著者
尾崎 昭弘 今井 賢治 伊藤 和憲 向野 義人 白石 武昌 石崎 直人 竹田 太郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.779-792, 2006-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
39
被引用文献数
1

「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
著者
田口 敬太 石崎 直人 蘆原 恵子 伊藤 和憲 福田 文彦 下村 伊一郎 林 紀行 前田 和久 伊藤 壽記
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.489-497, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
23

糖尿病性神経障害を有する患者に対する鍼治療の効果について検討した.治療は,1週間に1回の頻度で合計7回の鍼治療を行った.初回は置鍼のみとし,2診目からは低周波鍼通電治療を15分間行った.治療部位は下腿に位置する経穴,陽陵泉(GB 34)―太衝(LV 3),陰陵泉(SP 9)―太渓(KI 3)の計4箇所とし,左右に行った.1診目のしびれの平均VASは46.4 mm(95 %CI;36.7-56.1 mm),8診目のしびれの平均VASは24.7 mm(95 %CI;14.5-34.9 mm)であった.鍼治療前後でしびれの自覚症状に有意な改善が認められた(-22.0,95 %CI;10.6-33.5,p=0.001).また,2診目と8診目のこむら返りの回数についても鍼治療を行ったことでこむら返りの回数に有意な改善が認められた(Wilcoxonの符号順位和検定 p=0.045).以上のことから,鍼治療は副作用も少なく,一定の効果が期待できる為,糖尿病性神経障害を有する患者の治療法の一つとして有用な手段となりうることが示された.
著者
廣田 里子 伊藤 和憲 勝見 泰和
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.68-75, 2006-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
14

【目的】慢性腰痛に対してトリガーポイント治療が有用であるとする報告はあるが、圧痛点治療との効果の違いは詳細に検討されていない。そこでトリガーポイント治療と圧痛点治療の効果の違いを明らかにするために慢性腰痛患者9例を対象に比較試験を行った。【方法】6か月以上の腰痛を訴える65歳以上の患者を対象とした。患者を組み入れ順にトリガーポイント治療群と疼痛局所に存在する圧痛点への治療 (圧痛点治療群) に振り分け、5回 (週1回) の治療を行い、1か月後に追跡調査を行った。評価項目は腰部の主観的な痛み (Visual Analogue Scale : VAS) 及びquaity of life (QOL) の把握 (Roland-Morris Disability Questionnaire : RDQ) とした。【結果】トリガーポイント治療群ではVAS・RDQともに有意な改善を認めた。圧痛点治療群では改善は有意ではなく、トリガーポイント治療群の改善のほうが顕著であった。【考察と結語】圧痛点治療よりトリガーポイント治療の方が顕著にVAS・RDQの改善がみられ、治療効果に相違がみられた。このことからトリガーポイントは治療効果の点からも単なる圧痛点とは異なるものと考える。
著者
伊藤 和憲 齊藤 真吾 佐原 俊作 内藤 由規
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.1294-1296, 2012 (Released:2012-11-29)
参考文献数
6
被引用文献数
1

There is some evidence for the efficacy of acupuncture and moxibustion treatment in symptoms of neurology (pain, anxietas, depression and motor ability), but the mechanisms of acupuncture and moxibustion remain unclear. We examined the remediation mechanisms of acupuncture and moxibustion on symptoms (pain, anxietas, depression and motor ability). Some of papers reported that the serotonin and dopamine was increased in brain by the acupuncture and moxibustion. In addition, the treatments of acupuncture and drug reported less depression intensity than the drug only. These results suggest that the serotonin and dopamine in brain was improved by the acupuncture and moxibustion, and acupuncture and drug therapy may be more effective on symptoms (pain, anxietas, depression, motor ability) than drug therapy.
著者
宮本 直 伊藤 和憲 越智 秀樹 山田 充彦 大橋 鈴世 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.384-394, 2009 (Released:2010-01-20)
参考文献数
18
被引用文献数
2 2

