著者
井ノ川 侑果 山口 正寛 湯川 進太郎
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.97-104, 2016-05-30 (Released:2016-12-02)
参考文献数
29
被引用文献数
1 2

The present study examined the relationship between the secondary emotions caused by suppressing primary emotions (and the “double suppression” of suppressing secondary emotions) and mental health or adjustment. Participants (N=253) completed a questionnaire package containing: (1) items about the tendency to suppress emotions, (2) experiences and frequency of secondary emotions, (3) frequency of double suppression, (4) a scale of overall mental health (GHQ28), and (5) a scale assessing adjustment(measuring one's sense of basic trust). The frequency of secondary emotions caused by suppressing negative emotions, but not the tendency of emotional suppression itself, was associated with mental unhealthiness and maladjustment. The importance of this distinction that mental health and adjustment may be related to the frequency of secondary emotions rather than emotional suppression per se is discussed.
著者
山口 正寛
出版者
日本学校メンタルヘルス学会
雑誌
学校メンタルヘルス (ISSN:13445944)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.81-90, 2016 (Released:2021-04-08)
参考文献数
28

【問題と目的】本研究では,感情調整と社会性に困難を抱える学生を対象にした,認知行動療法的アプローチ(以下,CBTプログラム)とソーシャル・スキルズ・トレーニング(以下,SSTプログラム)に基づく心理教育による集団介入の実践報告を通して,これらのプログラムの有効性とその運用上の課題を検討した。【方法】9名の大学生が全10回のCBTプログラムに参加し,そのうち7名が引き続き全13回のSSTプログラムに参加した。CBTプログラムは,リラクゼーション,自他の感情理解に関する練習を中心に構成し,自尊感情とストレス・コーピングを効果測定の指標とした。SSTプログラムは,話の聴き方や対人葛藤場面における対処法などを中心とするスキル練習から構成し,ソーシャル・スキルと自己効力感,大学への適応感,精神的健康度を効果測定の指標とした。【結果】CBTプログラム実施後には,参加者の自尊心の向上が示唆され,SSTプログラム実施後では,ソーシャル・スキルの向上が示された。一方で,両プログラム実施後の参加者のストレス・コーピング,自己効力感,適応感及び精神的健康には改善が認められなかった。【考察】CBTプログラムを通して,客観的な自己理解の視点が得られたことや,リラクゼーションなどを活用して感情をコントロールするスキルを獲得することが自尊心の向上につながったと考えられた。また,SSTプログラムは対人関係上のソーシャル・スキルの改善に有効と考えられた。本研究の結果から,感情調整と社会性に困難さを抱える大学生を対象にした心理教育による集団介入は,一般大学生を対象とした心理教育と同様の効果が得られると考えられた。また,大学内における心理教育を運用する際の課題として,参加者のアセスメント,集団介入による否定的作用,介入効果の妥当性について検討する必要について考察された。
著者
山口 正寛
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.157-167, 2009-03-01 (Released:2009-04-08)
参考文献数
41
被引用文献数
4 2

本研究の目的は,愛着理論における愛着機能に焦点を当てた,愛着機能尺度(Attachment-Function Scale; AFS)を作成することである。AFSは,「安全基地」,「安全な避難所」,「近接性の維持」を下位概念と設定し,全15項目からなる尺度を構成した。本尺度を大学生246名に実施し,探索的因子分析をしたところ,上記の3因子が抽出され,確証的因子分析においても高い適合度が示された。また,α係数においても高い信頼性が示された。相関分析の結果から,愛着尺度であるECR-GOとの関連が示され,孤独感や絶望感とも負の相関が示された。これらの結果から,AFSは,内的作業モデルにおける「自己モデル」と「他者モデル」,および社会的適応性と関連する尺度であると考えられた。したがって,AFSは愛着理論における愛着機能を測定する尺度であると考えられ,AFSの信頼性と妥当性の一部が確認された。