著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981-05-20 (Released:2011-11-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
著者
渡辺 実 野田 伸司 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.367-372, 1981-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.891-897, 1981-12-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
11

生体試料中のNDVおよびワクチニァウイルスに対するイソプロパノール (IP) の不活化作用を検討した.IPは各種の生体試料により, 強い不活化阻害作用を受けるが, 試料の状態により不活化阻害の傾向には, 大きな違いが認められた.血清, 尿および脱線維血液等の液相において, エタノールの場合と同様に, IPの濃度の低下と共セこ, 試料による不活化の阻害が強く示された.しかし, 脱線維血液と同じ水分を含む凝固血液中のウイルスに対しては, 50~80%に不活化の至適濃度が示され, いずれの試料中のウイルスに対しても, 高濃度ほど強い不活化効力を示したエタノールとは, 不活化阻害の機序を異にすることが推測される.乾燥血清中のウイルスは, エタノールの場合と同様に, 40%前後の比較的低濃度のIPにより, 最も効果的に不活化された.エンベロープウイルスに対しては, 生体試料中においても, IPは効果的な殺ウイルス剤と考えられるが, 含水, 乾燥いずれの状態にも対応できる実用的な濃度としては, 50%が適当と思われる.
著者
野田 伸司 渡辺 実 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.355-366, 1981
被引用文献数
3 4

親水性ウイルス (エンテロウイルス) および親油脂性ウイルス (アデノおよび被エンベロープウイルス) の合計11種類のウイルスに対する, メタノール, エタノール, イソプロパノールおよびN-プロパノールの不活化作用を検討した.<BR>エンテロウイルスはメタノールによつて最も強い不活化作用を受け, 次いでエタノールであつた. イソプロパノールによつては, AHCウイルスが長時間の感作でわずかに不活化されるのを除き, 他のウイルスは全く不活化を受けなかつた.<BR>親油脂性ウイルスの中, 被エンベロープウイルスはN・プロパノールによつて最も強い不活化を受け, 次いでイソプロパノール, エタノール, メタノールの順であつた. これに対し, アデノウイルスはエンベロープゥイルスと同様にN-プロパノールによつて最も強い不活化を受けるが, その他のアルコール類に対する感受性は大きく異なり, 以下メタノール, エタノール, イソプロパノールの順に不活化効果が示された. アデノウィルスにおいては, 特にエタノールに対する抵抗性の強さおよび20℃ においてはイソプロパノールによりほとんど不活化を受けないことが注目された.<BR>エンテロウイルス中のAHCウイルスおよび親油脂性ウィルス中のアデノウイルスを除外すると, 全体的な傾向として, エンテロウイルスは炭素数の少いアルコール類, 親油脂性ウイルスはこれと反対に炭素数の大きいアルコール類により, 不活化を受け易い傾向が認められた.
著者
所 光男 加藤 樹夫 後藤 喜一 渡辺 実 山田 不二造 酒向 俊雄 大塚 一幸 杉山 治 古川 雅宏 丹羽 昭司 長山 千秋
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.1038-1045, 1984
被引用文献数
2

1983年7月から9月にかけて岐阜県内で2事例の集団下痢症が発生した. 2事例の患者総数は31名であり, 患者の主症状は下痢 (100%), 腹痛 (93.5%), 嘔気 (80.6%), 嘔吐 (58.1%), 発熱 (35.5%) であった. 原因食品は事例1が鯛の塩焼き, 事例2が卵焼きであった.<BR>これら2事例の患者ふん便12件中11件 (91.7%) から腸炎ビブリオが, 8件 (66.7%) から<I>Vibrio fluoialis</I>が検出された. 腸炎ビブリオ分離株の血清型は事例1の患者5名から分離された15株がO5: K15であり, 事例2の患者7名から分離された28株のうち25株がO10: K19, 3株がO5: K17であった.<BR><I>V. fluvialis</I>分離株のうち, 事例1の患者由来の15株中8株, 事例2の患者由来の30株中12株および原因食品の卵焼きから分離された1株を任意に選び東京都立衛生研究所に依頼して血清型別試験を行った. その結果, 事例1の患者2名から分離された3株がTFO-12に, 事例2の患者2名から分離された2株がTFO-4に, 患者4名から分離された5株がTFO-17に型別され, 両事例とも患者間に血清型の一致が認められた. しかしながら, 事例1の残り5株, 事例2の残り5株および卵焼き由来の1株は型別不能であった.<BR>以上の結果から, これら2事例の集団下痢症は腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染による食中毒事例であると結論した. 腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染として細菌学的にも, 血清学的にも証明された食中毒事例はこれら2事例がわが国では最初のものと思われる.