著者
菊地 真人 山本 英子 吉田 光男 岡部 正幸 梅村 恭司
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D = The IEICE Transactions on Electronics (Japanese Edition) (ISSN:18810225)
巻号頁・発行日
vol.J100-D, no.4, pp.544-555, 2017-04-01

本論文では,観測頻度から条件付き確率を推定するという問題に取り組む.条件付き確率の推定は,データマイニングや実際の応用における基本的な操作であり,その推定方法によって手法の正確さが左右されることがある.一般に,確率推定では最ゆう推定値が用いられるが,低頻度に弱いという問題がある.この問題に対処するため,ベイズの枠組みがよく用いられる.ベイズの枠組みでは,データについての事前分布を推定し,事後分布の期待値を用いる.しかし,データをもとに事前分布を推定することは容易ではない.そこで,本論文では,事前分布として何らかの分布を仮定して事後分布の信頼区間を求め,その下限値を用いる手法を提案する.期待値は偏りのない推定値となる一方で,信頼区間の下限値は条件付き確率を保守的に見積もった推定値となる.実験によって,提案手法が低頻度に頑強であることを示す.更に,提案手法は事前分布として一様分布を用いた場合,ベイズの枠組みを用いた手法とほぼ同じ性能を獲得しうることを示す.
著者
山本 英子 内山 将夫 井佐原 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.104, pp.101-106, 2002-11-12

本研究では,文字認識の分野で用いられている補完類似度をテキストコーパスから事物間の関係を推定する問題に適用する際に,事物が持つ各文書における頻度を考慮した場合を考える.補完類似度は,ベクトルで表された文字の画像パターンの類似度を測ることによって劣化印刷文字を認識するために経験的に開発された尺度である.この扱うベクトルをコーパス中の事物の出現パターンに置き換えると,補完類似度は事物間関係の推定に適用できる.そこで,これまでに二値ベクトルを対象として事物間関係の推定を行った.しかし,二値ベクトルでは,Document Frequency しか考慮しておらず,Term Frequency(文書内頻度)を考慮していない.そこで,Term Frequencyを考慮した多値ベクトルを対象とした補完類似度を用いて事物間関係の推定を行った.その結果,Term Frequencyを考慮した補完類似度のほうが推定能力が高かったことを報告する.In this paper, we applied CSM (Complementary Similarity Measure) considering term frequency to estimate relationship between entities. Here, term frequency is times that certain entity appears in a document. CSM was developed experientially for robust character recognition. This measures inclusion degree of vectors expressing character image pattern. We have even estimated relationship between entities by replacing the image pattern to occurrence pattern of entity in corpus. However, we have considered only document frequency and have not considered term frequency. From experimental results, we reported that CSM considering term frequency obtained higher performance than original CSM.
著者
山本 英子
出版者
経済学史学会
雑誌
経済学史研究 (ISSN:18803164)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.21-48, 2016 (Released:2019-08-31)
被引用文献数
1 2

Turgot is known not only as a physiocrat, but also as the author of Valeurs et Monnaies (c1769?), in which he discusses the subjective theory of value: this work earned him a pre-eminent position in the field. Prior to Turgotʼs discussion, Graslin presented more detailed accounts of the subjective theory of value, providing logical arguments against physiocracy. In his Essai Analitique sur la Richesse et sur lʼImpôt (1767), Graslin refuted physiocratic doctrines, especially the concepts of net product and productive/non-productive classes. While initially critical of Graslinʼs assertations, Turgot later adopted his views in Valeurs et Monnaies. Although Turgot contributed to the field of economics, he provided only an intro-duction to marginal utility, equivalent to Galianiʼs signs in Della Moneta (1751), because Turgot could not totally abandon physiocratic concepts. However, Graslin proposed that all economic activities and national policies should be considered in the context of the subjec-tive theory of value. More fundamentally, he assumed that human capacity for awareness of desires and needs has always been constant and showed that an increase in the amount of ob-jects would cause a decrease in their value. Preceding studies consider that Graslin expressed only average value and that he did not show the basis of marginal utility. Although, in his de-scriptions of value, there were possibilities to mislead, it is quite possible to interpret him a forerunner of the marginal utility theory and thus distinguish him from other authors of his era. JEL classification numbers: B 11, B31.
著者
山本 英子 梅村 恭司
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.45-75, 2002-04-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
25
被引用文献数
2 6

