- 著者
-
山村 譲
- 出版者
- 産業医科大学学会
- 雑誌
- 産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
- 巻号頁・発行日
- vol.11, no.4, pp.495-504, 1989-12-01
芳香族アミン類に曝露した労働者に発生する膀胱癌が最初に報告されてから一世紀になる. この間に主要先進国では発癌性アミン類の製造禁止等の対策がとられ, 日本でも昭和47年に労働安全衛生法が施行され発癌性アミン類の製造と使用がともに禁止された. 最近の報告では, 過去に発癌性アミンに曝露した作業者の膀胱癌発症のリスクは数倍がら数十倍で, 量反応関係の認められる報告が多い. 今後の問題として, benzidineや2-naphthyl-amine以外の芳香族アミンの発癌性, 染料曝露により体内で代謝されて生じる発癌性アミン, 発展途上国からの輸入製品に含まれる発癌性アミン等がある. また, 膀胱癌発生のリスクが高いと報告された職業は, 化学, 染料工業以外では皮革工業, ゴム工業, 印刷, 織物, 美容, トラック運転等がある. これらの問題を解決するには, 疫学や中毒学と臨床医学その他の分野との協力が不可欠である.(1989年8月15日 受付, 1989年9月11日 受理)