著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 坂口 俊二 森川 和宥
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.529-552, 2002-11-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
41

経穴委員会 (委員長山田鑑照) は米山博久が1952年に発表した「経絡否定論」の意義の大きさに注目した。賛成・反対のいわゆる「経絡論争」が約2年にわたり繰り広げられた。この論争関連と同時期の経絡・経穴についての基礎研究に関する文献を収集して整理・検討し、平成14年6月に開催された第51回全日本鍼灸学会学術大会 (つくば) のワークショップIIIにおいて発表した。これを集約して報告する。
著者
林 智成 鈴木 信 米山 榮 尾崎 朋文 芳賀 康朗
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.411-419, 2011 (Released:2012-02-06)
参考文献数
10

【目的】鍼治療において最も深刻かつ重大な医療過誤である外傷性気胸を回避し、 安全な鍼治療を行う為に胸背部における体壁の厚さを計測し、 過去に行われた同様の報告と比較しする。 また、 身体測定によって得られる測定値の意義と問題点について検討する。 【対象と方法】対象は生体187例 (男性90名, 女性97名) とした。 これを性別及び体格別に分類した後、 Computed Tomography (以下CT) の画像を用いて、 医療用画像処理ソフトOsiriX (ver3.0 32-bit) にて背部における胸壁厚の計測を行った。 【結果】全187例の測定値の平均±標準偏差は、 気管部3.01±0.79cm、 肩甲部2.34±0.65cm、 最短部2.14±0.61cmであった。 なお、 最短部は肋骨角付近における体表から胸膜までの距離が最も短い部位とした。 最小値は最短部の0.94cm、 最大値は気管部の5.56cmであった。 分散分析により部位間の平均値を比較した結果、 全部位の効果に有意差を認めた。 これを性別に検討すると、 男女ともに部位の効果、 および気管部と肩甲部では性別の効果に有意差が認められた。 また、 体格別に検討した結果、 体格の効果、 および部位の効果に有意差を認めた。 BMI値と測定値の間にはいずれの部位においても強い正の相関がみられ、 年齢と測定値との間にはいずれの部位においても弱い負の相関がみられた。 今回測定を行った3部位と経穴との対応では、 概ね、 気管部は膏肓穴、 肩甲部はイキ穴、 最短部は膈関および魂門穴の辺りに相当すると予想された。 【考察】過去の報告および今回の検討では対象の条件に差異があるにも関わらず、 同様の結果が得られたことは、 過去の報告の重要性を改めて確認出来たこととして興味深い。 一方、 身体測定という方法を用いる際の対象は、 より臨床に近い条件に吟味すべきである。 今回の検討では、 体表-胸膜間の最短距離の計測には画像所見が有用であることが示唆された。 一方、 どのように精緻な計測や統計学的処理を駆使しても、 身体計測という方法論においては様々な不確定因子が混入する可能性は残されており、 計測によって得られた測定値を即、 安全な刺鍼深度と捉えることに対しては慎重にしなければならないと考える。 【結論】体壁厚の計測を行い、 安全な刺鍼深度の目安を解剖学的根拠に求めることは、 科学的検討という意味で非常に重要であると考える。 今回の検討と過去の報告の間には様々な測定条件の不一致があり、 単純に比較検討することは困難であったものの、 結果として同様の傾向が示されたことは興味深い。 また、 身体計測を行う際、 実際臨床により近い条件を備えた対象を検討する必要がある。 一方で、 身体計測という方法論においては様々な不確定因子が混入する可能性は残されており、 身体計測の結果得られた測定値を 「安全深度」 ではなく 「危険深度」 と呼称する方が、 むしろ適切であると考える。
著者
尾崎 朋文 森 俊豪 坂本 豊次 竹中 浩司 湯谷 達 米山 榮 松岡 憲二 巽 轍夫 吉田 篤 北村 清一郎
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.413-420, 2002-08-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

