著者
土田 満 伊達 ちぐさ 中山 健夫 山本 卓 井上 真奈美 山口 百子 岩谷 昌子 陳 浩 田中 平三
出版者
The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.35-44, 1991 (Released:2010-04-30)
参考文献数
34
被引用文献数
1 1

健康な20歳代男子5人を被験者として, 連続3日間, ナトリウム (Na), カリウム (K), カルシウム (Ca), リン (P), マグネシウム (Mg), 亜鉛 (Zn) の出納実験を行った。この結果に基づいて, 摂取量と糞中, 尿中排泄量または血清中濃度との相関を解析した。1) 出納実験より, Na, K, Pは摂取量の大部分が尿中へ排泄されていた。摂取量に対する尿中への排泄率はNaが85%と最も高く, Pが84%, Kが74%であった。逆にCa, Mg, Znは糞中へ排泄される割合が高く, 尿中への排泄率はCaが38%, Mgは25%と低かった。 Znのそれは7.1%であった。2) 摂取量と糞中排泄量との相関を検討してみると, Kのみが統計学的に有意の正相関を示した。3) 摂取量と尿中排泄量との間には, Na (r=0.974) とK (r=0.891) が統計学的に有意な正相関を示した。4) 各ミネラルの摂取量と血清中濃度との間には, 統計学的に有意な相関関係が認められなかった。5) Na, K, Ca, P, Mg, Znの尿中, 糞中の量, 血清中濃度から各ミネラル摂取量を推定するには, 尿中クロール排泄量からの方法がよく知られている。今回の実験では, これをNa, Kの24時間尿中排泄量から求める方法の有用についても示した。
著者
古川 曜子 田路 千尋 中村 芳子 福井 充 伊達 ちぐさ
出版者
武庫川女子大学
雑誌
武庫川女子大学紀要 自然科学編 (ISSN:09163123)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.59-65, 2005
被引用文献数
2

IT技術を活用した食事調査法が,新しい食事調査法として疫学研究に利用可能かどうかその妥当性と実用性を検討した.妥当性については,本学教員及び学生(女性25名,24.9±7.6歳)を対象として2003年4月下旬から8月下旬に実施した.不連続の2日間を調査日とし,ゴールドスタンダードとして秤量食事記録法(DR)を採用し,デジタルカメラ付携帯情報端末機器法(DC)と同時に実施した.DR法によって全ての飲食物を原則として生状態で秤量し記録した後,飲食物を調理後盛り付けた状態でDCによって撮影し,画像を送信した.両方法の平均値を比較した結果,炭水化物と食物繊維に有意差が認められたが,相関係数は,ナトリウム以外はすべての栄養素等で有意な正相関が示された.DR法は対象者の負担が非常に大きいが,摂取食品を計量する必要がないDC法は,ナトリウム以外は妥当性の高いことが示された.実用性については,都市の男性勤務者(36名,43.2±7.5歳)を対象とした.2003年8月下旬から11月下旬にかけて,1週間のうちに平日を3日間,休日を1日間の合計4日間の食事について,DCを用いて栄養素等摂取量を評価した.対象者36名のうち,1度の調査で4日間の食事を漏れなく撮影できた者は4名しかなかった.残り32名に再調査を行い,最終的に4日間の食事を撮影できたものは22名であった.再調査を行わなければならなくなった原因は,撮影漏れ,撮影ミス,残食撮影漏れ,食品摂取量を推定するための目安である専用ペンを置忘れた状態での撮影,端末不良であった.画像を送信出来なかった原因としては,DC機器の携帯を忘れた,PHSの電波が入らなかった,面倒だった,時間がなかった,人目が気になった,などが挙げられた.DC使用後に実施した質問票では,日常生活上の問題点として,付き合いがしにくい,外食しにくい,旅行しにくい,が挙げられた.本研究の結果より,食事調査法として簡便な方法であると思われたDCが,対象者にとって負担が大きかったと考えられる.個人レベルで平均的な1日の栄養素等摂取量を求めたい場合,DCの複数日の調査は困難であると考えられる.集団の平均値の把握や集団レベルでの比較に利用できる可能性が高いことが示された.
著者
奥田 豊子 梶原 苗美 伊達 ちぐさ 杉本 恭子 力丸 徹 藤田 美明 小石 秀夫
出版者
Center for Academic Publications Japan
雑誌
Journal of Nutritional Science and Vitaminology (ISSN:03014800)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.319-331, 1981 (Released:2009-04-28)
参考文献数
25
被引用文献数
5 7

A nutritional survey was held in August, 1978, at Kalugaluvi (altitude: 1, 500m) near Lufa, which is 60km from Goroka, in the Eastern Highland Province of Papua New Guinea. Anthropometric measurements were carried out on 55 males and 37 females aged from 7 to 64 years. Whereas the physiques of the children looked as good as those of Japanese of a comparable age, the adult men were shorter than Japanese males, but body weight and chest girth were similar. The skinfold thickness was less than that of the Japanese. From the data collected, it was shown that the physique of the Highlanders was more muscular than that of the Japanese. The food intakes and energy balances of 18 healthy men (20-40 years old) were measured over 2 or 3 consecutive days. The average consumption of sweet potatoes, the staple food, was 956±305g per day. The average consumption of taro and yam was 93±124g/day and 36±99g/day, respectively. Various green leaves, sugar canes, corn, bananas and other foods (i.e., rice and tinned fish) purchased from trade stores were sometimes eaten. The mean daily energy intake was 2, 390±540 kcal, which was about the same as the daily energy expenditure. The daily protein intake was 35.2±10.7g. These results are probably exceptionally high, because the survey was unfortunately held during the yearly festival season of the village when the people often ate fatty pork. Nevertheless, it is noteworthy that the growth of children and the physique of adults are normal in spite of the extremely low intake of protein.
著者
赤松 利恵 永井 成美 長幡 友実 吉池 信男 石田 裕美 小松 龍史 中坊 幸弘 奈良 信雄 伊達 ちぐさ
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.110-119, 2012 (Released:2012-04-24)
参考文献数
27
被引用文献数
2 1

