著者
柴田 憲一 山下 泰治 長野 祐久 由村 健夫
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.179-184, 2009-11-25 (Released:2010-03-29)
参考文献数
15

症例は40歳,男性で,頭痛,嘔吐を主訴に救急搬送された.性転換術による精巣摘出の既往があり,来院1カ月前から女性化目的に経口避妊薬を内服していた.来院時の神経学的所見では,軽度の意識障害のみで局所徴候はなかった.血液検査では凝固系の亢進があり,頭部CTでは直静脈洞,上矢状静脈洞,左横静脈洞に高吸収域を認めた.MRVでは左横静脈洞の信号消失と右横静脈洞の信号低下があり,脳静脈洞血栓症と診断した.抗凝固療法を開始し,経過中に出血性梗塞を来したものの,再開通を得た.静脈血栓症の原因として経口避妊薬は知られているが,今回はさらにアンドロゲン低下による線維素溶解能の低下が素地にあったものと考えられた.
著者
中尾 雄太 山下 泰治 齋藤 翔太 金森 雅 南都 智紀 笠間 周平 内山 侑紀 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.64-68, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
18

症例は63 歳男性,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者である.上肢の巧緻運動障害,歩行障害,体重減少で発症し,ALS と診断された.その後,緩徐に呼吸機能と嚥下機能が低下し,夜間NPPV 導入および軟菜食,水分にとろみ付けを行い自宅で生活していた.今回,誤嚥性肺炎による呼吸不全のため救急搬送され,気管切開・人工呼吸器管理などの集中治療のため安静臥床を要した.舌圧を含む嚥下関連筋の急激な筋力低下を認めたことから,原疾患の進行のみならず,臥床に伴う廃用症候群の合併を考慮し,負荷量に留意した舌筋の筋力増強訓練を施行した.その結果,最大舌圧および嚥下機能の改善を認め,3 食経口摂取となった.ALS においても,廃用の要素が大きい際には嚥下筋の筋力増強訓練は有効である可能性が示唆されたため,文献的考察とともに報告する.