著者
尾崎 昭弘 今井 賢治 伊藤 和憲 向野 義人 白石 武昌 石崎 直人 竹田 太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.779-792, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
著者
尾崎 昭弘 高田 外司 浦山 久嗣 熊本 賢三 榎原 智美 坂口 俊二
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.727-741, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23

背部の経穴位置決定の基準とされ、歴史的にも論議が繰り返されてきた「大椎」の経穴位置に焦点を絞りシンポジウムを行った。シンポジストからは、 (1) 経穴の位置は、時代や文化と共に治療対象・治療目的・治療用具によって変化していることから、「大椎」の位置が第2頸椎棘突起上部、第6・7頸椎棘突起間、第7頸椎・第1胸椎棘突起間と変遷してきたのも例外ではないとする見解、 (2) 背部取穴法の基準点である「大椎」の位置が異なると、臨床的価値が無意味なものになるので第6・7頸椎棘突起間に統一すべきであるとする見解、 (3) 頸椎のなかで体表臨床学的に重要なのは第6頸椎であり、運動性と脊椎の区分という点では第7頸椎であるが、鍼灸の発達してきた過程を考えると「大椎」の位置は臨床的効果から決めるのが合理的であるとする見解、 (4) 第7頸椎・第1胸椎棘突起間を国際標準化案として作成しているが、この位置については中国・韓国共に異論がないので現行のままで良いとする見解、が寄せられた。本シンポジウムでは、統一見解をみるには至らなかったが、「大椎」は臨床的にも重要な意義を有しており、今後に検討が必要である。
著者
真鍋 立夫 尾崎 昭弘
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.498-509, 2003-08-01 (Released:2011-08-17)

高齢化社会にまっしぐらの日本です、これからは、ますます鍼灸療法のニーズがたかまって行くことでしょう。そこで、鍼灸療法が真に国民に愛されるようになるためには、「どこに行ってだれに治療してもらっても、一定の水準の鍼灸療法を、あたりまえに受けることができる。」これを目標に、個々の鍼灸師が自らの資質と技術の向上につとめなければなりません。それにもまして、まず「痛く無いバリ」をさせてもらうことをこころがけ、国民の鍼治療に対する不安感、恐怖感を取り去り、患者さんの皆さんが、安心して喜んで、気持ち良く治療を受けてもらえるように、我々全員が努力しなければなりません。そのためには、伝統的日本風の細い針による繊細な鍼灸療法の技術を研鑛し、鍼灸療法を単なる刺激療法に終らせること無く、真の鍼灸療法とは、経絡、経穴を通して体表に補潟というテクニックを行って、体内の生命維持システムに呼びかける体表情報操作医療であるということを、「鍼灸のグローバルスタンダード」として、いまこそ、日本から世界に向けて発信しなければならないのではないでしょうか。私は、長年の鍼灸臨床経験を通して、身体に全く鍼を刺さなくても、臨床効果を得ることが出来ることを知りました。また、それをバイデジタルオーリングテスト (以後BDORTと記す) によって証明することも出来ました。私は体表に鍼を刺すのでは無く、一定の方向に鍼を貼付することによって臨床効果を出すことに成功しました。鍼を刺さないために、全く痛く無いその鍼灸療法のテクニックを「方向鍼」と呼び、そのために用いる独自のアイテムである鍼を、Vector Effect Needle [VEN] (方向針) と命名して、このたびの講演を機会に皆様に紹介したいと思います。