著者
浅田 泰幸 下里 剛史 齋藤 翔太 町田 好聡 渡邊 裕加 山本 学
出版者
社団法人 日本口腔外科学会
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.302-306, 2018-05-20 (Released:2018-07-20)
参考文献数
21

Human myiasis is a parasitic infestation caused by fly larvae. There are many case reports of parasitic infestations in the digestive tract, ears, and sites of traumatic injury, but few reports of infestation inside the oral cavity. We report a case of human myiasis arising in the anterior maxillary gingiva. A 91-year-old woman was admitted to our hospital in October 2016 because of pneumonia. She started to receive antimicrobials after being hospitalized and her pneumonia symptoms were resolving, when five larvae were observed in the maxillary gingiva during oral care on hospital day 19. The larvae were extracted and sent to Japan’s National Institute of Infectious Diseases (Ministry of Health, Labour, and Welfare) for identification. They were identified as the third instar larvae of Sarcophaga similis. Based on the growth cycle of Sarcophaga similis, our patient is believed to have contracted the infestation after hospitalization. Regular, strict oral care was provided, and no insect larvae were found thereafter. Her pneumonia and oral health status improved, and she was transferred to another hospital on hospital day 35.
著者
中尾 雄太 山下 泰治 齋藤 翔太 金森 雅 南都 智紀 笠間 周平 内山 侑紀 道免 和久
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.64-68, 2020-04-30 (Released:2020-08-31)
参考文献数
18

症例は63 歳男性,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者である.上肢の巧緻運動障害,歩行障害,体重減少で発症し,ALS と診断された.その後,緩徐に呼吸機能と嚥下機能が低下し,夜間NPPV 導入および軟菜食,水分にとろみ付けを行い自宅で生活していた.今回,誤嚥性肺炎による呼吸不全のため救急搬送され,気管切開・人工呼吸器管理などの集中治療のため安静臥床を要した.舌圧を含む嚥下関連筋の急激な筋力低下を認めたことから,原疾患の進行のみならず,臥床に伴う廃用症候群の合併を考慮し,負荷量に留意した舌筋の筋力増強訓練を施行した.その結果,最大舌圧および嚥下機能の改善を認め,3 食経口摂取となった.ALS においても,廃用の要素が大きい際には嚥下筋の筋力増強訓練は有効である可能性が示唆されたため,文献的考察とともに報告する.
著者
齋藤 翔太朗
出版者
東京大学大学院経済学研究科
雑誌
経済学論集 (ISSN:00229768)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.93-116, 2023-01-31 (Released:2023-09-20)
参考文献数
26

イギリスの移民政策の歴史において,1905年外国人法は,入国管理の政策基調が「開放」から「規制」へと一転し,現在の入国管理制度の原型が成立した画期として位置づけられている.ところが,その一方で,実際の効果については消極的にしか評価されてこなかった.本稿では,1905年外国人法に基づいて実施された外国人の入国管理制度の特質と,その歴史的意義について,同法をめぐる様々な対立・欠陥・相違に注目しながら考察する.本稿は次の点を指摘する.第1に1905年外国人法には,入国管理政策として移民規制と難民庇護という対立的な要素が併せて制度化され,さらに政治的・宗教的難民については「推定無罪」の原則が指示されていた.第2に実際に入国管理の対象となる外国人旅客は限定されるとともに,入国規制の対象となる基準が不明瞭であるという欠陥が存在していた.第3に施行者であった自由党の内務大臣は,戦時の入国管理には積極的であった一方で,平時の入国管理には消極的であった.また「外国人問題」の発生に対しては移民規制よりも社会改良を主張していた.
著者
齋藤 翔太朗
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.235-252, 2013

20世紀初頭のイギリスにおいて入国管理の政策基調は「開放」から「規制」へと一転したのであり,1905年外国人法の制定は移民政策史上の画期であった。本稿は,19世紀末から20世紀初頭にかけての外国人の流入と「外国人問題」の発生を検討することによって,1905年外国人法の政策意図,すなわち移民規制という「国家介入」を肯定する政策論理を解明することを課題とする。19世紀末以降,東欧出身の困窮外国人が大量に流入し,ロンドンのイースト・エンドに集中したことで排外的世論が高揚した。このような外国人の増加は既存の社会問題と重複する苦汁労働,過密人口,困窮,犯罪を悪化させた。移民規制運動では関税改革運動とともに国内労働者の雇用と生活を外国人から保護することが意図された。そして「好ましからぬ移民」を規制する1905年外国人法が制定されたのである。したがって本稿は,「外国人問題」の発生と1905年外国人法の制定が,社会問題に対する関心と自由貿易に対する懐疑によって自由主義が変容し,「国家介入」が肯定されつつあった当時の時代状況のなかに位置付けられると結論する。