【目的】変形性膝関節症 (以下、 膝OA) に伴う運動機能と痛みに対し、 鍼刺入深度の違いが及ぼす効果を検討した。 【対象】膝OAと診断された患者のうち研究条件に適合した患者26名。 【方法】コンピュータによりA) 浅刺群 (3mm前後の刺入)、 B) 深刺群 (10~20mm刺入) の2群に分類し、 下肢の圧痛点10ケ所に対して10分間の置鍼を行った。 【評価】膝痛の主観的な評価としてvisual analogue scale (VAS) を、 運動機能の客観的な評価としてTimed Up & Go test、 20m歩行時間、 階段昇降時間を、 膝OAのQOL評価としてWestern Ontario and MacMaster Universities osteoarthritis index (WOMAC) をそれぞれ4週ごとに計4回記録した。 【結果】痛みの程度は両群ともに治療前と比較して有意に改善したが (p<0.05)、 客観的な運動機能はすべての測定項目において、 治療前と比較して浅刺群のみ有意に改善した (p<0.05)。 【結語】浅刺は痛みと運動機能を改善しQOL向上に寄与したことから、 膝OAの症状に対する、 より効果的な治療方法である可能性が示唆された。
著者
伊藤 和憲
出版者
明治国際医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

【目的】エストロゲンが筋肉の痛みや慢性化にどのように影響しているか検討を行った。【方法】実験1:無処置のラット24匹を性周期ごとに4群(各6匹)にわけ、皮膚表面の閾値をvon Frey test [VFT]で、また筋肉の閾値をRandall-Selitto test [RST]で測定した。なお、各ラットは閾値測定終了後に血液を採取し、血中エストロゲン量も調べた。実験2:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン(20%)補充群(n=6)に分け、運動負荷を行った時の変化を観察した。実験3:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン補充群(n=6)に分け、運動負荷を行う腓腹筋の大腿動・静脈の血流を遮断した上で運動負荷を行った時の閾値変化を調べた。実験2・3ともに、経時的な閾値測定と、負荷を行った筋肉に鍼電極を刺入して電気刺激したときの筋電図変化を観察した。なお、運動負荷・卵巣摘出・閾値測定は昨年と同様である。【結果】実験1では性ホルモンと各閾値の関係は明確ではなかったが、血中のエストロゲン量が多いとRSTの閾値のみ低下する傾向にあった。実験2では卵巣摘出後にエストロゲンを補充した群で特にRCTの閾値が低下し、実験3ではエストロゲンを補充した群のみ他の群に比べて長く(2-3週間程度)RST閾値の低下が継続したが、卵巣摘出したのみ群は、雄ラットと同様な経時的変化を示した。一方、筋電図学的な変化に関しては、卵巣摘出群・エストロゲン補充群で違いは見られなかった。【考察】エストロゲンが血中に高濃度に存在するとき筋肉の閾値が低下する傾向があり、また筋肉痛が出現する期間が延長する傾向にあった。このことから、筋肉痛の慢性化には性ホルモン特にエストロゲンの関与が強く、線維筋痛症などの筋肉疾患の予防や治療にエストロゲンを考慮する必要があることが示唆された。
著者
皆川 陽一 伊藤 和憲 今井 賢治 大藪 秀昭 北小路 博司
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.837-845, 2010 (Released:2011-05-25)
参考文献数
18

【目的】鍼治療は、 顎関節症の保存療法としてよく用いられているが、 その多くが咀嚼筋障害を主徴候としたI型の報告である。 そこで今回、 関節円板の異常を主徴候としたIIIa型患者に対して鍼治療を行い、 症状の改善が認められた1症例を報告する。 【症例】19歳、 女性。 主訴:開口障害、 開口・咀嚼時痛。 現病歴:X-1年、 左顎に違和感が出現した。 X年、 口が開きにくくなると同時に開口・咀嚼時の顎の痛みが出現したため歯科を受診した。 診察の結果、 MRI所見などから顎関節症IIIa型と診断され鍼治療を開始した。 【方法】鍼治療は、 関節円板の整位と鎮痛を目的に外側翼突筋を基本とした鍼治療を週1回行った。 効果判定は、 主観的な顎の痛み・不安感・満足感をVisual Analogue Scale(VAS)で、 開口障害を偏位の有無で、 円板・下顎頭の位置や形態の確認をMRIにて評価した。 【結果】初診時、 顎の痛みを示すVASは52mmであり鍼治療を行ったところ、 2診目治療前には痛みの軽減がみられた。 4診目に一時的な症状の悪化が認められたが、 その後も治療を継続することで顎の痛みを示すVASが2mmまで改善した。 一方、 治療8回終了後のMRI撮影では関節円板の転位に著変はないものの運動制限と開口障害の改善がみられた。 【考察】顎関節症IIIa型に対する鍼治療は関節円板の整位はみられないものの転位した関節円板に随伴する症状を改善させる効果を有することが示唆された。
著者
伊藤 和憲 越智 秀樹 北小路 博司
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.331-336, 2004-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14
被引用文献数
1