遺体解剖と、健康人生体での臨床所見・CT画像より、膏育穴刺鍼の安全深度を検討した。遺体所見では、両膏育穴への刺入鍼は第5肋間に位置し、左側の肋骨の厚さは10mm、体表-胸膜 (肋骨後面) 間距離は44mmであった。健康学生104名の膏盲穴での体表-肋骨前面間距離の最小値は肥満男女以外の体型で14mmであった。標準型・やせ型男性のCT像では、刺入鍼は1側で肋間に、3側で肋骨に達した。肋骨の厚さは各々10.9mm・9.8mm・8.8mmで、体表-胸膜間距離は各々33.6mm・28.4mm・29.4mm・31.8mmであった。以上の結果から、肋骨の厚さと体表一肋骨前面間距離の最小値より勘案すれば、極端なやせ型を除き、19mmまでの刺鍼は、外傷性気胸を起こす可能性は皆無に近く、安全と考えられる。換言すれば、19mm以上の刺鍼では、外傷性気胸を起こす可能性が高まることに留意する必要がある。
著者
尾崎 朋文 森 俊豪 坂本 豊次 于 思 湯谷 達 竹中 浩司 佐藤 正人 米山 榮 前岡 弘子 北村 清一郎
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.103-110, 2000-03-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
29

先天性胸骨裂孔 (以下胸骨裂孔) の出現状況や胸骨の厚さを遺体で調査するとともに、生体での画像所見から、胸骨裂孔の有無および〓中穴での体表から胸骨後面までの距離を調べ、〓中穴への安全刺鍼深度を検討した。その結果、51遺体中の1例に胸骨裂孔が認められた。裂孔は第4肋間の高さにあり、形状はほぼ円形、直径は胸骨外面で9mmで、固い結合組織で埋められていた。21遺体での胸骨の厚さは9-15mmの範囲で平均は11.5±2mmであった。生体31例の〓中穴での体表一胸骨後面間距離は11-31mmの範囲で、平均は18.8±5mmであった。これらの結果から、仮に胸骨裂孔が存在しても、〓中穴への刺鍼では、極端な痩せ型を除いて10mmまでは、刺入鍼が心臓に達する可能性はなく、安全と考えられた。
著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 松岡 憲二 坂口 俊二 王 財源 森川 和宥 森 俊豪 吉田 篤 北村 清一郎 米山 榮 谷口 和久
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-56, 2006-02-01 (Released:2011-03-18)
参考文献数
43

経穴研究委員会 (前経穴委員会) は福岡で開催された第54回全日本鍼灸学会学術大会ワークショップIIにおいて、経絡・経穴について3つの検討テーマを6名の委員により報告した。第1テーマ : 経絡・経穴の解剖学的検討1) 経絡と類似走行を示す解剖構造について (松岡憲二) : 遺体解剖による経絡の走行と神経・血管の走行との類似性についての研究。2) 上肢経絡・経穴の肉眼解剖学的研究 (山田鑑照) : 豊田勝良元名古屋市立大学医学部研究員の学位研究である上肢経絡・経穴の解剖学的研究紹介並びに山田の研究として皮下における皮神経・血管の走行と経穴・経絡との関係についての報告。第2テーマ : 日中における刺鍼安全深度の研究1) 中国における刺鍼安全深度の研究と進展状況 (王財源) : 中国刺鍼安全深度研究で権威のある上海中医薬大学解剖学教室厳振国教授のデータの紹介と最近の中国における刺鍼安全深度研究の進展状況報告。2) 経穴の刺鍼安全深度の研究を顧みて (尾崎朋文) : 尾崎が今まで発表してきた経穴部位の刺鍼安全深度の研究並びに厳振国教授のデータと同じ経穴との比較研究。第3テーマ : 少数経穴の臨床効果の検討1) 少数穴使用による鍼灸の臨床効果 (坂口俊二) : 1~4穴使用による鍼灸臨床効果ついての医学中央雑誌文献の検索・分析。2) 合谷-穴への各種鍼刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響 (森川和宥) : 合谷穴-穴への置鍼刺激、直流電気鍼刺激、鍼通電刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響についての研究。
著者
上島 幸枝 北村 清一郎 巽 哲男 合田 光男 尾崎 朋文 森 俊豪 松岡 憲二 金田 正徳 竹下 イキ子 西崎 泰清 熊本 賢三
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.317-328, 1994-12-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
13

