著者
稲村 成昭 山崎 宏史 西村 修
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.123-127, 2013 (Released:2013-07-10)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

本研究では浄化槽の法定検査結果による浄化槽処理水BODと浄化槽内水温のデータ16万件を検査月ごとに集計して解析した結果から,処理水平均BODへの水温による影響は,現在の水温ではなく,過去4~5ヶ月から現在までの水温の履歴を含めた移動平均水温に高い直線的な相関があった(平均水温が11~25℃の範囲において)。このことは,現在の浄化槽の状態は一定の過去から現在までの水温の累積によって左右されていることを意味している。また,これまでの調査データでは,現在の水温が低い程,処理水BODも低いといった現象も認められたが,移動平均水温として評価することにより,浄化槽の処理性能に対して,これまでの想定通り,水温が高いほど,処理水BODが低くなることが改めて確認された。
著者
山崎 宏史 馬 榕 蛯江 美孝 稲村 成昭 西村 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.76, no.7, pp.III_235-III_242, 2020 (Released:2021-03-17)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

我が国の小型浄化槽における処理水質は季節により変化するが,必ずしも処理水採水時の水温に比例して処理水質は変化しないことがわかってきている.そこで本研究では,浄化槽の処理性能に及ぼす水温の影響を調べるために,処理水採水時の水温の他,過去の水温(水温履歴)も考慮に入れることにより,その影響を解析した.その結果,汚泥貯留部のスカム量変化と共に,処理水BOD,T-N濃度等は,処理水採水時の水温だけでなく,過去4~6ヵ月の水温履歴にも影響を受けていると考えらえた.これらの現象から,小型浄化槽は槽内に汚泥を貯留する機能を有するために,水温履歴に応じた貯留汚泥の可溶化により,後段への負荷量が変化し,処理水質にも影響を及ぼしていると考えられた.そのため,小型浄化槽では,各水温における汚泥可溶化量と浄化量の差が処理水質に影響を及ぼすと考えられた.
著者
山崎 宏史 蛯江 美孝 稲村 成昭 柿島 隼徒
出版者
東洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、浄化槽を構成する各単位装置のGHGs排出特性を検証し、排出削減可能な技術を提案することを目的に検討を行った。その結果、CH4は嫌気処理部と汚泥貯留部を兼用する単位装置からの排出が多く、さらに夏季の水温高温期に排出が増大することがわかった。CH4排出は、後段の好気槽からの循環水量を多くし、循環するDO量を増大させることにより、削減できることを明らかとした。一方、N2Oは好気処理部からの排出が多く、さらに春季から夏季に至る水温上昇期における貯留汚泥の可溶化により排出が増大することがわかった。N2O排出は、流量調整機能を付加し、処理機能を安定させることにより削減できることを明らかとした。
著者
稲村 成昭 蛯江 美孝 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_399-III_405, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
12

小型浄化槽からの温室効果ガスであるN2Oの1人当たりの排出量は,下水道に比べて,おおよそ5倍と著しく高い.そこで,浄化槽の特徴である流量変動に着目し,浄化槽における流入汚水量の時間変動を緩和する流量調整機能の有無によるN2O排出量の比較を行った.その結果,流量調整機能がある場合は,機能がない場合に比べて,N2O排出量は1/6以下に低減され,下水道とほぼ同じレベルになることが分かった.その要因として,流量調整機能がある場合,二次処理への汚水の一次的な流入汚濁負荷の集中が緩和されることにより,機能がない場合に比べて二次処理におけるORPの低下を最小限に抑えられるためと考えられた.なお,本研究を通じて,浄化槽においては,N2O排出量を制御する指標として,DOよりORPの方が適していると考えられた.
著者
柿島 隼徒 蛯江 美孝 村野 昭人 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.III_391-III_398, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

本研究では,戸建て住宅に設置されている浄化槽3基を対象に,浄化槽から排出される温室効果ガスCH4,N2O排出量を1年以上にわたり調査し,季節影響を踏まえた排出特性の解析を行った.その結果,CH4は,約90%が嫌気処理部から排出されており,N2Oは,約80%が好気処理部から排出されている事が確認された.CH4排出量は嫌気処理部に流入するDO量が低くなる際に増大する傾向となった.これは嫌気処理部底部の嫌気化が進むことでCH4生成量が増大するためであると考えられた.一方,N2O排出量は水温上昇期において,槽内のBODとNH4-Nが同時に高くなる際に増大する傾向となった.これは,浄化槽内に貯留する汚泥が可溶化しBODとNH4-Nが溶出することにより,好気処理部における硝化反応(亜硝酸酸化)が速やかに進行しなくなるためであると考えられた.
著者
古市 昌浩 酒谷 孝宏 蛯江 美孝 西村 修 山崎 宏史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.II_141-II_150, 2018 (Released:2019-03-29)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

浄化槽分野の低炭素化推進に際し,1990年からの20年余の技術開発による温室効果ガス排出量の推移を明らかにし,この結果を基にさらなる削減施策のあり方について考察した.5から10人槽の浄化槽を対象に1990年から2013年を調査期間として,浄化槽のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量を分析した.その結果,2013年度生産品の排出量は1990年度に対し,一基当たり35%削減され,ブロワの省エネ化と浄化槽のコンパクト化は効果的な低炭素化手法であったことがわかった.また,我が国の排出量削減目標である2030年度マイナス26%(2013年度比)の本分野での達成は,現時点で最高性能を有する浄化槽の普及にて可能となるものの,長期目標(2050年までに8割削減)達成にはさらなる削減施策が必要と示唆された.
著者
山崎 宏史 蛯江 美孝 西村 修
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_267-III_273, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,戸建住宅の給排水設備に節水機器を導入し,生活排水の質的量的変化および浄化槽の処理性能に及ぼす影響を評価した.節水機器の導入により使用水量が削減され,浄化槽流入水は高濃度化した.この流入水性状の変化に伴い,浄化槽からの処理水BOD濃度は14.8 mg/Lから21.4 mg/Lへと44.6%増加し,浄化槽は所期の性能を確保できなくなった.しかし,処理水量が削減されたことにより,処理水BOD濃度と水量の積で示される水環境へのBOD汚濁負荷量は,ほとんど変わらないことが明らかとなった.さらに,節水機器導入後に,浄化槽の嫌気好気循環運転を試みた結果,処理水BOD濃度は14.2 mg/Lまで減少し,水量の減少と相まって,水環境へのBOD汚濁負荷量を24.8%削減できた.