著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-85, 2007-03-01 (Released:2017-04-11)

親が子供の障害を受容して行く過程に関する文献的検討を行った結果, 障害の診断を受けてから, 親の心の軌跡に焦点を当てた段階説と慢性的悲哀説の2説が報告されている. 段階説の概略は, 親が子供の障害を受容して行く過程は長期に渡り紆余曲折があるが, いずれは必ず障害のある我が子を受容するに至るとする説である. 一方慢性的悲哀説は, 親の悲しみは子供が生きている限り永遠に続き, 子供の成長に伴う転換期において繰り返し経験され続け, 悲しみに終わりはないとする説である. さらにわが国においては, 2説を包括する形の障害受容モデルもあり, 研究者による分析方法や解釈の仕方に違いが見られる. 障害を持つ子供の支援に携わる医療者は, 主たる養育者である親が子供の障害を受容して行く過程を理解し, さらに2説の枠組みだけではなく親の養育体験全体を捉えることが必要であり, 今後さらなる体系的研究が望まれる.
著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.183-195, 2007-06-01 (Released:2017-04-11)

我が子の障害を受容する過程には, 子供の障害の内容や親の要因, さらに社会的要因など様々な因子が複雑に絡み合い, その受容過程は決して単純なものではない. 障害受容に関連する様々な要因の中で, 子供の障害の種類と程度は親の受容過程にもっとも大きな影響をおよぼすと考えられるが, 先行研究では様々な疾患を「障害」という一つの枠組みに捉えたものが多い. また子供と親が今後障害と共に生きて行く言わば出発点となる障害告知は, 障害の種類により時期や内容が異なり, 我が子の障害受容過程に多大な影響をおよぼすと考えられる. さらに母親と父親の受容過程は異なると考えられるが, 先行研究の多くは「母親」を対象としており, 「父親」を対象としたものが少ない. 今後の研究課題として障害の種類と程度を勘案した詳細な分析や告知の在り方に関する研究の集積が必要である. また母親だけではなく父親の受容過程やその家族・社会に関する研究を行う必要がある.
著者
山口 雅子 徳永 結
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.E0345-E0345, 2007

【はじめに】当院併設老健通所リハビリテーション(以下リハ)では、H15年度より定員100名という大規模事業所ながら、個別リハに特化した体制での運営を行っていた。利用者・家族からの希望に沿った個別リハを提供していた反面、人的・時間的制約により、全ての利用者に対して専門職としての十分な関わりを持つ事は困難な状況であった。H18年4月、通所リハにリハマネージメント加算が新設され、評価・利用者の状態に応じた個別的リハ計画の策定・実施というプロセスに重点が置かれることとなり、当事業所においても、リハマネージメントに重点を置いた体制に変更した。新体制から半年が経過したことから、体制変更に伴う職員の意識や課題を整理し、今後の通所リハにおけるリハスタッフの役割を検討することを目的に調査を行った。<BR>【方法】通所リハに勤務する職員25名に対し、調査趣旨を紙面にて説明し無記名アンケートを実施した。アンケート内容は、H18年度介護保険改定についての理解度、体制変更前後のサービス面での変化、体制変更による業務の変化、リハスタッフ・理学療法士についてなどである。<BR>【結果】職員22名より回答が得られた。介護保険改定については55%が理解していると回答し、65%が体制変更後通所リハサービスは向上したと回答した。自由記載では、サービス面に関して「個別性を重視したケアへの意識が高まった」「プログラムが多様化された」「情報交換が活発になった」「様々なレベルへの対応が困難」など、リハスタッフ・理学療法士に関しては「リハ職による評価が個別ケアに役立つ」「情報交換が活発になった」「介護技術など研修をして欲しい」「体操メニューの多様化を望む」などの意見があった。<BR>【考察】調査結果から、リハマネージメントの積極的導入により、個別的ケアへの意識が高まりサービスに反映されている事がうかがえた。当事業所は大規模事業所であるとともに、利用者のレベルは要支援1から要介護5まで、利用目的は心身機能の維持改善、社会的交流、生活全般の援助などと多岐にわたるため、リハスタッフは、数多くの利用者に対しそれぞれに、生活を見据えニーズに応じたリハ計画を立案し、様々な角度からアプローチを行い、それらをリハマネージメントとして通所リハ全体へ反映させる事が求められる。<BR>【課題とまとめ】H18年度医療保険制度、介護保険制度の同時改定により、高齢者を取り巻く、保健・医療・福祉の環境は著しく急激に変化することとなった。医療保険でのリハには疾患別区分や算定日数上限が設定され、今後、医療保険と介護保険が連携して高齢者を支える仕組みの整備や介護保険分野でのリハサービスのさらなる充実が急がれる。当事業所でも、医療保険でのリハとの連携と利用者全体へのリハサービス向上を目指し、リハマネージメントに加え、短期集中リハとしての個別リハ提供体制の充実・整備を模索している段階である。
著者
阿南 あゆみ 山口 雅子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.73-85, 2007-03-01

親が子供の障害を受容して行く過程に関する文献的検討を行った結果,障害の診断を受けてから,親の心の軌跡に焦点を当てた段階説と慢性的悲哀説の2説が報告されている.段階説の概略は,親が子供の障害を受容して行く過程は長期に渡り紆余曲折があるが,いずれは必ず障害のある我が子を受容するに至るとする説である.一方慢性的悲哀説は,親の悲しみは子供が生きている限り永遠に続き,子供の成長に伴う転換期において繰り返し経験され続け,悲しみに終わりはないとする説である.さらにわが国においては,2説を包括する形の障害受容モデルもあり,研究者による分析方法や解釈の仕方に違いが見られる.障害を持つ子供の支援に携わる医療者は,主たる養育者である親が子供の障害を受容して行く過程を理解し,さらに2説の枠組みだけではなく親の養育体験全体を捉えることが必要であり,今後さらなる体系的研究が望まれる.