13遺体の26側を用い, 鎖骨, 胸鎖乳突筋, および前頸部下半の4経穴 (気舎, 欠盆, 水突, 天鼎) と, 胸膜頂の体表投影部位との関連を明確にした。胸膜頂の上端は鎖骨より上方 (頭方) に突出した。上端は, 内外方向には胸鎖乳突筋胸骨頭起始部の外側端(CL3)と鎖骨頭起始部外側端(CL5)の間にあり, 上下方向には水突穴より下方 (尾方) で鎖骨頭起始部内側端(CL4)より上方 (頭方) に位置した。胸膜頂の外側端は鎖骨上縁より下方 (尾方) にあった。外側端は, 内外方向にはCL4と欠盆穴の間にあり, 上下方向にはCL5より下方 (尾方) で鎖骨胸骨端上端(CL2)より上方 (頭方) に位置した。胸膜頂の内側端は, 両方向ともにCL2と胸骨上点の間に位置した。一方, 鎖骨より上方 (頭方) に突出する胸膜頂の体表投影域は, 全例で水突穴, 水突穴からおろした垂線と正中線との交点, 胸骨上点, 鎖骨の半肩幅内側1/3 (CL5にほぼ対応) の4点をつなぐ四角領域に含まれた。
著者
上島 幸枝 北村 清一郎 巽 哲男 合田 光男 永瀬 佳孝 尾崎 朋文 森 俊豪 松岡 憲二 金田 正徳 竹下 イキ子 西崎 泰清 堺 章
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.212-220, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14

17遺体を用い, 天突穴, あるいは天突―肩峰間線を基準にした胸膜頂の体表投影部位を調べた。天突―肩峰間線の実長は左右共に平均185mm, 上方への角度は右22度, 左23度, 後方への角度は右が23度, 左が25度であった。右側胸膜頂は, 天突穴を通る前額面上で, 最大限には天突穴の外方0~58mm, 上方へは44mmより下方に存在した。左側ではこれらの値は各々5~58mmおよび49mmであった。一方, 天突―肩峰間線を基準にすると, 胸膜頂はその内側約1/3の範囲に含まれ, 上端は天突穴から約1/4離れた位置で, 最大限にはその上方35 (右) または32mm (左) の高さにあった。
著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 松岡 憲二 坂口 俊二 王 財源 森川 和宥 松下 美穂 吉田 篤
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.353-374, 2009 (Released:2010-01-20)
参考文献数
49

経穴研究委員会として3回目のワークショップを第57回全日本鍼灸学会学術大会 (京都) において開催し、 2つのテーマについて検討し報告した。 第1テーマ (日中における循経感伝現象の研究) 1) 中国における循経感伝現象の文献調査 (王):1979年以降の中国において行われた循経感伝現象の主要な研究についての文献調査。 経絡現象並びに循経感伝現象の定義、 循経感伝現象の特徴とその発現機序について報告する。 2) 良導絡よりみる循経感伝現象 (森川):腎透析患者並びに胃全摘患者における反応良導点出現及び特定部位刺激による反応良導点の出現と針響の出現例を報告し、 反応良導点と循経感伝現象の関係について検討した。 3) 循経感伝現象の発現機序 (山田):鍼灸刺激により知覚神経終末から神経伝達物質が放出される。 この神経伝達物質がリンパ管に吸収されリンパ管平滑筋を刺激して循経感伝現象が起こる。 その伝搬速度、 阻害因子などを踏まえて発現機序について検討した。 第2テーマ (経穴の部位と主治) 1) 環跳穴の解剖学的部位 (尾崎・松岡):環跳穴はWHO主導による経穴部位国際標準化において中国案並びに日本案の両案併記となった。 この両部位において体表に対して垂直方向に刺鍼したときの皮下構造から考えられる臨床効果について比較検討した。 2) 環跳穴の部位・主治の変遷 (坂口):WHO主導による経穴部位国際標準化において両案併記となった 「環跳穴」 について、 中国と日本の古典を引用し部位と主治の変遷について比較検討した。
著者
尾崎 朋文 北村 清一郎 森 俊豪 竹下 イキ子 西崎 泰清 上島 幸枝 巽 哲男 合田 光男 堺 章
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.185-194, 1989-06-01 (Released:2011-05-30)
参考文献数
9

