著者
田所 光男 長畑 明利 藤井 たぎる 布施 哲
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

今回の共同研究では、20世紀に飛躍的な発展を遂げたポピュラー音楽の歌詞を分析し、それが、一方で、「高級文化」に属する諸テクスト(文学、哲学、宗教、など)と相互浸透し、他方、特定の時代や集団の記憶、政治的・社会的意識(戦争、世代、マイノリティ、性、他者、差別、失業、暴力、人種、移民、植民、などの問題に関わるもの)とネットワークを築いている様を解明した。20世紀ポピュラー音楽は、国境を越えて地球的規模で受容されたが、音楽複製技術や音楽産業、マス・メディアが高度に発展した地域が、その重要な発信地となった。そこで、各研究分担者は、おもにアメリカ・イギリス・ドイツ・フランスの代表的なポピュラー歌手(ボブ・ディラン、ビートルズ、ローレン・ニュートン、エンリコ・マシアス、など)の歌を中心対象にして、ポピュラー音楽の言葉にかかるテクスト連関性を解明した。また、この解明に基づいて、歌詞の日本語への翻訳も試みた。市場に出回るいわゆる訳詞には、明らかに誤訳と呼ぶべきものが少なくなく、その原因のひとつは、上記のような二方面でのテクスト連関性を十分に理解していないところに求めらるからである。外部機関の研究者および所属大学院の博士課程の学生の協力も得て、ポルトガル語・アラビア語・中国語圏のポピュラー音楽も研究領域に加え、ジャンルとしても、20世紀先進諸国のロックンロールやフォーク・ソングばかりではなく、ほかの諸地域における特色ある音楽(アルジェリアのライ、上海の歌謡曲、など)を研究対象にした。
著者
所 光男 長野 功 後藤 喜一 中村 章
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.861-865, 1990

SS寒天平板上で赤痢菌が疑われた集落由来株を培養時間24時間で簡易に鑑別できる培地を改良するための基礎実験を赤痢菌23株, <I>Escherichia coli</I> 129株を用いて行なった. その結果, 合成培地に酢酸ナトリウム0.3%, ブドウ糖0.02%, クエン酸ナトリウム0.3%を加え改良したCA培地 (Citrate-Acetatemedium) は, 従来我が国で常用されているクリステンゼンのクエン酸塩培地に比べ, 赤痢菌と<I>E. coli</I>の鑑別に優れていることが確認された.<BR>健康者検便のSS寒天板上で赤痢が疑われた集落由来株130株を用い赤痢菌との鑑別性をCA培地, クリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地を用いて比較した結果, 24時間の培養の時点では, CA培地はクリステンゼンのクエン酸塩培地, 酢酸ナトリウム寒天培地より鑑別性が優れていることが確認された.<BR>更に, 使用した130株の同定を行い上記3培地の菌種による鑑別性を検討した結果, 赤痢菌の鑑別培地としてCA培地は<I>Escherichia sp.</I> の鑑別ではクリステンゼンのクエン酸塩培地より優れており, <I>Hafnia sp.</I> の鑑別では酢酸ナトリウム培地より優れていることが確認された.
著者
所 光男 加藤 樹夫 後藤 喜一 渡辺 実 山田 不二造 酒向 俊雄 大塚 一幸 杉山 治 古川 雅宏 丹羽 昭司 長山 千秋
出版者
The Japanese Association for Infectious Diseases
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.1038-1045, 1984
被引用文献数
2

1983年7月から9月にかけて岐阜県内で2事例の集団下痢症が発生した. 2事例の患者総数は31名であり, 患者の主症状は下痢 (100%), 腹痛 (93.5%), 嘔気 (80.6%), 嘔吐 (58.1%), 発熱 (35.5%) であった. 原因食品は事例1が鯛の塩焼き, 事例2が卵焼きであった.<BR>これら2事例の患者ふん便12件中11件 (91.7%) から腸炎ビブリオが, 8件 (66.7%) から<I>Vibrio fluoialis</I>が検出された. 腸炎ビブリオ分離株の血清型は事例1の患者5名から分離された15株がO5: K15であり, 事例2の患者7名から分離された28株のうち25株がO10: K19, 3株がO5: K17であった.<BR><I>V. fluvialis</I>分離株のうち, 事例1の患者由来の15株中8株, 事例2の患者由来の30株中12株および原因食品の卵焼きから分離された1株を任意に選び東京都立衛生研究所に依頼して血清型別試験を行った. その結果, 事例1の患者2名から分離された3株がTFO-12に, 事例2の患者2名から分離された2株がTFO-4に, 患者4名から分離された5株がTFO-17に型別され, 両事例とも患者間に血清型の一致が認められた. しかしながら, 事例1の残り5株, 事例2の残り5株および卵焼き由来の1株は型別不能であった.<BR>以上の結果から, これら2事例の集団下痢症は腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染による食中毒事例であると結論した. 腸炎ビブリオと<I>V. fluvialis</I>の混合感染として細菌学的にも, 血清学的にも証明された食中毒事例はこれら2事例がわが国では最初のものと思われる.