【目的】管理栄養士教育の到達度を評価するために作成したコンピテンシー項目のうち,基本コンピテンシーの高い学生の特徴について検討することを目的とした。【方法】2010年12月に管理栄養士養成施設(111施設)に自記式質問紙を送付し,102施設の4年次在籍者より6,895人の有効回答を得た(推定回収率75.7%)。40項目のコンピテンシー(5段階評価,基本4項目,共通29項目,職域別7項目)の他,属性(性・年齢,卒業後の進路状況等)をたずねた。基本コンピテンシー合計得点の10・50・90パーセンタイル値(十分位数,decile)を基準に4群に分け(得点の高い順よりD4,D3,D2,D1),属性,共通・職域別コンピテンシーの得点を比較した。【結果】97.6%が21~25歳であり,90.1%が女性であった。基本コンピテンシーの4群の分布は,D4:662人(9.6%),D3:3,113人(45.1%),D2:2,166人(31.4%),D1:948人(13.7%)であった(欠損6人,0.1%)。基本コンピテンシーの高い群(D4)に比べ,基本コンピテンシーの低い群(D3~D1)で,女性,既卒者,社会人経験者,卒業研究実施者,国家試験受験予定者が少なかった。また,基本コンピテンシーの低い群では,就職内定者が少なく,さらに,管理栄養士を採用条件とする就職内定者が少なかった。共通・職域別コンピテンシーの全ての項目で,基本コンピテンシーの高い群の得点は高かった。【結論】基本コンピテンシーの高い学生の特徴として,卒業研究の実施,国家試験受験の他,就職・進学が内定していることが示された。また,基本コンピテンシーが高い学生は,その他のコンピテンシーも高かった。
著者
廣田 良夫 田中 隆 徳永 章二 清原 千香子 山下 昭美 伊達 ちぐさ
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高齢者を対象にインフルエンザワクチンの有効性等を研究した。1997〜1998年のシーズンは流行規模が小さかったため、antibody efficacyの算出を行なった。ワクチン接種後ワクチン株A/武漢(H3N2)に対するHI価≧1:256では、≦1:128に比べてインフルエンザ様疾患(ILI)の発病リスクが0.14に低下した(antibody efficacy:86%)。接種前HI価≦1:128の者が接種後≧1:256に上昇する割合は71%であり(achievement rate)、これらの積(0.86×0.71)からvaccine efficacyは61%と算出された。1998〜1999年のシーズンは流行規模がある程度大きかったので、直接vaccine efficacyを算出することができた。発熱38℃以上のILIについてはウクチン接種の相対危険(RR)は0.74〜0.79、発熱39℃以上のILIについてはRRが0.50〜0.54、ILI発病者(38℃以上)における死亡についてはRRが0.43であった。1999〜2000年のシーズンは、流行を認めなかったので、老人保健施設の入所者を対象に、2回接種による追加免疫の効果を検討した。その結果、追加免疫による良好な抗体獲得は認めなかった。また、同施設の職員を対象に抗体応答を調べたところ、健常成人では追加免疫を行なわずとも、1回接種で抗体獲得は比較的良好である、との結果を得た。また日常生活動作(ADL)が低い者では発病リスクが6倍を超えた。接種後48時間以内に現れた有害事象は、38.0℃以上の発熱を呈した者が0.8〜2%、注射部位の腫れを呈した者が3.2〜4%であった。
著者
伊達 ちぐさ 田中 平三
出版者
大阪市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

健康な成人男子6名(年齢21〜26歳、身長160〜176cm、体重57〜63.5kg)をバランス・スタディーの対象者とした。食塩以外の栄養素は、すべて対象者の栄養所要量を満足させており、摂取食品群の構成も片寄りのないように工夫された基本食を作成した。この基本食を用いて食塩の摂取量が4レベル(1日当たり10g、7g、4g、1.5g)となるように使用する調味料の量を調整して、4種の実験食とした。6名の対象者を2群に分け、一方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を7日間、4g食塩食を7日間、1.5g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計32日間連続摂取させた。他方には10g食塩食を4日間、7g食塩食を11日間、4g食塩食を10日間、最後に7g食塩食を4日間、合計29日間摂取させた。実験食摂取期間中は、連日蓄尿した。また、7g食塩食と4g食塩食摂取時の最後の2日間には、バランス・スタディーを実施した。すなわち、体外へ排泄されたナトリウムを求めるため、尿へ排泄されたものと共に、この48時間に皮膚と便から排泄されたナトリウムを含むミネラルを全て収集した。実験食摂取中は3〜4日間隔で採血し、一般生化学検査と共に血中ミネラル類、レニン活性、アンギオテンシン、アルドステロン、抗利尿ホルモン等を測定した。ナトリウム出納は、7g食塩食、4g食塩食摂取時はほぼ零平衡を示したが、1.5g食塩食ではやや負出納を示した。血中成分の中では、アルドステロンは4g食塩食摂取時までは大きい変化は認められなかったが、1.5g食塩食摂取時には200%近くにまで上昇した。また、カルシウム摂取量は全実験食で一定であったにもかかわらず、尿中カルシウム排泄量は食塩摂取量が低いほど低下し、日本人にとって不足しやすいといわれているカルシウム摂取の面からは、食塩摂取量は低いほど望ましいことが示された。これらを総合すれば、わが国における成人1日当たり食塩最適摂取量は、4g付近にあるのではないかと推察された。