著者
赤井 純治 長峰 崇 山本 玄珠 北垣 俊明 海野 友紀
出版者
日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.106-106, 2005

深海のマンガンノジュールは、1873年グロマーチャレンジャー号の発見以来多くの研究があり、またその成因も様々に議論されている。最近、ノジュールにみられる縞状構造はミランコビッチサイクルに対応するという解釈もある(Han et al., 2003)。マンガン酸化バクテリアも、ノジュールに付着しているとの報告がある( e.g.,Edenborn, et al., 1985 ) が、詳細な成因についてはわかっていない。淡水性環境でも、様々なマンガン土沈殿、ノジュール状沈殿、温泉性のストロマトライト構造をもつもの(赤井他、1997)等報告がある。山本他(2004)は、青森県尾太鉱山排水路中から、大きさ7cmを越す、マンガン団塊が生成していることを報告した。これによると、このマンガンノジュールの組成は、平均MnO=60%程度で他の金属として、ZnO=4%、CaO=3% 程度を含む。今回、この尾太鉱山産マンガンノジュールの生成過程をしらべる為に、マンガンノジュールの生成の初期段階とノジュールの組織・構造に注目し、電顕鉱物学、バイオミネラリゼーションの視点から検討した。産地と試料:尾太鉱山が閉山(1978年)後の坑内排水溝に茶褐色微生物マットが生成し、その中に0.数mmから数cmの黒色Mnノジュールが生成している。水質は以下のようである:pH= 6.8-7.1 Mn= 20-24 ppm, Ca, 270-290ppm, Mg= 28-31ppm, Zn = 6-8ppm, Cl = 6ppm, NO3= 17ppm, SO4 =529-661ppm. ORP =85-135mV, EC=_から_1270μS。この微生物マットごと、試料を採取し、SEM、TEMで観察した(TEM は JEOL JEM2010、EDSはNoran Inst., Voyager IV )。結果と考察:微生物マットは主に鉄酸化バクテリア、ガリオネラとそれが作りだしたら旋状の水酸化鉄の柄の部分からなる。ガリオネラの水酸化鉄は高倍率のTEM像で、さらにこまかな、ナノサイズのアモルファス鉱物粒子であることが解像される。TEM観察で、ガリオネラのバクテリア部分がみられるが、一部のガリオネラのバクテリア本体がマンガン鉱物に覆われているものが今回見いだされた。このEDS組成分析もあわせ、マンガン鉱物のバイオミネラリゼーションと解釈される。一般には、ガリオネラはMnを酸化しないとされているが、極限的な条件下で、利用できるFeがなくなり、Mnがある場合には、マンガン酸化にガリオネラがかかわってくるか、あるいは何らかのバクテリア表面の化学的性質の変化による沈着であろうことを示唆している。このようなマンガン鉱物集合の形態は、1μmスケールの扁形な形態から、少し大きな球状まで、やや幅がある。また、ガリオネラのつくった水酸化鉄のらせん状の柄にからみつくように、マンガン酸化物がみつかることもあり、これは、ガリオネラが特徴的な鉄水酸化物の柄を出しつつある過程でマンガンを沈殿したようにみえる。これまでの観察では、ガリオネラ自身が、マンガンノジュールの最初の端緒をつくった可能性も考えられる結果といえる。微小ノジュールの形態は、ガリオネラマットに支えられて、球状形態が形成され、成長する。また、イオン研摩試料について観察し、縞状構造の結晶サイズの疎密、によるちがいが観察できた。試料Aのマンガン鉱物は buseriteであり、葉片状の層状構造をなすことが、HRTEMで観察された。成因について、さらに議論する。
著者
山本 玄珠 長峰 崇 北垣 俊明 海野 友紀
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.375-388, 2004-11-25 (Released:2017-07-14)

筆者らは,青森県尾太鉱山跡地坑道内において,廃水性マンガン団塊を発見した.本マンガン団塊は,15年以内で形成されたものである.粗粒から中礫サイズのこのマンガン団塊は,ブドウ状表面構造を有すマンガンクラスとともに産出するが,それらは微生物のマットと思われる物質が広く発達している中に認められる.いくつかのマンガン団塊のコアや表面には微生物と思われる物質が含まれていた.今回発見されたマンガン団塊は全て球状を呈し、層構造を有すが,それらは深海のマンガン団塊の形状(Meylan 1974)で示すとs-m[SDP]sまたはs-m[SDP]s+rに分類される.本マンガン団塊が微生物的物質と共に存在することから,本マンガン団塊の形成には,微生物的物質が関係していると考えられる.
著者
山本 玄珠 長峰 崇 北垣 俊明 海野 友紀
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科学 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.375-388, 2004
参考文献数
32

筆者らは,青森県尾太鉱山跡地坑道内において,廃水性マンガン団塊を発見した.本マンガン団塊は,15年以内で形成されたものである.粗粒から中礫サイズのこのマンガン団塊は,ブドウ状表面構造を有すマンガンクラスとともに産出するが,それらは微生物のマットと思われる物質が広く発達している中に認められる.いくつかのマンガン団塊のコアや表面には微生物と思われる物質が含まれていた.今回発見されたマンガン団塊は全て球状を呈し、層構造を有すが,それらは深海のマンガン団塊の形状(Meylan 1974)で示すとs-m[SDP]sまたはs-m[SDP]s+rに分類される.本マンガン団塊が微生物的物質と共に存在することから,本マンガン団塊の形成には,微生物的物質が関係していると考えられる.
著者
狩野 謙一 小田原 啓 山本 玄珠 伊藤 谷生
出版者
国立大学法人 静岡大学理学部地球科学教室
雑誌
静岡大学地球科学研究報告 (ISSN:03886298)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.19-49, 2019-07-31 (Released:2021-11-18)

We have examined the surface geology and tectonic landforms of the Hoshiyama Hills and its surrounding areas in the Fujikawa-kako Fault Zone (FKFZ), central Japan. The FKFZ is generally regarded as a collision zone between the Honshu Arc, mainly composed of the pre-Neogene accretionary and the Neogene collisional complexes of South Fossa Magna region, and the Neogene Izu-Bonin Volcanic Arc on the Philippine Sea Plate. This zone is believed to be the most active and dangerous area of Japan in association with violent earthquakes. One of the keys to understand the activities of this zone since the Pleistocene is to reveal the geologic structures of the Hills, as well as the characteristics of the Omiya and Iriyamase Faults along the northeastern and southeastern margin of this Hills, respectively. Our surface geological survey reveals that the upper Lower-lower Middle Pleistocene Ihara Group, main constituent of the basement of the Hoshiyama Hills, has complicated structures including several-hundreds meters scale steeply-dipping beds without distinctive preferred orientations. The structures also include chevron-shaped anticlines and flat synclines, suggesting that the E-W horizontal shortening due to fault-related foldings was the main cause of their formations. The flexure-landform associated with the Omiya Fault clearly suggests that the Fault, previously believed to be a high-angled normal fault dipping toward NE, is a reverse fault dipping toward SW. However, the landform around the Iriyamase Fault, also believed to be a NW dipping reverse fault, show no evidence of its existence. Finally, we have summarized the tectonic and volcanic events in and around the FKFZ since about 1 Ma. These results suggest that the Quaternary tectonics and seismic activities of the FKFZ should be necessary to re-evaluate based not only on the surface geological and landform data but also on the subsurface geological structures now being poorly known.