18遺体の両側で中頸および椎骨動脈神経節の出現率と大きさを調べた。また, 各神経節の椎骨, 天突穴, C6前結節, および輪状軟骨に対する位置, ならびにC6前結節の天突穴と輪状軟骨に対する位置を調べた。中頸神経節は右側で長さ14mm, 幅4mm, 厚さ2mm, 左側で各々14, 5, 2mmで約半数の例に存在した。その位置はほぼ輪状軟骨の高さで, C6前結節の内下方に近接した。中頸神経節の欠如例では, 交感神経幹はC6前結節のすぐ内方を通過した。椎骨動脈神経節は右側で長さ8mm, 幅5mm, 厚さ3mm, 左側で各々9, 5, 2mmで, ほぼ全例に存在した。位置は第7頸椎の高さで, 天突穴の外方15~30mm, 上方20 (左) もしくは25 (右) ~45mmの範囲に多く含まれた。C6前結節は, 天突穴の外方20~30mmで, 男性では輪状軟骨のやや上方, 女性ではほぼその高さに存在した。周囲の解剖構造物を比較すると, 中頸神経節では後方に頸椎横突起が存在するのみで, より安全な刺鍼が可能と考えられた。
著者
山田 鑑照 尾崎 朋文 松岡 憲二 坂口 俊二 王 財源 森川 和宥 森 俊豪 吉田 篤 北村 清一郎 米山 栄 谷口 和久
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-56, 2006-02-01
参考文献数
43
被引用文献数
2

経穴研究委員会 (前経穴委員会) は福岡で開催された第54回全日本鍼灸学会学術大会ワークショップIIにおいて、経絡・経穴について3つの検討テーマを6名の委員により報告した。<BR>第1テーマ : 経絡・経穴の解剖学的検討<BR>1) 経絡と類似走行を示す解剖構造について (松岡憲二) : 遺体解剖による経絡の走行と神経・血管の走行との類似性についての研究。<BR>2) 上肢経絡・経穴の肉眼解剖学的研究 (山田鑑照) : 豊田勝良元名古屋市立大学医学部研究員の学位研究である上肢経絡・経穴の解剖学的研究紹介並びに山田の研究として皮下における皮神経・血管の走行と経穴・経絡との関係についての報告。<BR>第2テーマ : 日中における刺鍼安全深度の研究<BR>1) 中国における刺鍼安全深度の研究と進展状況 (王財源) : 中国刺鍼安全深度研究で権威のある上海中医薬大学解剖学教室厳振国教授のデータの紹介と最近の中国における刺鍼安全深度研究の進展状況報告。<BR>2) 経穴の刺鍼安全深度の研究を顧みて (尾崎朋文) : 尾崎が今まで発表してきた経穴部位の刺鍼安全深度の研究並びに厳振国教授のデータと同じ経穴との比較研究。<BR>第3テーマ : 少数経穴の臨床効果の検討<BR>1) 少数穴使用による鍼灸の臨床効果 (坂口俊二) : 1~4穴使用による鍼灸臨床効果ついての医学中央雑誌文献の検索・分析。<BR>2) 合谷-穴への各種鍼刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響 (森川和宥) : 合谷穴-穴への置鍼刺激、直流電気鍼刺激、鍼通電刺激が皮膚通電電流量に及ぼす影響についての研究。