- 著者
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鈴木 千帆
山本 京
植田 康次
岡本 誉士典
小嶋 仲夫
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.P-106, 2012 (Released:2012-11-24)
【目的】セレン(Se)はその代謝過程においてグルタチオン(GSH)と反応しセレノジグルタチオン(GSSeSG)を生成する.GSSeSGはがん細胞増殖抑制作用を示すことが知られているが,その反応機序は明らかになっていない.本研究では,GSSeSGの細胞傷害性,酸化的DNA損傷性およびその機構について検討した.【方法】ヒト乳がん細胞(MCF-7)生存率,生細胞蛍光染色; アポトーシス誘導率,アネキシンV染色; グアノシン酸化体(8-oxodG)定量,電気化学検出器付きHPLC;DNA損傷試験,アガロースゲル電気泳動; スーパーオキシドアニオンラジカル(O・2-)検出,ヒドロキシルアンモニウム/スルファニル酸/N-(1-ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩.【結果および考察】細胞生存率はGSSeSG用量依存的に減少し,それに伴いアポトーシス陽性細胞の割合が増大した.このとき,ゲノムDNA中の8-oxodG量が有意に増加したことから,GSSeSGは細胞内において酸化ストレスを誘発することが示唆された.仔牛胸腺DNAを用いたin vitro DNA損傷試験において,GSSeSGはGSH共存下で酸化的DNA損傷を誘導したことから,本反応が細胞内での酸化ストレスの誘導に関与しているものと考えられる.その過程で活性酸素種としてO・2-が生成していることを確認した.またGSSeSGは培地添加後速やかに減少したことから,その還元産物であるH2Seが生成し,細胞内に移行後さらに還元される過程でO・2-が生成していると考えられる.今後,GSHをはじめとする生体内チオールが関与する代謝過程を解析することにより,Seの抗がん作用の詳細が明らかになっていくと期待される.