著者
廣田 良夫 田中 隆 徳永 章二 清原 千香子 山下 昭美 伊達 ちぐさ
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高齢者を対象にインフルエンザワクチンの有効性等を研究した。1997〜1998年のシーズンは流行規模が小さかったため、antibody efficacyの算出を行なった。ワクチン接種後ワクチン株A/武漢(H3N2)に対するHI価≧1:256では、≦1:128に比べてインフルエンザ様疾患(ILI)の発病リスクが0.14に低下した(antibody efficacy:86%)。接種前HI価≦1:128の者が接種後≧1:256に上昇する割合は71%であり(achievement rate)、これらの積(0.86×0.71)からvaccine efficacyは61%と算出された。1998〜1999年のシーズンは流行規模がある程度大きかったので、直接vaccine efficacyを算出することができた。発熱38℃以上のILIについてはウクチン接種の相対危険(RR)は0.74〜0.79、発熱39℃以上のILIについてはRRが0.50〜0.54、ILI発病者(38℃以上)における死亡についてはRRが0.43であった。1999〜2000年のシーズンは、流行を認めなかったので、老人保健施設の入所者を対象に、2回接種による追加免疫の効果を検討した。その結果、追加免疫による良好な抗体獲得は認めなかった。また、同施設の職員を対象に抗体応答を調べたところ、健常成人では追加免疫を行なわずとも、1回接種で抗体獲得は比較的良好である、との結果を得た。また日常生活動作(ADL)が低い者では発病リスクが6倍を超えた。接種後48時間以内に現れた有害事象は、38.0℃以上の発熱を呈した者が0.8〜2%、注射部位の腫れを呈した者が3.2〜4%であった。