著者
山田 知明
出版者
立正大学経済学会
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.167-203, 2009-03

本論文では,撲本経済が直面する雇用問題を分析できる理論的フレームワークについて展望する.分析フレームワークに対する要求として,以下の5点に注目する.まず労働市場に対する政策として,(1)雇用保険,(2)解雇規制と退職手当及び日本に固有の事情である(3)新卒採用制度を考慮する.加えて,(4)事業所が作り出す雇用創出・喪失を明示的に扱うことと,(5)家計貯蓄の役割についても分析する必要がある事について言及する.
著者
山田 知明
出版者
立正大学
雑誌
経済学季報 (ISSN:02883457)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.63-95, 2006-12

本稿の目的は,日本における公的年金制度によって引き起こされる「世代間」所得再分配効果と「世代内」所得再分配政策が,消費格差及び社会厚生にどのような影響を与えるかを,動学一般均衡モデルに基づいて,シミュレーションを用いて明らかにすることである.本論文の特徴は以下の4点である.(1) Abe and Yamada (2006)に基づいて恒常的所得ショックを設定し,日本経済の所得格差をカリブレートする.(2)基礎年金と厚生年金保険の二階建て構造を,緩衝在庫貯蓄モデルの下で,モデル化する.(3)政策シミュレーションから,基礎年金及び厚生年金保険が対数消費分散及び社会厚生に与える影響を詳細に分析する.(4)公的年金による世代間所得再分配だけでなく,同一世代内所得再分配政策の効果に関しても分析を行う.厚生年金保険料の変更は年齢・消費プロファイルを大幅に変更しその結果として全世代の対数消費分散を拡大させるが,世代内の消費格差には大きな影響をもたらさない.一方,基礎年金の変更は,全世代の消費格差への影響は非常に限定的であるが,同一世代内の消費格差を大きく低下させる事が明らかになった.また,シンプルな世代内再分配政策は全世代の家計の平均的な効用を高める事を示す.
著者
千田 亮吉 塚原 康博 畑農 鋭矢 山田 知明 加藤 久和 溜川 健一 福田 慎
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

人々が将来を見据えて意思決定をするとき、財政拡大による景気刺激効果は大きくならない。それは、人々が財政拡大によってもたらされる将来の税負担を予想するからである。しかし、財政政策が地域の労働生産性を引き上げる効果を持つと、その地域では将来にわたってより多くの所得が期待され、人が流入する。したがって、人の移動を通して地域の経済が活性化する可能性が生まれ、財政政策の効果は労働移動を考慮しない場合に比べて大きなものとなる。