本論文では, コーパスから事象間の一対多関係を推定する問題を考える. これまでにコーパスから事象間の関係を推定することが多く研究されている. 一般に, この問題に対する解決法の多くは, コーパスを構成する文書における事象の共起に基づき, 暗黙的に事象間の関係は一対一関係であることを想定している. しかし, 実際には, 事象間の関係は一対多関係である場合があり, この特徴のためにいくつかの工夫が必要である. 本論文では, コーパス中の一対多関係を推定するために補完類似度を利用することを提案する. この尺度は本来文字認識システムのために開発され, テンプレートの文字のパターンにオーバーラップしたパターンがある条件で有効であることが知られているが, これまでテキスト処理に利用されたことはなかった. この補完類似度の一対多関係を推定する能力を評価するために, 地名 (都道府県市郡名) を対象事象とした実験において, 平均相互情報量, 自己相互情報量, 非対称平均相互情報量, ∅相関係数, コサイン関数ダイス相関係数, 信頼度との性能比較を行う. 実験では, 三種類のコーパスを用いる. 一つ目は実際に地名問にある一対多関係から合成する人工的なデータ集合である. 二つ目も実際の関係から合成するが, 誤った関係を導く少量の要素も含むデータ集合である. 三つ目は現実の新聞記事コーパスから得られるデータ集合である. これらの評価実験において, 補完類似度がもっとも優れており, 補完類似度は一対多関係の推定問題に対して有効であることを示す.
著者
山本 英子 武田 善行 梅村 恭司 山本 幹雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.71, pp.9-15, 2000-07-28
被引用文献数
2

本論文では,情報検索に利用でき、かつ表記の揺れに寛容な類似度を提案する.表記の揺れに対応することができる編集距離という手法があるが,この手法では情報検索精度が弱いことが知られている.そこで,本論文では,情報検索の性能を持ち,かつ表記の揺れにも対応することができるダイナミックプログラミングを用いた類似度の計算法を提案し,その情報検索性能が単語に基づく手法とngramに基づく手法と比較した結果,効果的であり,かつ提案した手法が表記の揺れに寛容であることを報告する.In this paper, we propose a similarity measure suitable for information retrieval and tolerant for morphological variation. Edit distance is well-known similarity measure that can cope with variations. Unfortunately, edit distance is not suitable for information retrieval due to its performance. We have improved The behavior of edit distance by extending its definition. We have compared the proposed similarity measure with the popular similarity measures for information retrieval.
著者
山本 英子 井佐原 均
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.124, pp.61-66, 2006-11-22
参考文献数
7

本稿では,上位語下位語や同義語 反義語といった分類的関連を持つ単語集合ではなく,連想関係や因果関係といった主題的関連を持つ単語集合をテキスト集合から抽出することを試みる.後者の単語集合が持つ関連は,前者と違って,シソーラスのような知識ではなく,辞書に載っていない知識である.本研究では,そのような知識が発想支援に利用できるのではないかと考え,得られた関連語集合を用いて実際にWeb検索をすることにより,提案手法によって得られた関連語集合が発想支援に適用できることを示す.In this paper, we tried to extract sets of related word with thematic relations such as associated relation and causal relation, which are not taxonomical relations such as hypernym-hyponym relation and synonym, acronym. The relations between words composing the latter related word set can be regarded as knowledge which is not thesaurus-like knowledge and which there is not in the dictionaries. We think such related word sets can be used to support creativity. Then, we estimate the availability for creativity support that the related word sets we extracted can be had, through verification of their availability to Web retrieval.
著者
山本 英子
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

デザイナーは多くの人に好まれる製品を創りだすことが求められる.本研究では,人の好みに影響する,製品に対する印象にはいくつかの種類があると仮定し,人が製品を見て表現できた印象から一歩踏み込んだ「深い印象」に注目し,印象分析を行なう.この深い印象の性質を捉えるために,意味ネットワークを利用して,「構造」と「非明示的な印象」を伴う仮想印象ネットワークを構築する手法を提案し,その構造を分析した.その結果,好みの違いを分析に用いたいくつかのネットワーク指標を使って説明できることを示した.これにより,深い印象のレベルで,好きという印象を形成するプロセスは嫌いという印象とは異なることが示唆された.