慢性的に全身の広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感を訴える患者に, 線維筋痛症候群 (FMS) の概念を取り入れた鍼灸治療を試みた。対象は3ヵ月以上広範囲に及ぶ疼痛や倦怠感, さらには不眠や便通症状などの不定愁訴を訴える4症例とし, 自覚的な全身の痛み (VAS) と疼痛生活障害評価尺度 (PDAS) を用いて評価した。その結果, 東洋医学的な病態把握に基づいた鍼灸治療では症状 (VAS・PDAS) に大きな変化は見られなかったが, FMSに効果的とされる鍼通電治療を行うと治療3回後には症状が大きく改善した。このことから, 全身の疼痛や倦怠感を主訴とするような線維筋痛症候群の患者には鍼通電治療が1つの選択肢となる可能性が示唆された。
著者
松平 浩 井上 基浩 粕谷 大智 伊藤 和憲 三浦 洋
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-16, 2013-02-01
参考文献数
47

腰痛症に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 <BR>はじめに西洋医学的な立場から特異的腰痛や非特異的腰痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 腰痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 様々な腰痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は様々な腰痛に対して臨床効果が報告されているが、 特に非特異的な腰痛に対して有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 和憲
出版者
専修大学商学研究所
雑誌
専修ビジネス・レビュー (ISSN:18808174)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.97-107, 2007

バランスト・スコアカードは、戦略マップを策定し、その戦略マップを構成する戦略目標について適切な指標によって管理するマネジメント・システムである。戦略実行として、戦略目標を設定するだけでなく、戦略的実施項目を実施するには多額の支出が必要となる。これらの戦略的実施項目の支出合計は、戦略予算によって制約される。戦略を確実に実行するには、すべての戦略的実施項目を実施しなければならない。ところが、戦略予算あるいはキャパシティに制約があるとき、すべての戦略的実施項目を同時に開始できるとは限らない。ここに戦略的実施項目の優先順位づけが求められる。戦略的実施項目の優先順位付けについては、これまでもいくつか事例紹介されている。本稿ではこれらの優先順位づけ方法の欠点である恣意性を排除する新たな提案を行う。Balanced scorecard is a management system to develop strategy maps and to manage indicators which are a measure of strategic objectives. For implementing strategies, companies have to not only set the strategic objectives, but also develop strategic initiatives for the way to fill a gap ob between targets and actual performances. To execute the strategic initiatives, companies have to prepare number of budget. And the amount of expenditure for caring out the strategic initiatives is constrained by the strategic budget. To attain certainly strategies, companies have to implement all strategic initiatives. However, when companies have the constraint of strategic budget or capacity, they could not implement simultaneously all strategic initiatives. Then these companies have to make a priority of the initiatives. Some authors wrote how to make the priority already. The aim of this paper is to propose new priority.
著者
山田 義照 伊藤 和憲
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.47-57, 2005

本稿は,バランスト・スコアカード(BSC)と方針管理の関係を,戦略の策定と実行の観点から考察する。考察の結果,BSCは戦略実行のために戦略を現場へ落とし込む仕組みが必ずしも確立されていないことが明らかとなった。そこで,戦略的マネジメント・システムを機能させるために,方針展開によって戦略を現場に伝達する仕組みを持つ方針管理とBSCを補完的に連結することを提案している。
著者
松平 浩 井上 基浩 粕谷 大智 伊藤 和憲 三浦 洋
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.2-16, 2013 (Released:2013-06-17)
参考文献数
47

腰痛症に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 はじめに西洋医学的な立場から特異的腰痛や非特異的腰痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 腰痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 様々な腰痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は様々な腰痛に対して臨床効果が報告されているが、 特に非特異的な腰痛に対して有効である可能性が示唆された。