著者
伊豆 英恵 山田 康枝 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.664-671, 2010 (Released:2016-02-04)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

マウスを用いた高架式十字迷路試験によって,清酒の飲用摂取による抗不安作用を検討した。1)エタノールまたは普通酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),対照と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ2.7倍と3.4倍,滞在時間が3.2倍と3.9倍に増加しており,普通酒もエタノール同様に抗不安作用があり,さらにその作用がエタノールよりも高い傾向にあった。2)普通酒または吟醸酒を飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較して,吟醸酒でオープンアームへの進入回数が1.7倍,滞在時間が1.6倍に増加しており,普通酒よりも吟醸酒の抗不安作用が有意に高いことがわかった。3)吟醸酒に含まれるのとほぼ同程度となるように吟醸酒香気成分であるカプロン酸エチル(10mg/l)または酢酸イソアミル(2mg/l)を普通酒に添加してマウスに飲用させた場合(エタノール換算1.2g/kg体重を2回投与),普通酒と比較してオープンアームへの進入回数がそれぞれ1.5倍と1.4倍,滞在時間がいずれも1.5倍に増加しており,カプロン酸エチルと酢酸イソアミルが抗不安作用を有意に促進することが明らかになった。4)通常,清酒に含まれる濃度範囲では,カプロン酸エチル,酢酸イソアミル,イソアミルアルコールはADHによるエタノール代謝を阻害しないことがわかった。
著者
山田 康枝
出版者
近畿大学リエゾンセンター
雑誌
近畿大学研究成果シーズ = Seeds Kinki University
巻号頁・発行日
pp.1,

[概要]血管性認知症、アルツハイマー型認知症などは神経細胞が減少し、神経伝達物質も減少している。また、うつ病や統合失調症のような神経疾患は脳内受容体の不全が原因と考えられている。ヒトの記憶や学習に重要な働きを示し、認知症や精神疾患の発症にも関係しているNMDA 型グルタミン酸受容体に対しアンタゴニスト(拮抗作用)を与えることで認知症への効果、アゴニスト(作動作用)を与えることで神経疾患への効果が期待できる。天然に多く存在するジペプチドの中から新たにNMDA 型グルタミン酸受容体に対して生理活性のあるものを見つけ出し、医薬品として、あるいは保健機能性食品として食生活に応用することで、副作用のない穏やかな効果が期待できる。
著者
中村 一美 樹野 淳也 米原 牧子 竹原 伸 山田 康枝
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第40回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.2003181, 2013 (Released:2013-08-14)

【目的】交通環境では排気ガスをはじめとする悪臭物質が自動車室内へと流れ込んでいる.そこで本研究では自動車の空調システムにおいて異臭原因物質の主成分であるプロピオン酸,吉草酸,酪酸に着目し,各物質がマウスの自発運動能におよぼす影響を調べた.また,定量的な評価をおこなうため,各物質の投与方法は腹腔内への注射による投与とした.【方法】本研究には18週齢のC57BL雄性マウス24匹を用いた.全てのマウスに対し,自発運動能測定システム(Wheel Manager, MED Associates Inc.)を用いて回し車(直径10.9cm)の回転数を60分間測定し,controlデータとした.次に24匹のマウスを,注射の有無による影響を調べるためのリンゲル液投与群,悪臭物質による影響を調べるためのプロピオン酸(1µg/kg)投与群,吉草酸(1µg/kg)投与群,酪酸(0.5µg/kg)投与群の4群各6匹ずつに分けた.なお,4群のcontrolデータにおいて一元配置の分散分析をおこなった結果,各群の間に統計学的な有意差はなかった(P>0.05).各物質をそれぞれの群のマウスの腹腔内に投与し,controlデータと同様に自発運動能を60分間測定した.各物質の投与による統計学的有意差の検定にはウィルコクソンの符号順位和検定を用いた.【結果および考察】リンゲル液を投与した群では投与の有無による統計学的な有意差はなかった(P>0.05)ため,注射による腹腔内投与の影響はないと判断した.プロピオン酸,吉草酸,酪酸を投与した群では,controlデータと比較して回転数が減少した.とくに酪酸を投与した群においては,統計学的な有意差があった(P<0.05).本研究を通して,悪臭物質がマウスの自発運動能に影響をおよぼすことがわかった.以上のことから,ヒトにおいても悪臭物質は快/不快の感覚に影響を与えるだけではなく,運動能に影響を与える可能性が示唆された.
著者
山田 康枝 江口 将也 伊豆 英恵 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.609-614, 2010-09-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では、中枢神経系においてリラックス効果に主要な働きをしているGABAA受容体に対する日本酒成分の効果を明らかにするため、アフリカツメガエル卵母細胞に発現したGABAA受容体のチャンネル活性への日本酒成分の影響を検討した。受容体へ効果のある物質を特定しやすくするため、イオン交換クロマトグラフィーで日本酒を分画し、揮発性成分を除き濃縮するために凍結乾燥を行い、塩基性アミノ酸画分、中・酸性アミノ酸画分、有機酸画分、糖画分を得た。これらの日本酒画分存在下で測定を行った結果、得られた全ての画分にGABAA受容体を活性化する成分が存在することが示された。特に、有機酸を主に含む画分において、GABAが含まれないのにも関わらず、GABA活性が存在し、さらに高い活性化率を示すことがわかった。以上のことから、日本酒にエタノールやGABA以外のGABAA受容体活性化成分が存在することが示唆された。
著者
山田 康枝 江口 将也 伊豆 英恵 後藤 邦康 須藤 茂俊
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.105, no.9, pp.609-614, 2010-09 (Released:2011-12-19)

本研究では、中枢神経系においてリラックス効果に主要な働きをしているGABAA受容体に対する日本酒成分の効果を明らかにするため、アフリカツメガエル卵母細胞に発現したGABAA受容体のチャンネル活性への日本酒成分の影響を検討した。受容体へ効果のある物質を特定しやすくするため、イオン交換クロマトグラフィーで日本酒を分画し、揮発性成分を除き濃縮するために凍結乾燥を行い、塩基性アミノ酸画分、中・酸性アミノ酸画分、有機酸画分、糖画分を得た。これらの日本酒画分存在下で測定を行った結果、得られた全ての画分にGABAA受容体を活性化する成分が存在することが示された。特に、有機酸を主に含む画分において、GABAが含まれないのにも関わらず、GABA活性が存在し、さらに高い活性化率を示すことがわかった。以上のことから、日本酒にエタノールやGABA以外のGABAA受容体活性化成分が存在することが示唆された。