動エネルギーの水平方向移流効果の影響についても考察した.混合層高度が大きく風速の弱い条件では鉛直1次元k-ε乱流モデルによる計算結果とドップラーソーダの観測結果はよく一致した.また,ε方程式中の浮力項を制御するモデルパラメータを変えた計算結果とドップラーソーダの観測結果との比較では,安定成層においても浮力効果を反映させた方が観測結果により近い値を示すことがわかった.海風通過後の水平風速が強い場合は水平方向移流効果を無視することはできず,観測結果を再現するには水平方向移流過程がkの保存式中に必要であった.
著者
高木 久 福田 俊 飯田 治三 佐藤 淳 佐藤 れえ子 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.311-316, 1996-04-25
被引用文献数
4

ビタミンAD_3E(V-AD_3E)の合剤, ビタミンA(V-A)あるいはビタミンD_3(V-D_3)の単剤を哺乳期の子牛へ生後7日齢から10日間大量経口投与し, 牛ハイエナ病の発症試験を実施したところ, V-AD_3E剤(日量V-A 300万I.U., V-D_3 30万I.U., V-E1, 200I.U.)を投与したV-AD_3E群(2頭中2頭), その半量を投与したHalf V-AD_3E群(2頭中1頭), およびV-A 300万I.U.を投与したV-A群(2頭中1頭)の計4頭に発症が認められたが, V-D_3 30万I.U.を投与したV-D_3群では観察されなかった. 発症子牛では, V-Aの過剰を示す血中のエステル型のV-A(レチニルパルミテート)が高値を示し, 長骨の成長軟骨板は狭窄や構造の変性などを示した. V-AD_3E群はV-A群と比較して, 発症年齢が早く, 体重増加率の低下および後肢だけでなく前肢の成長不全も重度であった. 以上, 牛ハイエナ病は, 子牛の成長軟骨板に対する過剰なV-Aの作用により発症し, さらにV-D_3によって発症が促進されるものと推測された.